第71話「戦兵の儀」
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「入団試験に合格した者たちは皆、今夜22の刻から行われる”戦兵の儀”に参加する決まりだ。無論お前達も出てもらう」
ダクターは、合格を告げて安堵していた北本たち四人に向き直り、このように告げた。
何やらこの後、儀式のようなものに参加する事になるらしい。
「んお? "戦兵の儀"って何すか?」
その話を聞いた北本の同期・茶髪の青年ネイヤスが首を傾げ、やや飄々とした態度で尋ねる。
「このフィブリア王国の軍や我が団に入った兵士や騎士が参加する、国王陛下直々に取り行われる神聖な儀式だ」
「……これから団へ入団するお前たち新人に厄払い、つまり、災いを遠ざけるためのものだな」
「国王様がオレたちにはない特別な力を使って、お前らの運気を高めて下さるんだ。これを受けずに入団など許されんぞ」
「え、え……? こ、ここ、国王………様ぁ!?」
ダクターは簡潔に、しかし重みのある口調で説明した。
話によれば、儀式は国王自らが主導して北本たちへ祈願をしてくれるようだ。
それを聞いた途端、ネイヤスが態度を一変、顔を強張らせる。
「じゃ、じゃあその儀式が行われる場所は、つまり………?」
ネイヤスの隣で話を聞いたディローザが、恐る恐る尋ねる。
「ああ、儀式は"レブル王城"で行われるという事になっている」
ダクターは頷きながら答えた。
戦兵の儀を行う場所……それは"レブル王城"。
なんと、騎士団の基地などではなく、王の住まう城の中で行われる事になっていた。
(う、うわ、マジかよ。また移動しなきゃならねぇのか……、しかも城の中て………。やるってのは分かるが、何でここで行わねぇんだ……?)
その言葉に四人全員が驚愕した。
否、北本の方は、むしろ儀式を会場か基地でせず、王城で行うという事について相当な煩雑さを感じていた。
とは言え文句を垂れつつも、儀式を行うことの重要さは彼も十分理解している。
「ま、まさかぼくたちが国王様に会えるだなんて……!」
「騎士団が国王直属の王都防衛組織だって聞いたことあるが、ほ……本当だったとは………」
対照的に、ダクターの言葉を聞いた他三名は驚愕と共に興奮を抱いている。
「まあとにかく……、今日の夜22の刻から戦兵の儀は行われる。それまでに各々心の準備をしておくようにな?」
一言、ダクターが四人へ言い残すと、先んじて会場を後にする。
それを皮切りに北本達も会場を出て、儀式が始まる時刻近くになるまで待つ事になった。
◇ ◇ ◇
(デッケェ城だな……、一人で来たら絶対に迷うヤツだろコレ)
それから数時間後、北本たちは王都カルアーノの中心部、レブル王城に到着していた。
夜の城は明かりが灯され、荘厳な雰囲気を放っている。
「この城の二階に国王陛下はおられる。分かっていると思うが、くれぐれも粗相のないようにな」
ダクターを先頭に北本、セシル、ディローザ、ネイヤスの順で一列に通路を歩く。
国王の拝謁を前にして、先頭を歩くダクターが改めて四人へ念を押した。
(国王か……。一体どんな奴なんだろな……)
わずかな緊張を覚えながら、北本はダクターに続く。
城の通路を歩き、一行は時折衛兵に挨拶を交わしつつ、国王のいる場所を目指す。
◇ ◇ ◇
「よくぞ来たな……、新兵達よ……」
城内を進む北本達、彼らは玉座の間へ到着。
そこで深々と座る初老の男ーー、国王と対面した。
「わたしの名は"ファーロンド・オルス=トリアン"。見ての通り、この国の国王だ」
「君たちが入団試験に合格した事は知っている。見事あの難関の審査をクリアし、実力を認められたものだな」
国王の彼は深い蒼色の髪と髭をたくわえ、王冠を戴き、白い毛皮付きのロングコートを纏った、まさに”王”と呼ぶにふさわしい威厳を漂わせている。
彼は目の前で立て膝をつき跪く北本達四人に自己紹介を行うと、彼らの才覚と功績を称えた。
(す、すげえな。オレが想像した通りの奴だった……)
ファーロンド、と言った国王のその容姿は、正に北本の想像と合致する王様像。
その事に北本は少なからず驚く。
「………国王陛下、早速ですがこの四人に戦兵の儀をお願い致します」
ダクターは四人の様子を見てから、ファーロンドに一礼し、儀式の開始を願い出る。
「ふむ、よかろう。……皆、我が側へ」
「「……はい!!」」
ダクターの申し出を受け、ファーロンドがゆっくりと立ち上がる。
そして、北本達へゆったりと手招きする。
北本以外の三人が応じ、彼の近くへ集う。
(そろそろ始まるのか。果たしてどんな儀式なのか……)
北本もそんな思いを胸に、三人に続き玉座の前に向かった。
「んんっ! この者たちに輝かしき躍動を! 邪悪なる災厄を寄せ付けぬ強運を!! …………はっ!!」
すると、ファーロンドがコートの中から取り出した杖を天へ掲げ、力強く詠唱を始める。
直後、紫色の宝石が光を放ち、眩さに思わず目を瞑る四人を包み込んだ。
「…………これで戦兵の儀は終わりだ」
少しして、杖の光が収束し、ファーロンドが短く告げる。
その合図を聞いて、北本たちは目を開けて彼へ視線を向けた。
「……ふっ! ふはははっ! 意外に早く終わったと思うだろう?」
再びファーロンドの顔を見た四人はまたもや驚く。
彼の表情は笑顔、先ほどまでの威厳と堅物さはどこへやら、唐突に笑い出して口角を吊り上げながら儀式の短さに言及する。
「実はな……この儀式、運気を高めるのは確かだが………、逆に悪運の方はどうやらそのまま残るらしい。だからあまり過信しない方が良いぞ?」
続けて運気について語り出す。
今の儀式の効果、幸運も悪運も寄せ付けてしまうようだった。
最後、注意を促すも、儀式の後から言われてもどうしようもない。
「「え……、ええぇーーーーーっ!?」」
「はあぁーーー!?」
当然と言うべきか、ダクター以外の四人は声を揃えて絶叫した。
側から見ても分かる通り仰天し、苦笑いするファーロンドを置いて王城内に彼らの叫びが響き渡った。
何はともあれ……こうして、北本たちの戦兵の儀は、無事?に終了したのであった。




