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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
四人の転移者編

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第62話「全滅」



「ん……。 !! えっ!? ………ど、どこ此処っ!?」



闇夜の如く薄暗く、まるで洞窟のような景色の広がる空間。

前のめりに倒れていた南野が意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がる。

青い炎の灯る松明がわずかにあるだけの暗闇に包まれた閉所、彼女が居るのはそんな場所だった。


「暗いなあ……、狭いなあ……、ううぅ」

「どうして私たちはこんな場所に……」


山田、神崎、そして模地の三人は南野の前で立ち尽くし、辺りをキョロキョロと見回している。

全員今の状況に困惑しているようだ。


「よお南野、目ェ覚ましたか? 見ての通りオレらは知らねぇ所にワープしちまったようだぜ………」


呆然とする南野、そこへ山田が話しかけてくる。

やはり彼女達は見覚えの無い場所に転移してしまったらしい。


「ええ!? じゃあもしかして……あいつがあたしたちを!?」


今の状況を知った南野は、目を丸くする。

ここで目を覚ます直前までの流れを思い返し、まさかあの不気味な近衛兵が何かしたのではと推測した。


「ああ、あの野郎がオレたちにどこかへ移動させる魔法か何かをかけたとしか考えられねぇわな」

「……それにアイツの顔見た時、めっちゃ不気味に笑ってやがったからな。こんな事をするって事は……多分オレらの敵・魔王軍からの刺客か何かじゃねぇか?」


彼女の言葉に頷き共感する山田。

どう考えてもあの時その場に居合わせた男のせいで、なんらかの危険な場所へ転移させる魔法をかけられたのだと考察した。

問題は男の正体だが……、ここで彼の鋭い勘が正解を弾き出す。


「ま、魔王軍……、そんなヤツが城に潜入してたんだ……」


そう、男は魔王の手先であった。

その推察を聞いた南野は驚愕する。

まさかそんな伏兵が、よりにもよって自分らの身近に居たのか、と信じ難い様子となった。


「それにしても……、何でアイツは直接オレらを倒そうとしなかったんだろうな?」

「なーんか裏がある予感がするぜ……。この場所も怪しいニオイがプンプンするし………」


山田が男の取った回りくどい敵対行動に疑問を口にする。

直接攻撃するよりも、自分らをここへ送り込む事自体に何か意味があるのかもしれない。しかしその真意は不明。

さらに今こうして四人の居る場所は、薄暗い空間、円錐状に隆起した岩、天井から雨粒のように上から下へ滴り落ちる水滴……と、見るからに洞窟の中。

この特徴も鑑みて山田は腕を組み訝しむ。



「………えあっ!? な、な……なんだあれ!?」



するとその時、二人の近くから模地の声が聞こえてくる。

彼は今まで自分らの周辺を見回し、状況の把握に努めていたのだが、想定外の事態が起きたのか慌てて他の三人のもとへ後退る。

模地は何かを目にして驚いたようだった。


「どうしたんだよ模地…………は!? おいおい、こんな時に敵かよ!?」

「魔物だね! どう見ても……!」


彼の目に入ったのは、先の見えない暗闇が広がる洞窟の奥、そこからのそのそと姿を現した全長2メートル超の大きなトカゲ。

黒い鱗に紫の体色を持ち、口から涎を垂らしこちらをギョロリと凝視している。

間違いない、コイツは魔物だ。


山田と南野を先頭に、四人は魔物と断定するや急ぎ戦闘態勢へ突入する。

武器を取る前に他の三人は驚き動揺を見せていたが、南野は冷静かつ速やかに鞘から大剣を抜き、目の前の敵を鋭く見据える。

彼女は頭で理解していたのだ、戦わなければこっちが死ぬ、と……。


「はぁ、やるしか無さそうね……」


先程から静かに様子を窺っていた神崎も、軽くため息をつき背中の槍を取り出し準備を整える。


(恐竜型の魔物か、しかもスゴく大きい……! 2、いや違う、3メートルはあるかな………)


南野は改めて目の前に立ちはだかる魔物の姿をジッと観察。

どこからどう見てもトカゲと同じ出立ちで、自分達を獲物だと捉え狙っている。

肉食恐竜にも似たその魔物は、口を開け、強靭な後ろ足で地面を蹴り付ける。

南野一行vsトカゲの魔物の戦いの幕が、上がった。


「………! うおぉらあァーーーッ!!」


睨み合いの末、始まった戦闘。

先陣を切ったのは山田だ。彼は武器の大槌を振りかぶり魔物へ突進を行う。

そして、それを皮切りに、他の三人も動き出す。


グオオァァァッ!


これに反応して魔物も南野たち目掛け駆け出した。

洞窟内に鈍い足音を立てて動く、その速度は非常に速い。

四人が鍛錬していなければ視界にとらえる事すらままならなかっただろう。

山田が先頭を発ち向かってきた事に腹を立てたのか、荒々しい咆哮を上げて彼へ目線を集中させる。


「………はっ!!」


魔物との距離が数メートルになったところで山田は空高く飛び上がる。

飛んだ場所は接近してきた敵のすぐ近く。

大槌を握る力を強め、上腕の筋肉を隆起させ鱗に覆われた頭上に振り下ろす!


