第57話「ステータスとスキル」
「さて、ではそろそろあなた方の"ステータス"を測定させていただきましょうか……」
コルトンは話を変え、今度はステータスについての説明に入る。
「"ステータス"……? なんかRPGみたいだなぁ〜!」
"ステータス"……それはこの剣と魔法の世界において重要な身体能力の基本情報。HPやMP、ATK、DEF等、数値が高ければ高いほど当人の具体的な強さが決まる。
その単語を聞いた模地は、なぜか上機嫌そうに呟く。
「ん? 何だよ"ステータス"って? 模地! 知ってんならオレにも教えろよ!!」
「へぇぁ!? ス、ステータスっていうのはゲームとかに出てくるっ! キャラクターの強さとか、の、能力を表した言葉だよ!」
彼の様子に気付いた山田が模地に詰め寄り説明を求める。
急な要求に困惑しつつ、模地は山田に教えてあげた。
「強さや能力……か! それは面白ぇな、興味が湧いてきたぜ!」
「皆さんはまだこの世界へ来たばかりなので、今から詳しく説明させていただきますね」
「少々長くなってしまいますが、これから勇者として活動してもらうのでその為と思いお聞き下さい!」
ステータスの話に興味を寄せる山田を見やり、コルトンが本題の説明を行う事を四人に告げる。
そうして、彼らにステータスの説明をする。以前召喚された北本や東洋、伊村の三人に教えたように各項目の詳細を伝えた。
「ステータスって……い、色々あるんだな……。ちょっと全部覚えられねぇぞ?」
「やっぱりゲームみたいで面白そう! 特に"HP"とか"MP"って完全にRPGじゃん!!」
情報量の多さに額に手を当てて困惑する山田、それとは逆に模地は盛り上がっている。
嬉々とした顔を浮かべてステータスの事をまるでゲームだと表現した。
「で? そのステータスっていうやつを今から測るつもりなの?」
彼らの話を横から耳にしていた神崎がコルトンへ聞く。
「ええ! その通りです!! ……ですが、どうか少しの間お待ち下さい!」
「ステータスを測るには"水晶玉"が必要で、それがあれば強く念じるだけで己のステータスを判定する事ができるのですが……、この場所にはソレが無いので一度取りに行ってきます! 少々お待ちくださいね!」
ステータスを調べるにはある方法がある。だがその方法を実行するには用意が不十分だった。
ステータスを測る道具、"水晶玉"だ。コルトンは玉を取りに行くと四人へ言い残すと、間も無くかけ足でその場を後にして行った。
(ステータスかぁ、潮君は強さや能力を表したと言ってたけど、それを測ればあたしの強さが分かるのかな……?)
彼の後ろ姿を見送る四人。
その中の南野も三人に続き興味を抱いた。自分の詳細な実力はどれくらいなのか、どんな情報が見られるのか………
少し楽しみになってきていた。
◇ ◇ ◇
「皆さん、持って参りました! これが水晶玉と呼ばれる道具です!」
暫くして、場を離れていたコルトンが帰って来る。
彼の手には淡い光を宿す透明な球体……例の"水晶玉"だ。
「おっ、やっと来たか! うわっ、すげえ丸いなぁ!」
「如何にも魔法使いが持ってそうな水晶玉ね、なぜ光ってるのか不思議だけど……、これを使ってステータスを調べる、なんて事できるのかしら?」
他の三人がそれをまじまじと観察する中、山田が興奮気味に感想を口にする。
隣でまじまじと見つめる神崎もその水晶玉をじっと眺めるが、彼女は怪訝そうな様子を示す。
まだ効果を疑っているようだ。
「す、凄い! ……これが水晶玉! 実物なんて初めて見た!!」
模地の方は予想通りと言うべきか、とても気分を高揚させている。
「へぇ〜! これが占いの道具とかによく使われてるやつかぁ〜! 近くから見るととても神秘的だなぁ!」
日本で見るようなものと比較をしつつ水晶玉を覗き込む南野。
すると彼女も笑みを浮かべ目を煌めかせ、自身の感想を述べる。
「ではでは早速、皆さんのステータスを測って行きましょう! ……まずは山田さん、あなたからです。どうぞ」
「この水晶玉に"ステータス"と数秒間念じながら手を触れていただけますか?」
早速コルトンがステータス確認作業に取りかかる。
手頃な木箱を見つけ水晶玉を設置すると四人に呼びかけ、まず手始めに山田から水晶玉に触れるよう促す。
