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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
冒険者編

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第50話「プレイントリマー」



「ここが"クームル平原"だっ! ……広いだろ〜?」



ギルドで依頼を受けた一行は準備を終え街を後にする。

場所は移動し、彼らの今回の依頼先の雄大な自然広がる平原へ訪れた。


「う、うわぁー! 確かにすっごい広々としてますねぇ! ……って!? ア、アレはもしかしてモンスターですかっ!!?」


グリードの言葉通り広く、幾つもの草木が群生している野性味溢れる場所。

言葉を口にする途中、伊村が目撃したのは大きな角を額の部分に生やした兎に似た動物。

彼らが数匹、平原を駆けているのを目にして慌てて聞いた。


「ああ、アレは"イッカクホーン"っていう魔物だ。……あの角で突っ込まれでもしたら厄介なんだが、こちらから仕掛けねぇ限り攻撃してくることはねぇから心配するな」


伊村の問いに答えたのはレオス。

走っているのは"イッカクホーン"という魔物のようで、危険は危険だが、無闇に刺激しなければ基本的に人間には害を与えない模様。


「へぇ! あのモンスターは"イッカクホーン"っていうんですね。あ、そういえば今回の依頼って何をするんでしたっけ?」


その説明に成程と納得する伊村。

だが彼はうっかり、といった表情を浮かべると、次は受けた依頼の内容がどんなものだったかをレオスへ問いかけた。


「"プレイントリマー"を明日までに三体討伐する依頼だ、報酬は銅貨53枚でその魔物はこの平原に生息しているらしい」

「……因みに"プレイントリマー"ってのは青い体に黄色の鶏冠が付いてる2メートルくらいのデカい鳥みてぇな魔物だから、遠くから見ても一目で分かるだろうぜ」


彼によれば、今回の依頼内容は魔物の討伐依頼。

それも大型の鳥型魔物を倒さなければならず、1体のみならず三体分を明日までに狩る必要があるという。


「と、討伐依頼!? ……え!? い、いきなり魔物なんかをおれに倒せって言うんですかっ!? ちょっ、おれこんな総合力でまだ戦えるのかどうかも分からないのにっ!?」


依頼内容を知るや否や伊村は動揺する。

冒険者になってから間もない上、恐らく打たれ弱いであろう自分が早くも魔物を倒せという無茶難題を突きつけられたと取り乱す。


「まぁ……頑張れ、もしピンチになったら俺らの後ろに隠れていろ。そうすりゃあ死ぬ事は無いだろ、多分」


レオスが彼を勇気付けるものの、命を保証しきれるのかどうか不明瞭である。


「後ろ……? つ、つまりおれが殺されそうになったりしたら、あ、あなたたちを盾にして戦線離脱しろっていう事ですか……?」


レオスの言葉を伊村は万が一危険が迫れば逃亡しても良いと解釈する。

頬に汗をかき驚きながら聞く。


「いや……、少し違うな。戦闘に参加しないって事じゃないぞ。ただ今のお前じゃあ………今回討伐する魔物はおろか、スライムやゴブリンすら倒せねぇだろう」

「だからお前は俺らの後ろで隙をついてトドメを刺せ。プレイントリマーは俺らが追い詰めるからよ……」


もしもの時は逃げても良いのかを問われるも、レオスは否定する。

伊村は弱い、それは知っている。なので今回の依頼は自分ら三人が戦闘を行う傍、一人後方で待機しタイミングを見て最後の一撃を与えるように促した。


「そうですか……、わかりました。本当はおれも先陣を切って戦いたいけど……それだとかえって足手まといになります! なのであなた方の後ろでやらせていただきますね!」


本音を言うなら自分は前衛として戦闘に参加したい。

しかしそうなると逆に三人に迷惑をかけてしまう、ならば文句は言えないと思った彼は素直に後衛に入り戦うことにした。


