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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
四人の転移者編

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第54話「召喚の儀式」



「むう、どうしたものか………」



コツンコツン、と硬い足音が響き渡る。

月夜が上から照らし、甲冑の石像が並ぶ廊下にてコルトンは一人物思いに耽りながら歩く。


(勇者召喚の儀式を複数人で行うには、私と同じ召喚士が少なくともあと15人(・・・)は必要となる……)

(しかし、人数の他に……私と同等かそれに近い腕の召喚士が他にいるかどうかが問題だな………)


彼を悩ませるは召喚魔法の最適な方法。

無論、一人では成功確率も精度も落ちる。

なので何人か集って召喚を行う必要がある訳だが、失敗を防ぐ為に要となる秀でた召喚士についてまるで見当がつかずにいた。


(…………! そうだ、あいつ(・・・)に頼めば………明日の夕刻までに腕利きの召喚士を集められるかもしれないな……!)


しばらく思い悩むとコルトンは閃く。

方法としては自身の知り合いに人材の召集をやってもらうとの事。

時間に追われる身である以上、他人の力を借りながら目標達成に尽力した方が良いと判断したのだろう。

早速彼は当人のもとへ足を運ぶのだった。



◇ ◇ ◇



「ーーーで、僕に懇願しに来たと?」

「ああ、そんなところだ。頼む、ハリアス(・・・・)……! 明日の夜になる前に……どうにかして勇者候補を召喚しなければならないんだ!!」



場所は移り、近場の時計台内部に存在する図書館でコルトンは銀色の髪の青年ハリアスと話をする。

身に包む碧のローブは書斎の壁や本棚の色彩と一致しており、施設の関係者を匂わせるこの青年が先の話題にあった知人、コルトン自身が今抱えている悩みを相談すべく会いに来たのだ。

切迫した状況を明かされた彼はその頼みを聞くなり顎に手を当て考え込む。


「………うーん。わかった、手を貸そう。けどその代わり、無事召喚できたら……その時は帝王様からの褒美を僕にも分けてもらうからね?」


暫し思案し返答をするハリアス。依頼は承諾され彼が人集めを担ってくれる事になった。但し、報酬の山分けを要求してきたが。


「もちろんだ、報酬品の半分はお前に分けよう! ……とにかくあまり時間が無い! できる限り早めに招集してくれ! 裕福(・・)なお前にしかできなさそうな頼みなんだ!」


迷いなくコルトンは頷く。図書館の窓から夜空を一瞥し、時間に追われている様子を演出した。

彼としては無論断って別の条件を提示されるのを待つ余裕はない。一刻も早く人数をかき集めたいと意思表示する。


「りょーかい、よし、ちょっと待ってて。すぐに戻るから」


すると、ハリアスは一言残して図書館奥へ姿を消す。

否、奥にある漆黒の扉を開けガチャンと室内に入った。


程なくして、ハリアスが部屋から戻って来る。

彼の手に握られているのは黒く細長い棒のような道具。それを無造作に目の前の机へ置いた。



「なるほど、"マナコン"を使うんだな?」



形状からして何らかの精密機器を思わせる。

彼の持ち込んだ科学技術の結晶を前にコルトンは伺う。


「もちろん。人間の魔力量を探知して……、およそ数千キロメートル圏内に居る友達や知り合いと連絡がとれる"コイツ"で、僕の仲間の召喚士たちに今回の事を知らせるんだよ」


その問いかけにハリアスは頷いた。

現代における生活必需品"スマートフォン"を模した形の機械、これを活用し人集めを行うようだ。

効果範囲はおよそ数千キロメートルにも及び、範囲内の人間の魔力量を探知、そこから相互連絡がとれる代物だという。


「ふむ、確かにそれを使えば時間もかからずに済みそうだな……」

「だが、聞くところによると"マナコン"というものは、魔導都市のショップで"数百万"もの価格で販売されているらしいじゃないか。………そんな高価なものがよく買えたな?」