「よっし、わかったぜ! ………お! 何か出たぞコルトン!」
山田は意気揚々と水晶玉に触れ"ステータス"、と強く念じる。
すると、彼の目の前に半透明なウィンドウが表示され、そこに大小様々な数値がズラリと並んでいた。これが"ステータス"。彼の強さを示すパラメータだ。
「そのウィンドウにあなたのステータスが表示されている筈です」
「それを見て今自分がどれくらいの強さなのかを確認する事ができます。実際に見てみて下さい」
それを目にしたコルトンが、詳細情報を確認するよう山田に促す。
「お、おう! えーとなになに……」
自分のステータスがどんなものか、早速山田は各種情報に目を通す。
【名前】 山田 裕一
【性別】 男性
【種族】 人間
【職業】 学生
【年齢】 16歳
【体調】 健康
【Lv】 1
【HP】 57
【MP】 8
【ATK】 65
【INT】 5
【RES】 48
【DEF】 52
【SPD】 39
【CHM】 35
【MOT】 41
【LUK】 17
【DEX】 30
【総合力】 321
「………ていうステータスだったぜ! どうだコルトン!? 俺の強さはっ!」
山田のステータスはこのようなものだった。
これを確認し終えると、彼は誇らしげな表情をしながらコルトンにステータスを知らせる。
「は、はい………。ん? えー……、まあ、わ、悪くはないステータスなんじゃないでしょうか……?」
「はっ!? 何だよその反応!? ひでえな!」
だがコルトンはそれを見た途端、意外そうな様相を呈する。
実力を示す総合力が3桁と、以前召喚した北本や東洋と比べると見劣りする数値……彼にとっては拍子抜けも良いところだった。
山田は彼の態度を不満に思いつつ、再び水晶玉へ視線を戻す。
「まあ良い、次は"スキル"だなコルトン! で? どうすりゃいいんだ?」
「あ、あぁはい……。えーその前に、ウィンドウをスキル専用仕様にさせて頂きます。よろしいですか?」
「別に良いぞ、けど早いとこ知りてぇからできるだけ急いでくれよ?」
「ええ、言われなくとも理解していますよ」
そして、次に二人はスキルの確認へ移る。
山田が気分を昂らせながら問うが、それを行う前にひとまず準備が必要になっていた。今のまま、ステータスが表示されたままではスキルの詳細が見られないからだ。
コルトンの言葉を了承した彼は、返事すると同時に急かした。
水晶玉の前に立ち、両手を忙しなく動かし仕様変更を施すコルトン。
暫く待ち続け、
「……はい。これで準備が整いました。山田さん、この水晶玉に先程と同じ様にお手を……」
変更作業が終わり、彼が再び山田へ声をかける。
水晶玉から一旦離れると、玉の前を山田に譲り静かに経過を見守る。
「おーし! じゃあさっさとやるとするか!」
今度こそ、山田はスキルを確認すべく水晶玉へ右手を置く。
すると、山田が触れている間 水晶玉には"スキル確認中"と日本語で表示される。
程なくして目の前に先と同様のウィンドウが映し出された。
「うおっ!? これがスキルウィンドウ!? どれどれ……? 何だこりゃ? "剛腕"?」
山田は驚きの声を漏らすが、展開されたウィンドウに映る情報をすぐに目を通す。
そこに書いてあるのは〔スキル一覧〕という名称の下、"剛腕"というスキルだった。彼はソレの振り仮名を呟く。
「……!! "剛腕"……、山田さん、スキル名を指で押してみて下さい!」
「ああ! こうだな! ……おっ、こりゃスキルの説明文か? えーと………」
彼のスキルを目にしたコルトンが目を丸くする。急ぎ山田にスキル名に触れる事を促す。
そうして山田がスキル欄をタップすると、〔スキル説明〕と画面が切り替わり、"剛腕"の説明文が表示される。
「『剛腕・使用者の体力を消費する事で攻撃力を大幅に上げる。・レベルが上がる事によって更に攻撃力の増幅する値が高まる。・体力が尽きるまでスキル発動の継続が可能。また、負傷し追い詰められた場合は体力消費無しで自動発動する』………うおっ、やべえなこのスキル! オレにピッタリだぜ!」
詳細に記された"剛腕"の説明文、山田が声に出して読み上げると喜びに打ち震える。