「………! おいグリード。早速討伐対象が出てきたみたいだぞ? しかも丁度三体。こりゃすぐ終わりそうだ……!」


すると、話の合間に平原へ視線を向けていたレオスが報告した。

話題に出た今回討伐する魔物、それと特徴が全て一致している"プレイントリマー"を発見した事を呑気に背伸び中のグリードに知らせる。


「んん……? おおっ! 確かにありゃプレイントリマーだなっ!! はははっ! 今日はなんて運が良いんだ!!」


報せを受け急ぎその方へ目を向けたグリードも、彼らの存在を確かめると目を見開きながら歓喜した。


「よしお前ら! 急いでアイツらが居るところまで行くぜっ!!」


そうしてグリード達は動き出す。

プレイントリマーらの付近へ静かに草陰に隠れつつ移動して行く。



◇ ◇ ◇



移動を終え、四人は草陰で立ち止まり身を屈める。

目の前の草むらの間から見えるのは、討伐対象の三体のプレイントリマー。

芝生状の野草が辺り一帯に生えた場所、その前まで来て魔物の動きを窺う。


「さて! ここまで来たが………おいおい、大丈夫か伊村っ?」


背丈の高い雑草の陰より敵の様子を見ているグリードが、魔物に聞こえないように極力控えめな声量で胸を押さえる伊村に話しかける。


「ふぅーっ………。ま、まあ……何とかついては、来れましたが、できればもう少し……、ゆっくり行って欲しかったですね………」


が、皆に置いていかれないように必死に歩くペースについてきた伊村は、着いた途端苦しそうに深呼吸。

息を整えた後台詞が途切れ途切れになりつつ何とか自分の意見をグリードへ伝えた。


「そ、そうかっ……悪い。今度から気を付けよう………」


彼の苦言には応えたのか、グリードは頬を指で掻きながら詫びた。


「………! グリード。三体とも後ろを向いたぜ? テレフィ、心眼は?」


すると、プレイントリマーの動きを凝視していたレオスが死角ができたことを知らせる。

待ちに待った絶好の機会。目を閉じてどうやら意識を集中させている様子のテレフィへ尋ねた。


「………もう読んだ。みんな地面の草を食べるのに夢中になってるみたい」


が聞く前から既に彼女は心を読み取っており、それによるとどうやら三体それぞれが近くに生えている野草を啄んでいて、こちらの存在には全く気付いていないようだ。


「そうか……。俺らにはまだ気付いてねぇみてぇだな。もう行くかグリード?」


その言葉を聞き納得するレオス。

今がチャンスだとグリードへ声をかけ奇襲の確認する。


「そうだなっ! よーし、全員準備は良いかっ!? 行くぞっ!!」


彼も相槌を打ち認可。

分かりやすく背後から不意打ちを仕掛け討伐する作戦で、彼ら二人と後方のテレフィと伊村も離れたところから戦闘に参加する。


キェアアッ?


そして、作戦は満を持して決行された。

茂みから機敏な動きで距離を詰めて行くグリードとレオス。

彼ら二人にプレイントリマーの群れはすぐに気付き、自分の身体を彼らの居る方へ向けようとする。


「遅いぜっ!」

「終わりだっ……!!」


が、その一連の動きを見抜いた二人が瞬時に三体のうち二体の死角に回り込むと、グリードは剣、レオスは刀で攻撃。

あっという間に二羽の首をはねて討ち取った。


ギャオアアァァァッ!?


二人によって首を斬られた二羽は甲高い断末魔と共に切断面から血を噴出させた後、胴体部分が力なくその場に倒れた。


「よし! 倒したぜ、あとはもう一体だっ!!」


無事作戦が成功しガッツポーズをするグリード。

最後にまだ生きている残り1体を仕留めるべく移動しようとした。


「………ん? 居ない……? いや待て! おい、テレフィと伊村は!? ………あれは! 最後のヤツが伊村のとこへ向かってるぞっ!?」


しかし……

その1体は現場には居らず、レオスとグリードはキョロキョロと辺りを見回す。

レオスが草むらの方を探すと、驚くべきことに二人はそこより数十メートル以上も離れた地点でラスト1体のプレイントリマーと対峙しているのを目の当たりにし、急いでグリードに知らせた。


