第55話「勇者候補登場」
カッ!! キュイイイイイン!!
「………っ!!?」
儀式を行うこと、実に通算85回目……
魔法陣の中心部から甲高い音が鳴りその場は煌々と光り輝く。
今までの儀式では起きなかった現象に驚く暇もなく、周囲にいるコルトン含む召喚士達は思わず目を瞑る。
「くっ! 眩しい……ッ!?」
次の瞬間、魔法陣より光が一直線に延びる。
ソレはあっという間に辺りを包み込み、コルトン達の視界を純白に染め上げた。
「はっ! も、もしや……!? こっ、この光は………あの時の! しょ、召喚………成功だっ! は……ははっ、ハハハハハーーーッ!!」
周囲が白一色に統一されて行く中、コルトンはその光景を瞬時に前回の勇者召喚時と同様の現象だと理解。
雪辱晴らすべくリベンジした召喚の儀式が、苦労の甲斐あって再び成功したのだと喜びに打ち震えたのだった。
* * *
「………あれ? ……ここは?」
光は収束し、残された魔法陣の中心には数人の男女が立っていた。
茶色の制服を着た高校生くらいの四人の若者、うち一人は黒髪の少し地味そうな青年。
彼は不思議そうな面持ちで辺りをキョロキョロと見回し、自分たちを召喚士たちが取り囲んでいる事を確認すると、同じく動揺していた他の三人も今自らが置かれている状況に気付いた。
「ひ、光が消えた……? あっ! 魔法陣に誰か立っている! 人だっ!」
「という事はつまり……。や、やったぞ! 召喚は成功したぞ!!」
「ああぁ……本当にMPも残り僅かでギリギリでしたが……、どうにか勇者候補の方たちを召喚できたようですね………」
彼ら四人の周りに立つ15人もの召喚士たちは、疲弊しきった顔をしながら召喚が成功した事への安堵の言葉を口にしている。
儀式が成功するまで七時間にも及んだので、こうなるのも無理はないだろう。
「……お、おいおい! さっきからあんたら一体何なんだよ! てかここは何処だよ!? 確かオレらは学校の廊下を歩いてたはずだよなっ!?」
すると、魔法陣の方から粗暴な言動の声が投げられる。
そう、声の主は召喚で呼ばれたあの"四人"の中の一人だ。
短めの黒髪に、鍛えているのか引き締まった身体の青年。彼が驚愕に染まった顔で召喚士達へ質問を飛ばした。
一方、その右隣では打って変わって不安げな様子の青年が一歩後ずさっている。
だが黒短髪の彼に話を振られてしまう。
「ッ!? あ、あぁうん………。さっきまで僕たちは普通に廊下を進んでいたと思うんだけど……」
青年はビクッと肩を振るわせるとその足を止め、少し戸惑いを示しつつ直前までの状況を整理する。
「その時、急に目の前が真っ白になって、……でそのすぐ後ここに来てたんだよね。なんだか信じられないけど……」
すると、青年の右後方から若い女性の声がする。
黒髪の二人が振り返ると、声をかけたのは焦茶色の髪の少女。
10代半ばくらいの見た目で前二人と一緒の茶の制服を着こなす見なりから推察するに、彼女も彼らの同級生か。
自分らの置かれている状況……先の青年が多少言っていたが、彼女が更に主観的事実に基づき今の説明を補足した。
「う、うん………」
この説明を聞いて青年も肯定しゆっくりと頷く。
そうすると、顔を伺うようにもう一人の黒短髪の青年の方を見た。
(あーあ、本当ここどこなんだろう。……なんか見たところ魔導士っぽい服着た人たちがあたしたちを取り囲んでるみたいだし、もしかして………所謂"ファンタジー世界"ってやつに来ちゃったって感じなのかな?)
少女は、自分たちの周りの召喚士らの様子を観察し推測をする。
ここが、自分らの居るこの世界こそが、剣と魔法の西洋風ファンタジーの世界だったんだ、と一人確信を抱く。
「……とにかく! あなたたちが私たちに何かしたって事で間違いないわよね!?」
その時、茶髪の少女の横から口出しする者がいた。
彼らの話を先程から腕を組んで聞いていた長い黒髪の少女が召喚士たちに対し、鋭い目つきをしながら詰問する。
その身長は高く、同級生の男二人に並ぶ程の大きさだ。
「……これはこれは、こちら側からいきなり呼び出しておいて失礼しますが、まずは自己紹介といきましょう。………私の名は"コルトン・ランガー"と申します。……あなたのお名前は?」
彼女の問いかけを耳にしたのか、魔法陣を囲む召喚士達の中でも四名の後方部に立っていたコルトンが、薄ら笑いを浮かべながら自己紹介の言葉を口にする。
同時に青年らのもとへ向かって行くが、その足取りは速い。
「……? 名前? 私は"神崎 美佳"だけど……。って!? 私は自己紹介をしたい訳じゃないわ!!」
彼の名前を聞いた長髪少女、つられて彼女も自身の名を名乗る。
だがすぐ我に返ると、別に馴れ合いたい訳ではないと眉間に皺を寄せ不満をあらわにする。
「まぁまぁ落ち着いて下さい……。さあ、そちらのお三方も名前を聞かせていただけますか?」
神崎という少女の言葉を受け、コルトンは表情一つ崩さず彼女を宥める。
そうして、彼は次いで神崎の他三人にも自己紹介を促した。
「あ? オレは"山田 裕一"だ! ……だからどうしたってんだオラァァァ!!」
その催促に応え、まずはガタイの良い短髪の青年が名を名乗る。
拳に力を込め、なぜかキレ気味に叫んだ。
……威嚇のつもりなんだろうか。
「あ、あの……。ぼ、僕の名前は"模地 潮"と言います………。す、すみません……」
山田という青年の隣、少し怯えた様子の青年にコルトンは目線を向ける。
流されるがまま山田の隣の青年は名乗らざるを得なかった。
黒髪の地味な青年、名前は模地と言うが何故か言葉の最後で謝罪を口にする。
「だから何で謝るんだよ潮! お前のその癖どうにかなんねぇのか!!」
「ひ、ひいぃぃ……、僕そんなつもりじゃあ……、自然に出ちゃったんだよぉ……」
それを横から聞いていた山田が、模地に目線を移すと弱腰な態度にキレ散らかす。
模地もビビりながらわざとじゃないと弁明する。
「まあまあ、その辺にしといたら? 潮くんも悪気があって言ってるんじゃないだろうし」
そんな二人の掛け合いを前方より聞いていた茶髪の少女が、二人の間に立って仲裁した。
「み、南野……、チッ、わかったよ」
少女に引き止められた山田は渋々了承すると引き下がる。
その際、恐らく彼女の名字を呼んだ。
「コルトンさん? ……だっけ? あたしは"南野 舞衣"! よろしくお願いしますねっ!」
二人の言い合いが終わった後、仕切り直して少女が自己紹介を行う。
"南野舞衣"、彼女は陽気な笑みを浮かべてコルトンへ挨拶をした。
「ええ、こちらこそ。……さて、これから皆さんに私共の事情を説明させていただきますが、準備はよろしいでしょうか?」
南野と名乗る少女の言葉を聞きコルトンの方も微笑み頷く。
こうして自己紹介もひと段落着くと、今度は彼ら四人を"この世界"へ召喚した理由の説明に入るのだった。