「す、凄い! やはり転移者は私と違って毎回優秀なスキルを持っている……。だが如何せん"後天性"………そこまで期待しない方が良いのだろうか………」
彼の説明を聞いたコルトンは最初こそ同じ反応をするも、少し山田から離れた場所に移動するとボソリと呟く。
このスキルは要約すれば一部ステータスを上げるだけの単なるバフスキル。
効果が強力でデメリットの少ない先天性のスキルでない事は明らかだった。コルトンは想定からズレた結果になったと溜息を漏らす。
◇ ◇ ◇
「……さて、次は神崎さん、貴方のステータスとスキルを測らせていただきます。こちらへ来て下さい!」
山田のスキル確認を終え、次にコルトンが呼んだのは神崎。
腕を組みジッと水晶玉を睨み訝しんでいる彼女に呼びかけた。
「はあ………仕方ないわね。手っ取り早く測ってよ?」
「はい、承知してますよ! どうぞどうぞやってみて下さい!」
次は自分が強さを判定する番。しかし神崎は正直乗り気ではなかった。
測定などしている場合か、時間が勿体無いと言わんばかりに煩わしげな顔を浮かべ、水晶玉の方に向かう。
コルトンの方は既に水晶玉を操作し、スキル仕様からステータス仕様に変更させている。
「………、!! 出たわ」
水晶玉に触れた瞬間、神崎の目の前にウィンドウが映し出された。
彼女も山田に倣い早速自分のステータスを確認し始める。
【名前】 神崎 美佳
【性別】 女性
【種族】 人間
【職業】 学生
【年齢】 16歳
【体調】 健康
【Lv】 1
【HP】 42
【MP】 17
【ATK】 48
【INT】 11
【RES】 35
【DEF】 36
【SPD】 47
【CHM】 40
【MOT】 82
【LUK】 9
【DEX】 40
【総合力】 285
「……だったわ。まあ、こんなものかしらね?」
神崎は自分のステータスをコルトンに伝えると、あまり気取らない様子で言葉を口にする。
「に、"285"……。わ、わ……悪くは……無いでしょう。はい……じゃ、じゃあ次にスキルの方を確認していきましょう!」
高すぎず、低すぎず、彼女は実に普通のステータスだった。
さすがのコルトンも自分の予想を下回っていたからなのか、かなり戸惑いの様子を示す。
だが即座に平静を装うと神崎に次やる事を知らせる。
スキルの確認だ。ウィンドウを慣れた手つきで変更した後再び彼女に手を触れさせた。
「……ウィンドウが出たわ。で、"俊足"ってソレっぽいのが出てきたけどこれを押せば良いのよね?」
「"俊足"……か………あっ! は、はい、押して下さいどうぞ!」
すると神崎の目の前に今度はスキルウィンドウが展開される。
画面に表示されたスキルは"俊足"。
早速その"俊足"に触れれば良いか確認を行う。
だがコルトンは"俊足"の詳細を推察していたのかやや反応が遅れ、慌てて許可を出す。
「じゃあ押すわよ、あっ出たわね。んーと、『俊足・使用者の体力を消費する代わりに素早さを大幅に上げる。・レベルが上がる事によって更に素早さが増幅する値が高まる。・体力が尽きるまでスキル発動の継続が可能。また、負傷し追い詰められた場合は体力消費無しで自動発動する』………へぇ、なかなか良いスキルじゃないの」
スキルの概要を朗読すると、神崎は少しだけ笑みを浮かべて呟いた。
「なるほど……神崎さんも山田さんと同様に無難で有益なスキル………。後天性とは言えこのような代物を二人も……」
山田のスキル"剛腕"と神崎のスキル"俊足"……。
これら二つの使用効果は何れも使用時の体力消費というデメリットはあれど、それを含めても有用な能力だとコルトンはぼやく。
独り言を程々に、彼は再びウィンドウを切り替える。
「では模地さん! 今度は貴方です、こちらへ!」
次に声をかけたのは模地。
コルトンは手招きするが、当の本人は先程から緊張気味な顔で水晶玉を凝視している。
「んっ……? ええぇ!? ぼ、僕ですか!? あの、そ、んなに期待しないで下さいよ? どうせ僕なんて全然強くないし………」
少し時間を置き、自分の番がきた事に気付くと彼は慌てふためく。
そして、自信の無い後ろ向きな言葉をボソボソと呟き肩を落とす。
「なんだ、もう準備万端じゃないですか! やってみなければわかりません、さあ早くやりましょう!」
