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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
騎士団入団編

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第65話「第1審査」

今回の投稿はここまで!

来週にもう三話投稿いたしますのでお楽しみに!!


試験が開始して暫く経ち、北本たち受験者は訓練場へと到着する。

会場の隣なので移動には然程時間はかからなかった。

着いて早々にダクターと試験官たちが志望者に向けて説明を行う。



「第1審査は、騎士にとって不可欠な“馬”を如何に操れるかを見させてもらう!」

「もしニ度、三度も馬に拒まれたり、落馬した場合は失格とする!」



ダクターが受験者達を見据えこれからやる内容を教えた。

同時に、試験に対するやる気を伺うように、北本達に鋭い眼光を向けている。

審査における"失格"の基準を明かし、その厳しさを彼等の頭に叩き込ませる。


「よし、やる事はわかったなお前たち! ならばこれより第1審査を始める!!」


その厳しい条件に、場の空気が一気に緊張に包まれる。

そして、数十頭もの馬が試験官によって連れてこられ、いよいよ審査が開幕した。



◇ ◇ ◇



馬の前へ並び、試験へ挑む北本達。

北本の先に受験者が何人か馬に乗ろうとするも、上手くは乗れず失敗が相次ぐ。

暴れられて乗れない者、乗ったはいいが制御できず落馬する者。

次第に脱落者が増えていき、それらは試験の苛酷さを如実に表していた。


北本はその様子を黙って見つめていた。


(……それにしても、馬に乗るなんて初めてだ。どう乗りゃいいんだか、車や自転車ならともかく……。あーなんか不安になってきたぁー)


当たり前だが都会住みの彼にとって、これまで騎馬の経験は皆無。

現実世界では自転車や自動車という移動手段があるのは確かだが、馬は感性も操作感も全く異なる。


「痛っ!?」

「ぬああぁ! お、落ちる!? ……ぐあッ!?」

「………ん?」


北本が気怠く思ったその時、列の前方から受験者たちの叫び声が聞こえる。

焦って馬に飛び乗ろうとした若者が蹴られ、もう一人は荒ぶる馬を抑えきれずに地面に叩きつけられていた。


「お、落ち着いて! 僕はただ乗るだけだからっ!?」

「くそったれ! 何でコイツ言う事を聞かなぇんだ!?」


どうやら二人共に大苦戦しており、乗馬を嫌がられている。

特にスキンヘッドで柄の悪そうな受験者の男は馬の操作(コントロール)が出来ず振り落とされ、その後は乗ることすらままならない始末だ。


「………、残念だがお前たち二人は失格だ。もう少し馬に慣れてから試験を受けるように!」


それを静観していたダクターが失格を突きつけた。

厳しく冷淡な口調で二人を馬から離させる。


「そ、そんなぁ……」


二人はがっかりとした様子で肩を落とす。

まもなく彼らは、試験官に連れ添われる形でその場を去り行く。


(あいつら失格か……やべえ。こうして見ると厳しい判定だな)


その光景を後ろから眺めていた北本は、試験の厳しさを目の当たりした正直な感想を抱く。

まだ最初の段階で早くも脱落者が続出した現実を受け、自分もこうはなりたくないなと思うのだった。


「次はお前の番だ。乗れ」


そして、とうとう北本の番が回って来た。

彼より先に乗馬に挑んだ受験者たちは、その大半が悉く失敗。

試験失格となり退場させられている。


「ああ、わかった……」


馬の隣に立つダクターに促されるがまま、北本は馬のもとへ歩み寄る。

誤って失敗せぬよう、焦らず落ち着きを持って振る舞う。



(………そうだ。そういや昔、何かの授業で担任から馬の手懐け方とかを聞いた事があったっけか)



向かう途中、彼は現実世界、日本に居た頃のある出来事を思い返していた。


(確か、あん時………)


それは、彼が高校の授業に出席した時、習ったこと。

その内容がまさに今挑戦しようとしている乗馬について。


(………。だいたい思い出したわ。なんせ馬について異様なほど詳しいセンコーだったからな。半分寝とったから細かいとこは聞き逃しちまってるけど……、多分これならいけるか!)