ゴゥン!


「よし! やったぞ!!」


山田が大槌を頭部の上で勢い良く振り下ろした。低い衝撃音が響き渡り、魔物の頭は少し凹む。

大槌を軽く振るえる彼の筋力は並外れており、そこに鈍器の力が加われば、より破壊的な効果を齎す。

一発目にして、重い一撃を与えられた。

思わずニヤリと笑みがこぼれる。

脳裏で自身が勝利するビジョンを想像し、舞い上がる気持ちを抑えきれない。そのまま頭の後ろへ回り込む。

………だが、その瞬間だった。



「ッ!? 何だっ!? た、確かに脳天直撃したハズd、……グッ!!」



魔物が頭を左右に激しく振り抵抗をする。

丁度追撃を仕掛けようと後頭部へ跨っていた彼は頭上から振り落とされ、そこから足蹴りを喰らってしまう。

脚力を込めた強烈な一撃を受け、凄まじい速さで一直線に吹っ飛ばされる。

直撃の寸前にガードを入れようと武器を構えるも間に合わず、錐揉み回転しながら岩壁に叩きつけられる。


「……山田っ!?」

「つ、強い! アイツ強すぎるっ! があ! で、でもやらなきゃ……っ、みんな、死ぬ……ッ!!」


その光景を目にした神崎と模地の二人は共に驚愕。

血相を変えて神崎が山田のもとへ駆け寄る。

模地は一度は不安そうな表情となるも、両頬を手で叩き己を奮起させると、覚悟を決めたように敵へ向かい走り出す。

ロングソードを携え、"折半"を発動する準備をしながら。


(山田君がたった一撃で……、近付いて戦うのは危険だ!!)


一方、南野は魔物の行動について暫く考えていた。

山田を振り落とす動きから、足での攻撃に移るまでの所作、その全てが自分らと比べても別次元だ。

彼女は魔物から距離を取って戦うやり方が最善だと判断する。


(こういう魔物には……遠くから魔法で攻撃するのが得策だよね!)

「吹き荒ぶ突風! "ブロイングガスト"!!」


ヒュオオオオーッ!!


そして南野は魔物へ最初の攻撃を仕掛ける。

数ヶ月間の修行で会得したのだろう、風属性の魔法・"ブロイングガスト"を正面で構えた両手から狙いを定め放った。


ドヒュゥーン!!


彼女の放ったその魔法は、黄緑色の渦巻く強風を伴うエネルギー弾として発射し、敵の身体に被弾。

程なく、魔物の周囲に激しい烈風が吹き荒れ、奴へダメージを与える。



「………ふー、!? ぐ! かはっ!!」



だが、魔物はこの攻撃だけでは止まらなかった。

南野が深呼吸して息を整えたその瞬間、魔法が直撃したにも関わらず、何事もなかったように彼女の目の前へ姿を現し、その身体へ正面から頭を突き出した突進をかまし、山田と同様近くの壁へと叩きつける。

辺りの地面に彼女が吐いた血が飛び散り、反撃を受けた部分は血に染まり、上半身がくの字に捻じ曲がる。

これはもう、助からない。

現実世界からやってきた勇者候補にして、平凡な女子高生"南野舞衣"は、勇者となる為の修行のさ中魔王の僕にやられて命を落としたのだ。


「!? よ、よくも舞衣ちゃんを………、お前は絶対に倒す!」


南野のその死を目にした模地は立ち尽くし、呆然とする。

しかし彼女の死を理解した途端激昂。ロングソードを構えまるで高速列車のように早く、猛然とした動きで魔物へ特攻。

ものの数秒で魔物のもとへ到達すると、三発ほど身体へ斬撃をお見舞いする。

流石にこの攻撃は効いた。魔物は攻撃を受けた箇所に首を動かし動きが鈍化する。

普段の模地とは考えられない速度と剣腕、突発的な激しい怒りと憎悪が彼をここまで強くしたのかもしれない。



「な、早……ぐはっ!? (ハーフ・デバ)………ガフッ!?」



この状態ならいける、そう思った模地は敵の背後へと回り込みより深い一撃を狙おうとしていた。

だがしかし、その動きは既に読まれていた。

彼は魔物が瞬間的に繰り出した後ろ足で思い切り蹴飛ばされる。

スキル"折半"を発動するタイミングで、急ピッチで魔物へと手をかざすが、それよりも早く魔物の反撃が飛んできてしまった。

ギリギリロングソードを間に入れるも、魔物のそもそもの脚力が桁違いだった。

武器ごと身体に脚がめり込み骨を粉砕、肺などの臓器を破裂させ、彼も二人と同様に辺りに血を撒き散らしながら勢いよく吹っ飛ぶ。

しかも模地の吹き飛んだ先は、360°全体がナイフのように尖った大岩。

抵抗できぬまま激突し、岩に形成された針のような突起に首や心臓部、大腿部分を貫通させ夥しい血を吐くと力無く項垂れる。

南野舞衣の同級生"模地潮"はその命を、散らしたのだ。



* * *



「ねぇ山田!? 大丈夫なの!?」



一方、神崎の方は敵の攻撃で吹き飛ばされた山田の近くまで駆け寄り、負傷部分の止血を施し彼を介抱していた。


「う、うう……。すまん、神崎!」

「あ、はは……せっかく手当てしたのに悪りぃが神崎……。俺ァ、も、もう助からねぇみたいだな………。神崎、今まで、本当にありがとな……! お、お前は最高の親友だぜ、ガハッ」