コルトンはそんな模地の様子を見ても全く気にせず、水晶玉に触れるよう勧める。
「は、はい。わかりましたよ………。こうすれば良いんですね……?」
「って、うわっ!? びっくりした……。こ、これが僕のステータスなの……?」
観念したかのように模地は水晶玉に手を触れた。
直後、ステータスウィンドウが彼の眼前に出現する。
それに少し驚くものの、これまでの一連の流れをもとに落ち着いて自身のステータスを確認し始める。
【名前】 模地 潮
【性別】 男性
【種族】 人間
【職業】 学生
【年齢】 15歳
【体調】 健康
【Lv】 1
【HP】 25
【MP】 12
【ATK】 22
【INT】 9
【RES】 7
【DEF】 15
【SPD】 28
【CHM】 11
【MOT】 20
【LUK】 5
【DEX】 28
【総合力】 151
「……だったです。もう嫌だ僕なんて……」
模地はコルトンへステータスの数値を知らせた。
……が、またもや不安げな表情を浮かべ落胆している。
「ええぇ……こ、コレは………、あ、ゴホン! な、何でもないです。ま、まあそんな落ち込まないで下さいよ! いずれ強くなりますって! ははは、はは………」
実際落ち込むのも分かる。彼のステータスは他二人と比べて低い。
そんな模地を見て勇気付けようとするも、その裏でコルトンは期待外れだといった反応を見せていた。
「こ、こんな僕でも……? 強くなれるんですか?」
「も、もちろん! まだ諦めるのは早いですよ! ……さあ、スキルの方も測るのです!」
何とも不安げな顔をしつつ模地が尋ねると、コルトンはこれ以上落ち込ませまいと最大限の配慮を行う。
次はスキルだ。彼は模地のステータスウィンドウを変更し、再び触れるのを促す。
「……っ! で、出た!! "折半"……? これが……僕のスキル?」
「え、えーと……、確かスキルを指でタッチすれば……スキルの説明が出るんだっけ……? ……えい!」
言われた通り模地は手を触れる。
すると、彼の前に今度はスキルウィンドウが展開される。
そこには"折半"という名のスキルが一つ。
次はどうするか一瞬迷った模地、しかしやり方は単純。指で触れるだけ。スキル"折半"を右手でタップする。
「おお! 出てきた……! え、えーと……『折半・発動すると使用者は体力を消費する代わりに、あらゆる物を半分に分割する事ができる。・レベルが上がる事によって更に質量の大きい物を半分にできるようになる。・体力が尽きるまでスキルの発動継続が可能。』……え? なんか、ぼ、僕のスキル強いんだけど……?」
すると、ウィンドウに"折半"の説明文が表示された。
対象を半分にする能力……、読むにどうやら普通のものではなさそうだ。興奮気味に模地は早速その文を朗読、そしてコルトンに詳細を知らせる。
「……"先天性"、やはりそのスキルは"先天性"ですね模地さん!! まさかあなたのような才能の塊に出会えるなんて……こ、これは奇跡だ! 奇跡が起きたぞー!! はっはっはっはー!」
報告を受けたコルトンは目を見開き歓喜の声を上げる。
笑い声をあげ模地の手を取り天を見上げた。
そう、彼が求めていたのはまさにこの先天性のスキルだ。
「え? "先天性"って何ですか?」
「は! 失礼! 先天性というのは、生まれつき持っているスキルの事を言います!」
「また、修行を行う事で会得できるスキルについては、全般的に"後天性"のスキルと呼ぶんですよ!」
先天性スキルとは後天性のものより便利で強力な効果を発揮する。
そうした特徴の為、コルトンは後天性よりもそちらに期待を寄せていた訳だ。そして今回遂にお目当ての先天性スキルを持つ者が現れてくれた。
これに喜ばずにはいられなかったが、一旦いつもの調子に戻すと模地に"先天性"とは何かを教える。
「す、すごいんだなあ……コルトンさん、ありがとうございます……!」
「あ、いえいえ……滅相もないです。あははは……」
その特徴、利便性を知った模地は息を呑む。自分のスキルの貴重さを理解した。
落ち込まなくて良かった、コルトンは先天性スキルの興奮から冷め模地の嬉しそうな様子を確認すると彼からの礼に応えるのだった。