「はあ!? お、おいおいマジかっ!? 伊村ーっ! 魔物を迎え撃つんだーっ!!」


敵意剥き出しの、しかも魔物に追われるのはテレフィもそうだが何より戦闘経験も実力もない伊村には危ない。

この事態にグリードは焦燥に染まり、迎撃するよう二人に向けて大声で叫びながら、自分達も助けに入るべく全速力で駆け出すのだった。



◇ ◇ ◇



「はぁっ……! はぁっ……! く、くそーっ! 何でおれだけ狙うんだよっ!?」


激しく息を吐き腕を動かし、懸命に走る。

伊村は最後に残ったプレイントリマーに執拗に狙われ追いかけられており、追い詰められた彼は隙を見て草陰へ逃げ隠れようとしていた。


「伊村……、焦らないで。心を落ち着かせて集中すれば……あなたなら倒せる。頑張って」


しかし、彼と同じ場所に居るテレフィは何故か伊村を助けに入ろうとはしない。

持っている杖を構えたまま、その場から動かず今の状況を見据えている。

むしろ伊村を応援するだけで、直接助けず魔物を倒せと言ったのだ。


「は、はいぃっ!? テ、テレフィさんっ!? ……喋ってないで早く助けて下さいよぉっ!?」


それを聞いた途端血相を変え彼女へ助力を求める。

嘴を開けて今にも攻撃しそうな後ろの怪物を一瞥し、汗をかいて必死に逃げ回りながら懇願した。


「できない、わたしは今魔法を発動するのに必要なMPを溜めている最中。だからもう少し耐えて……」


しかしテレフィは彼の頼みを申し訳無さそうな顔をしつつ拒否。

曰く、MPを蓄えているからまだ辛抱しろという。


「そ、そんなぁっ!? おれは総合力が"47"なんですよ!? あんなの倒せる訳が無いっ!」


彼女の言葉を耳にして益々伊村は絶望を味わう。


キェオアアアッ!


一方、伊村を追跡するプレイントリマーが今にも追いつく程の近距離まで接近。

突き刺す為に嘴を尖らせ、彼に向けて何回も首を伸ばす。


(ど……どうすればっ!? 助けてくれ誰かっ! おれなんかがあんなモンスターを倒すなんて……っ!)


だが奇跡的、と言うべきかギリギリで伊村はその攻撃を躱すことに成功。

続け様に飛んでくる二回、三回目も不規則に動いた影響で外していく。

こちらへの攻撃は当たっていないが、いつまでも幸運は続かない。

ましてや初めての魔物との戦闘。どういった攻撃が有効かもわからない今、彼には逃走以外に残された道がなかった。


「うわあああああっ! む、無理だっ! 死ぬぅぅーーーっ!?」


そしてとうとう、伊村のほぼゼロ距離にまで魔物が迫り刺し殺そうと嘴を動かした。

もう駄目だ、今度こそ終わりだ……

絶望に染まった顔で叫び声を上げ、もはや自分が刺される瞬間をただ見ているだけしかできなかった。


ドォーーーンッ!


その刹那、いきなり大きな爆音が響き渡る。

音の出所はプレイントリマー。今の今まで伊村を追いかけ、刺殺しようとしていた個体の真上に3メートルはある大きな土塊が降ってきて、そのまま重力によって押し潰された。


グェオアッ!?


あまりにも急にソレが降ってきた為か、殆ど何も抵抗できないまま、短い断末魔を上げた後 土塊の下で静かに絶命したのだった。


突然の出来事につい先程まで追われていた伊村は呆然と固まり、キョロキョロと辺りを向いている。


「待たせてごめん。やっとMPが溜まりきった……」

「テ、テレフィさん!? あ、ありがとうございますぅー!!」


その時右手を天へ掲げた状態のテレフィが現れ待たせた事を詫びた。

これを受けやっと彼は彼女が魔法で窮地を救ってくれたんだと理解し感謝を伝える。


「危なかったぜ! 無事か!!」


そこへ、他二体を討伐したグリードとレオスがようやく現場に到着し二人の安否を確認する。


「グリードさん!? じ……自分は大丈夫ですけど、こ……怖かったぁーーーっ!!」


無事を問われた瞬間、伊村はこれまでの恐怖を思い出し全身を震わせ怯えた様子を見せる。


「伊村………。やっぱまだ魔物を倒すのは無理だったかっ……!」


伊村の震えようを目にしたグリードは嘆いた。

彼にはまだ実戦での戦闘は早すぎた、頭を抱えこれからどうするべきかを思い悩む。

ともあれ依頼自体は無事完了した。

報告をするべく四人は街に戻って行く。


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