山田の意識はもう混濁しており、神崎の言葉を聞いても生死の境を彷徨っている。

魔物の攻撃を喰らった事により、彼の身体のうち数十本の骨が折れてしまい、もはやほぼ動けない状態となっていた。

しかしそんな状況の中彼はニカッと笑顔を作り、ガッツポーズをして彼女が自分にとって最大の友だったと表現する。


「さ、最高の親友……、それって………ふざけないで! 諦めてんじゃないわよ!」

「私は、戦う……っ! 足掻いてやるんだから! 私が相手よ!!」


その言葉を聞いた途端、神崎が声を荒げて山田に喝を飛ばす。

スッと立ち上がると、敵に向けて槍を構え抵抗する覚悟を決める。

それに呼応するかのように、彼女の槍もいつもより暗闇でぼんやりと光ってみえる。

そして、最後のターゲットとして、南野と模地を殺したトカゲの魔物がこちらへ突進を仕掛けてくる。

さあ、いよいよ命をかける時だ。神崎と魔物が激突する。

彼女の槍と敵の牙、爪が金属音を奏でて交錯する。

神崎の槍術の腕はこれまでの修行を通し洗練され達人の域に達しており、真正面からの打ち合いにおいて高い実力を持っていた。

だが、やはりと言うべきか、戦いは魔物の方が優勢、彼女は10秒持たずして防戦一方に。


「うおああああぁぁぁぁぁぁ!」

ググガアアァァァ!!


しかし神崎も粘る。魔物の攻撃を死力を尽くして槍で弾き、いなし、躱す。

無論、自らが持つ速度上昇スキル"俊足(スウィフト)"も発動している。

素早さが極限まで高まり、それに伴い動体視力も上がっているのだ。

簡単にはいかない。彼女のメンタルも強く、かわしきれなかった攻撃による手傷もものともせず、槍を扱う手は全く鈍らない。


「………ぅぅぅううらああぁ! 一発、くらい、もらい……やがれ!」


血反吐と共に声を張り上げ最後の力を振り絞り、山田が大槌を真上に掲げる。

次の瞬間、プルプルと震える身体で大槌を投げ飛ばす。

狙いは、神崎と交戦中のトカゲの魔物だ。

さらに"剛腕(リジリティ)"も発動。攻撃力の上昇につき、筋力が極限まで引き出されている。

そんな状態で武器なんて投げれば、いくら使い手が死の淵といえど、相当な威力となる。


グゴアァ?

「へっ、最後の、悪、あがきだ……」


彼の投げた大槌はクルクルと回転し神崎の頭上を通り、まっすぐ山なりに飛んで魔物へ襲いかかる。

しかし不運にも山田の攻撃は紙一重で気付かれ外されてしまう。


「そりゃああぁぁぁ!!」


ザシュ!!

ギグアァ!


外れたのは残念だが、今ので魔物の体勢は崩れ一瞬だけ攻撃の間隔が空く。

その隙を見逃す神崎ではなかった。この一太刀で逆境をひっくり返す、その意気で繰り出すのは全身全霊をかけた全力の一閃。

彼女の槍による刺突がトカゲの魔物の側頭部を少し掠り、初めて魔物に傷をつける事に成功する。

直撃の瞬間、魔物は頭の向きをズラし、致命を避けた。

だが攻撃が少しでも当たった事が意味するのは、まだ逆転の余地はあるという事。

神崎の勢いも増して行く。



ゴゴガアアァァ!


「ぐ、ガフッ!?」

「う……グブゥォアッ………」



しかし、それはぬか喜びに過ぎなかった。

魔物がけたたましい咆哮を上げ、尾を振り上げる。

次の瞬間、神崎の槍をボロボロに破壊。

彼女に驚く暇さえ与えず、攻撃を仕掛けた。

神崎を全体重を乗せた脚で蹴り上げ、彼女を後方で死にかけている山田ごと、思い切り二人を奥の岩壁へ叩きつけた。

ビッチャリと付近に血を飛散させながら吹き飛ぶ神崎、もう彼女に意識は無く、身体中が血だらけだった。


グイアオオァァァ!!


この攻撃だけでは気が済まず、魔物はその後何度も何度も蹴り、爪で切り裂き、二人を嬲り続けた。

それから暫くして、二人を壁に叩きつけた恐竜の魔物は轟音のような雄叫びをあげると、少しだけ周囲を見回してからその場を後にする。


二人が叩きつけられた壁には夥しい量の赤黒い血飛沫がべったりと付着しており、その下には……内臓も骨も吹き飛び中身が空っぽとなった人間の死体が二体、転がるのみとなった。


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