しかしこの道具はとても貴重で、素人が容易に手が出せる価格設定をしていなかった。

機能の有用性には納得するが、この点に関しついついコルトンは疑問を投げかける。


「このくらい買う金ならいくらでも持ってる。僕の総資産はそこらの三流貴族とは比較にならないからね」


庶民には決して手が届かぬ高級品"マナコン"。

一台だけでも高額だが、彼によると金銭的余裕は充分な模様だ。


「ふっ、そうだな。まあとにかくハリアス、……実に助かる、礼を言おう!」


一先ず話を切り上げコルトンが礼を述べる。

その顔には安堵と緊張がほぐれ、混ざった和かな笑みが浮かんでいた。


「礼には及ばないよ。何せ帝王様からのお礼の半分をくれるんだからね? このくらいは当然だよ」

「はははっ、そうか。金好きのお前らしい意見だな!」


ハリアスもつられて頰を釣り上げ返事する。

彼がここまで協力したのは知人である以上に、今回の指令を下した帝王から賜る報酬を得る為だった。

金や富目当てでの行動とは言え力を貸してくれたのは事実。

冗談にしろ本当にしろ、彼の助力にコルトンは感謝の念を抱きその場を後にして行く。



◇ ◇ ◇



「よし、この人数なら充分だ! これより勇者召喚の儀式を開始する!!」



更に時は流れて、場所は天井の高い大きな洋風建築。

もう既に日が東から昇り始めている時間帯、そんな中コルトンは召喚魔法の儀式を執り行う事を声高に宣言する。


「「御意!」」

(ハリアスのおかげでたった四刻も経たないうちに勇者召喚が行える。この召喚が成功した後は、きっちりあいつにも報酬を分けてやらないとな………)


彼の両隣を円環上に立つのは自身と同じ召喚士達。

彼らがマナコンで招集した面々で、コルトン始め自分らの足下に青白く描かれた大きな魔法陣を静かに見下ろす。

先刻の宣言を聞き短く言葉を返すと、魔法陣に向かい一斉に両手を構えた。


そうして魔力量が高まって来ると、コルトンはしみじみとこれまでの経緯を振り返る。

今自分たちがここに集まり儀式が行えるのはハリアスが手を貸してくれたからだと改めて実感させられた。


(………。100年ほど前の文献によれば、勇者召喚魔法が成功する確率はたったの"0.3%"くらいだそうだが、私を含め16人の召喚士でやれば"4%"を超える確率で召喚を成功させる事ができる……)

(だから、私がやった時よりもそうそう時間はかからない筈だろう。それでも何十回は失敗するとは思うが……)


書物の情報を参考に召喚実施時の成功確率を計算する。

一人のみで行うならば無論低いものの、複数人で取り掛かればその分数値は上がるという。

ただ上昇すると言っても10%すら越すことはなく、結構な長丁場になる事が予想される。


(……だが、今ここでこの召喚士全員で行えば、勇者候補を召喚できるかもしれない!)

(私の魔力が尽き身体が枯渇しようと構わない! 4%の確率に賭けよう。私の命を!!)


ただそれらのデメリットを理解した上でもコルトンは断念しなかった。

何故ならば………失敗が許されないからだ。

半日前、ガリオスから告げられた事を思い起こしながら、自らの召喚士人生の全てを捧げる大一番に身を投じると決意を抱く。



「……悪を討つ才と勇気ある異界の者よ! 我らが呼び声に応え今こそその姿を現したまえ!!」



一拍置き、コルトンが声を張り上げ叫ぶ。

自分らとは異なる世界に住まう人間を呼び出す為の魔法、その成功を願いて両の手を突き出し魔力を込めた。

また、彼の声に応じ他の者たちも同様に出力する魔力量を最大限に引き上げる。

そして……コルトンらが勇者候補の召喚儀式をした回数、なんとおよそ85回目。


遂に彼らの想いが実る瞬間が訪れる。


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