第91話「身体能力・強化」
今回は三話投稿しますのでよろしく!
「うおおあぁっ!!」
叫びと共に地面を蹴り、伊村が全身に力を込めた。
訓練広場に響くその声は、もはや威勢の良さだけでなく、自身を鼓舞するためのものだった。
彼のすぐそばにはグリードが立っている。
修行を始めて、すでに四ヶ月。
今の伊村は、“身体能力・強化”というスキルの使い方を身体に叩き込んでいる最中だった。
「……ッ、来い……っ、“身体能力・強化”……!」
叫ぶようにスキル名を口にし、呼び起こす。
瞬間、伊村の身体に軽い震えが走り、何かが走り出す感覚がした。
「よし、その調子だ! お前のステータスもいい感じに上がってきてんだからな! あとはそのスキルさえ使いこなせば──モンスター相手に真正面からぶっ倒せる日も近いぞ!」
グリードが大声で励ます。
その声に、伊村は小さくうなずきながら、さらに集中を高めていった。
──修行を始めたばかりの頃、彼の総合力はまだ二桁だった。
しかし遊歩道での走り込み、日々の組手、繰り返される基本訓練の積み重ねによって、彼の数値は次第に上昇していく。
そして、現在の伊村は確かに“普通の冒険者”に手が届き始めていた。
【名前】 伊村 綾太
【性別】 男性
【種族】 人間
【職業】 学生
【年齢】 17歳
【体調】 健康
【Lv】 26
【HP】 34
【MP】 10
【ATK】 42
【INT】 12
【RES】 9
【DEF】 4
【SPD】 48
【CHM】 6
【MOT】 5
【LUX】 39
【DEX】 38
【総合力】 236
修行前と比べると、その違いは一目瞭然。
グリードとの修行によって漸く彼は役立たずの糞雑魚人間ではなく、ごく平均的な強さの冒険者になれたのである。
「全身に……力を込めて……ッ、よしっ……! できた……! グリードさん、できました!」
スキルの感覚をしっかりと掴んだ手応えに、伊村は顔を輝かせる。
まだ少し息が荒いまま、それでも笑みを浮かべ、グリードに向かって報告する。
「おっしゃ、やったな伊村! 発動はもう完璧だ! 次は──どれだけ長くその状態を保てるか、だな。ちょうどいい、今度グリーンズで受ける依頼で実戦試験といこうか!」
「はいっ! 今度こそ、二秒──いえ、それ以上持たせてみせます!」
修行前の自分では考えられなかった。
“努力が、力になる”──そう実感できた今、伊村の表情には確かな希望が浮かんでいた。
◇ ◇ ◇
翌日の昼頃。
伊村はグリードと共に森の外れに到着した。そこには、既にレオスとテレフィの姿があった。
「……お? 伊村か!? おいおい、めっちゃ久しぶりだな!」
レオスが目を丸くして振り返る。
彼の反応を見るに、伊村がこの四ヶ月、ほぼギルド裏や訓練場に篭りきりだったことがよく分かる。
「グリードから話は聞いてたぞ。お前が死に物狂いで修行してるってな! ……で、その成果ってわけか?」
「えへへ……見てくださいよこれ! この右腕! どうです、ちょっとムキッとした感じしません!?」
伊村は張り切って右腕を突き出す。
が………
「……ほとんど変わってないけど」
テレフィがバッサリ言い放つ。しかも真顔で。
「なっ……!? い、いやいや! ほらこの辺! ちょっと筋肉の線が……!」
慌ててアピールする伊村に、テレフィはそっと一歩引く。
それを見たレオスが肩をすくめて笑った。
「おいおい、まあ見た目はともかく……中身がちゃんと強くなってんなら、それでいいだろ?」
「うっ……確かに、はい」
褒められたような、けなされたような、なんとも言えない気持ちで伊村は頷いた。
「……って、お前ら、来たぞ! 準備は良いな!」
森の道の先から、商人たちを乗せた馬車が見えてきた。
それを見たグリードが声を張る。
「よぉし、気合い入れていくぞーっ!」
こうして伊村にとって、実戦でのスキル試験……そして冒険者としての新たな一歩が始まる。




