(1)朋友との出会い
こんにちは。まずは、この文章を読んでいただいていることに感謝いたします。
黄色いサルは永い間、自分の住む山に閉じこもっていた。
周辺にあるモノを食べ、そこらへんで寝て、起きては遊び。
だがいつからか、そんな暮らしに倦厭の情を感じていた。
何もない生活。そんなもの楽しくない。
そこで彼は、住処を発ってみようと決めた。
他の山があればそれを目指そうと。
下山し門を開けると、目の前には広大な世界が広がっていた。
彼はこう思った。
今まで閉じこもっていたのは愚かであった。勿体なかった、と。
早速、未知の世界の探索を始めた。
山の景色しか知らない彼にとっては、
見るもの全てが新鮮で、あらゆるものに夢中になった。
ある時、驚くべきものを発見した。自分以外のサルである。
黄色い自分とは異なり、そのサルは真白でとても綺麗だった。
近づくと、あちらも黄色いサルの存在に気が付いたようで、駆け寄ってきた。
二匹は同じ目的の下、この世界で邂逅を果たした。
共通の好奇心を抱えていたこともあり、すぐに意気投合した。
それからしばらくして、彼らは更なる大発見をした。
彼ら二匹のものでない未開の山である。
三匹目のサルが存在する可能性を考えた二匹は、その地に足を踏み入れた。
そこは暗く、どこか不気味な雰囲気であった。
それでも勇気を振り絞って奥まで進んだ。
しばらく歩いて休憩していた時、
ふと木陰に目をやると、誰かがこちらを見ていた。
二匹は、それがサルであるとすぐに気づいた。
《こっちへおいで。一緒に遊ぼう》
《?》
黄色いサルが声をかけても、彼は出てこない。
《外には楽しいことが沢山あるよ》
《……》
白いサルが声をかけても、やはり動かなかった。
どうやら言葉が分からないようでる。困った二匹は考えた。
どうやって彼に出てきてもらおうか。
そして、ある作戦を思いついた。
《もぐもぐ。うん、美味しいなあ》
《そうだね、すごく美味しい》
二匹はもってきたお弁当を、見せつけるように食べ始めた。
周りを見て、この山にはあまり食べ物がないと察したためである。
《……ッ!》
先ほどまでより目を見開いてこちらを見ていた。
出ようか出まいか、迷っている様であった。
白いサルは食べ物を一つ差し出し、伝わらないながらも言った。
《出ておいで。一緒に食べよう。美味しいよ》
《……》
すると、ガサガサと草をかき分けてついに姿を現した。
《はい、どうぞ》
《ア、アディガ、ト……ウ》
精一杯の言葉で礼を言い、白いサルから食べ物を受け取った。
それは、黒いサルであった。
彼はもらった食べ物をがっつくように、必死に食べた。
よほどお腹が減っていたのだろう。三匹でお弁当を平らげた。
その後も黒サルに声をかけ続け、一緒に外に出ることになった。
初めて下山した黒いサルは目を輝かせていた。
見るもの全てに興味を示した。
その様子は、黄色いサルが初めて外に出た時のそれと、同じであった。
きっと白いサルもそうだったのだろう。
やがて三匹は親睦を深め、数年たつ頃には親友となった。