(105)オレとボク
何が起きているのか解らずあたふたしていると、その子供が口を開いた。
「ユウ。アイシャ。ボクは君たちに会える時をずっと待っていたよ」
「……待ってた?」
「そうさ。五百年間、ずーっとね」
「五百年って……君は人魔戦争の頃の人ってこと?」
「そうだよ、アイシャ。けど、あの戦争はまだ終わっちゃいない。カイブツたちが永いことお留守だっただけなんだ。奴らは逃げてなんかない」
……何を言っているのか、何一つとして分からなかった。
昔、魔王が倒されて魔物たちは逃げて行った。
それは降伏であると解釈され、人類の勝利となった。
そう教わってきた。
だが、この子の話ではそれは違うということになる。
そもそもこの子が何者なのかもわからないし、やけに俺たちに詳しいのも疑問だ。
「二人の事はユウ、君のおじいちゃんから色々と聞いているよ。同時に、君たちに大戦の真実を伝えてほしいともね」
——ここでも祖父が関わっているのか。
「真実?」
「そうさ。結論から言えば、戦争はボクが止めたんだ」
「止めた……?」
「うん。まあ、人類を救いたいとか世界のためとか。そんな大それた理由は無かったけどね」
妙な笑顔というか、誇らしげな顔というか。
そんな表情のまま、オレにそっくりな少年はつづけた。
「話すより見てもらった方が早いよね。アイシャなら出来るんだろう? ご覧、ボクの記憶を」
「えっと……じゃあ、お邪魔するね?」
「どうぞ」
アイシャが少年の頭に触れる。
彼女の肩に手を置き、俺も景色を共有させてもらった。