あの時の記憶を思い返す北本。時間にしておよそ5秒。

当時はあまり真剣に見聞きしていなかったとはいえ、方法を知った彼はすぐに乗馬に挑みにかかる。


「気を付けろよ? 馬ってのは下手な奴が乗ろうとするとすぐ後ろ脚で蹴ってくるからな………」

「そりゃおっかねえな。頼むからお前ー、そうならないでくれよー?」


馬へ足をかけようとする北本へ、ダクターから忠告がなされる。

それは、勿論乗馬についての注意点だが、生物としての根本的な野性への身構えを取れと言わんばかりの一言。

ため息をつくように北本は呟き、乗馬する。

その際、馬へ語りかけつつ、心の中で無事を祈るのだった。


(最初に左に立ち、手綱を持つ。………んで、その後 左足から(あぶみ)ってやつにかけて、右足を上げそのまま身体を持ち上げる……)


乗馬にあたって、彼は以前授業で得た知識を実践する。

馬に意識を集中させ、暴れられぬよう細心の注意を払いながら。


(次に……鞍の上にゆっくり座って、最後に右足を鐙にかける……、よし……!)


乗馬はスムーズに行われた。他の受験者とは違い、冷静な面持ちで北本は乗馬を試みた。

その結果、無事に北本は乗馬に成功。

彼は思わず心の中で一安心した。


「ほお、乗馬に成功したか……。たいしたものだ。お前と同じ受験者たちの多くはこの段階で失格となったんだがな」


馬の方も全く暴れる様子を見せず落ち着いており、試験の監督役のダクターはそれを見上げると、感心の表情を浮かべていた。


「そうか? 馬に乗るってのはそんな大変なのか?」

「大変、という程ではないが、それなりにコツは要るな」

「……お前以外の受験者で失格した何人かは急いで審査を突破したいのか知らんが、鞍に勢いよく座ったり、足を移すのに鐙じゃなく馬の身体を幾度も蹴ったりしていたぞ?」


北本の疑問にダクターが腕を組み応じる。

どうやら試験の経過を見る中で、受験者達に所々拙い点が散見されたという。

審査の合格を意識しすぎたがゆえの失格、それが相次いでいたのだ。


「ああ、それでか。なら無理もねぇかもな。オレも偶々授業で習ってなけりゃ、きっと失格になってた……」


他の多くが失格となった理由を理解した北本は、馬を見下ろして口にする。

あくまで自分は運がよかっただけ、実力では他と大差はないとした。


「よし、では次はその馬でこの訓練場の北側を走行してみろ。手綱を上手く握れば出来るはずだ」


話は進み、次にダクターは自分らの居る訓練場の北、平らで広い敷地となっている場所を走行するように指示をする。

無論、馬から振り落とされれば失格となる。全く気は抜けない。


「わかった、……はっ!」


彼の指示通り、北本は手綱を動かし馬を走らせて行く。

授業で習った操作を忘れないよう常に念頭に置き、集中力を研ぎ澄ませて彼は訓練場を駆ける。



◇ ◇ ◇



「………ふむ、お前は問題ないだろう。第1審査合格だ」



それからしばらくして、北本の乗馬を見定めていたダクターが満足げな顔をして相槌を打つ。

彼は審査の合格を言い渡した。

幸いにも北本は無事、乗馬の試験を突破できたのだ。


「おう、よっし、じゃあもう降りていいよな?」

「ああ、降りた後は合格者の居るあの場所へ戻るようにな」


ダクターが指した場所を一瞥すると、馬を降りて北本は向かう。

脱力し、どうにか試験の一つをクリアできた事による安堵の感情を抱きながら。


「……っし! あんま時間かかんなくてよかったわ」


北本は軽く背伸びをする。


「お前は受験者でありながらかなりの才能を持っていると見た。お前なら腕利きの騎士になれるかもしれんな……?」


彼の様子にダクターが見送ると共に呟く。

期待と驚きが含まれた言葉、それ程に北本は才覚があると感じたのだろう。


「いや、まだわからねえよ。審査はあと二回あるし、オレにだって不得意な部分もある……」


だが北本はこの言葉を受けても表情は変えず、自信は持たない。

賛美されたからといって、思い上がれば直に痛い目を見る。

堅実に立ち回り、試験の合格を果たす。それを目指す姿勢を示す。



「………なかなかに手堅い奴だ」



ダクターは静かに彼の後ろ姿に視線を注ぎ、思ったことを呟いた。

そして、表情を引き締めて次の受験者達へ向き直り、乗馬を試す審査を再開させる。


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