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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
狙われた若王編

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第83話「本当の狙い」


自分たちの進路を塞ぐように転がってきた大岩というアクシデントこそあったが……

東洋たちは、誰一人として倒れることなく“ノウンの谷”を無事に抜けた。

そして現在、彼らはルガロ公国北西、国境付近の深い森を進んでいた。



「セルフィス王ーーー! 何処にいるんだーッ!?」



先頭を歩く東洋が夜闇に響く声で呼びかける。

返事はないが、それでも彼は歩みを止めなかった。


「にしても……暗い上に魔物が多いわね。……国王様、本当にこのあたりにいるのかしら?」


ミセアが辺りを警戒しつつ、やや不安げに言う。

ここまで、多くの魔物が一行を襲ってきた。

無論返り討ちにはしたが、近衛兵達の疲労はその間に蓄積し、負傷する者まで出てきている。


「たしかに、ここは危なそうな気配がするな……! だけど……セルフィス王は、この近くにいる………俺の勘が、そう言ってるんだッ!!」


しかし、東洋は胸を張って断言する。セルフィスは必ず付近にいる、と。

それはどこか確信めいた声だった。


「か、勘て……」

「予感で当たるなら、世の中こんな苦労してないわよ……」


リンカとミセアが呆れたようにぼやくも、東洋はまったく気にした様子もなく、前だけを見据える。



「ははっ! 俺の勘は当たるんだ! とにかく、セルフィス王は絶対にこの近くにいるッ!」

「まだ遠くへは行ってないハズだ! お前ら、気を引き締めて探すぞッ!!」



彼の声に皆頷き、森の奥へと踏み込んで行くのだった。


 


◇ ◇ ◇



「………!! おい、見ろ! あの建物……怪しいぞッ!!」



しばらく森を進んだ先、木々が開けた先にポツンと建っていたのは、崩れかけた古い廃屋だった。

東洋が一番最初に発見し、全員に指差しながら呼びかける。


「……ホントだ。あれ、見るからに不自然よね」


確かに、とミセアが眉をひそめながら応じる。


「もしかして、あの中に……セルフィス王が……?」


建物の外観を見たリンカは、不安げに建物を見つめた。


「可能性は高い! 準備はいいな!? 行くぞッ!」


東洋は力強くそう言うと、真っ先に駆け出しボロボロの扉を勢いよく押し開けた。



◇ ◇ ◇



「う、うぉわッ……こりゃ、随分と荒れてるなッ!」



中に足を踏み入れた瞬間、舞い上がる埃に東洋はむせそうになりながら顔をしかめた。

壁の隅には蜘蛛の巣が張り、床は所々抜けている。


「うぅ、なにこれ……」

「やだわ、めちゃくちゃ汚いじゃない……全然入りたくない」


続いて中へ入ったミセアとリンカも、顔をしかめて足を止める。


「こ、こんなところに国王様が……ほんとに……?」


後ろを続く近衛兵の一人が不安げに呟く。


「いや、絶対にいる! こんな場所にわざわざ建物があるってこと自体が怪しいんだッ!」


だが、東洋はきっぱりと言い切り、誰の反応も待たずに奥へと進み出す。

やがて、一行は建物の奥にある、広く開けた大部屋にたどり着く。

そこには………


鋭い短剣を手にした黒装束の男たちが三人、緊張感を漂わせて立ち塞がっていた。


そして、その奥。



「セ、セルフィス……王………ッ!!」



両手を鎖で縛られ、石畳の上に座らされていたのは………

全身に傷や痣を負い、痛々しい姿になった"セルフィス"だった。


「お、お前ら………貴様らがッ! セルフィス王を拐ったのかッ!!」


怒りが爆発する寸前、東洋は震える声で男たちを睨みつける。


「……くっくっく。来たな、“転移者”……」


しかしその時、黒装束のうちの一人、白髪の20代ほどの男が口元を歪め冷たく笑う。

東洋の顔を見た途端、嘲るような笑みを浮かべたのだ。


「なッ……“転移者”だとッ!? まさか、俺のことを知ってやがるのかッ!?」


どういう訳か、男は東洋の正体を知っていた。

自分の情報を知られていた事に一瞬たじろぐも、東洋はすぐに声を荒げ問い返す。



「と……東洋か……っ! その者たちは………バ、バーディア帝国が……お前を始末するために差し向けた暗殺者だ……っ!」



拷問によって与えられた痛みに耐え、セルフィスが声を振り絞る。

その言葉に、東洋の顔色が変わった。


「なッ……!? バーディア帝国……あの国が……!?」

「あ、ああ……私をここに連れ込んだのも………全て、お前を誘き出すためだ……ゴフッ!」


セルフィスは吐血しながらも、それでも目の前の彼を見て懸命に語りかける。

目の前の暗殺者とされる男たちは、帝国が差し向けたのだという衝撃的な事実。

これを聞いた東洋の頭は真っ白になった。



「と、東洋……! こ、ここは危険だ……今すぐ……逃げ……ろ……っ!」

「……ッ!!」



セルフィスの言葉に、東洋は拳を握りしめたまま無言で立ち尽くす。


敵は“自分”を狙っていた――

セルフィスを拐ったのも、“囮”に過ぎなかったというのか。

次第に彼の胸に、燃えるような怒りと、決して譲れない覚悟が灯って行く………


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