第69話「模擬戦試合」
お待たせしました!
前回は休載してしまい申し訳ありません!
今日は8時30分から9時50分まで5回投稿です!!
「……よし、お前たち準備はできたな?」
遂に迎えた、北本の番、模擬戦・第四試合。
対戦相手である大男と向かい合い、模擬戦場の白線へ立つ。
「へっ、勿論! オレはすぐにでも入団してぇんだよ。一瞬で終わらせてやる!」
ダクターの問いかけに、対戦相手の大男はパキパキと拳を鳴らし、自信満々に笑みを浮かべる。
「ほー、そうか。ならとっとと始めようぜ?」
だが北本は、腑抜けた目つきで大男を見据える。
彼はつまらなさそうにダクターへ試合開始を促す。
「なっ……、ふ、ふははははっ! お、オレに負けて後悔しても知らんぞっ!!」
彼の応対にムカついたのか、大男は眉間に皺を寄せると、無理に笑って北本を挑発。
それを契機に彼は得物である斧を構える。
「………、では模擬戦、第四試合・開始!」
対して北本は腰に据えてある剣を抜き、いよいよ戦闘態勢に入る。
そして、それぞれ配置についたのを確認したダクターは早速、開始の宣言を出す。
北本対受験者の男の試合が、ここに幕を開けた。
◇ ◇ ◇
「早速こちらから行くぞ!」
開始の声を聞くや否や、大男は斧を振り抜き、北本めがけて突進する。
「オオオオラァッ!」
ブォンッ!
北本との距離を詰めた瞬間、上段から振り下ろされる巨大な斧。
だが……
「はっ……!」
「んぬあっ!?」
彼は目にも止まらぬ速さで地面を蹴りつけ、横へかっ跳ぶことでその一撃をあっさりと回避する。
北本は再び男へ向き直ると、剣を抜いて静かに構えた。
「や、やるじゃねえか。こいつを躱すなんてよ……、だが! 攻撃させなきゃこっちのモンだ!」
大男は態勢を立て直すと同時、再び勢いよく北本へ斬りかかる。
ブォンッ! ズンッ! グォンッ!!
「ウォラッ! オーラオラオラァッ!!」
「………ふっ!!」
男が振るう荒々しい斧の連撃。
しかし北本は、軽やかな動きでその全てをかわし続ける。
彼の双眸は、まるで男の動きを見透かしているかのようだ。
キィィィィンッ!
最後の一撃も空を斬らせると、北本は一気に間合いを詰め、男の上半身にかけ剣を振るう。
「……んぬっ!? クソッ危ねぇ!」
「……! チッ!!」
が、その攻撃は咄嗟に動かした斧を盾に用いることで寸前で防がれる。
………しかし、
「フン! だが惜しかったな! あともう少しで俺に勝て……ッ!?」
ピシッ!
「ん……?」
ピキピキピキッ!
ガシャァーン!
剣を防御した大男の斧にヒビが入る。
大男の斧に走ったそのヒビは、あっという間に刀身全体へと広がり、ガラスのようにバラバラに砕け散った。
「……………」
「……………」
場に重い沈黙が落ちる。
あまりにも突飛した出来事だったせいで、お互いすぐには理解が追いつかない。
ダクター始め観客の受験者達もまた、同様に目を丸くしている。
(な、なんだ、今の……? 斧が………、オレのせいか? 器物損壊!?)
北本は蒼白になりながら一歩退き、砕けた斧を呆然と見つめた。
男や観衆のみならず、割った張本人ですら、気を動転させている模様。
「あ、ああぁぁぁ……!! お、オレの………斧がぁ!」
それから一拍置き、地面に落ちた破片を見下ろして大男は悲鳴を上げた。
「ま、マジかよ!? あんなでけぇ斧が粉々にぃ!?」
「なんて試合……、剣の一振りで………。あいつから恐るべき"強さ"というものを感じる……!」
「す、すごい! ……あの人の剣が、斧の刀身を打ち砕いたんだ!」
他の受験者数名もこの一部始終を目撃し、それぞれ思ったことを口にしている。
その中には、北本の前に試合に参加したセシルの姿もあった。
「………そこまで!」
そこへ、ダクターが声を張り上げる。
「第四試合終了! この模擬戦、北本の勝利!!」
試合終了を声高に宣言。
片方の武器が壊されたのだ、勝敗は決したと言っても問題はないだろう。
「なっ……!? クソッ、もう少しで入団できたってのによぉ!」
大男は未練がましく文句をぶつけながら、悔しそうに模擬戦場を後にして行った。
(…………何か、想定外の結末になっちまったな)
去っていく大男の背を見ながら、北本は胸中で呟く。
自分の勝利が偶然の産物にしか思えず、複雑な気持ちを抱えたまま、剣を鞘に収めるのだった。




