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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
冒険者編

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第49話「伊村の初依頼」


時間は流れ……伊村達は依頼を受けるより先に、ギルドの向こう側に建てられた料理屋で食事をしている。



「グリードさん、本当にあなたの仲間にしてもらっちゃって良いんでしょうか?」



眼前に置かれたカレーのような料理を口に運びつつ、伊村はグリードへ話しかけた。

仲間に入れてもらったとは言え多少の申し訳なさを感じているのか、表情と声色は淀み曇っている。


「んあ? 良いって言ってるだろっ? 伊村もクドイぞ〜?」


グリードが肉をカラリと揚げた料理に舌鼓を打ってから、問いかけに返答する。

彼は嫌な顔一つせず、伊村の言葉に頷き逆にしつこいと揶揄った。


「そ、そうですか………、ありがとうございます。……あ、そういえばこの後、ギルドに行くんですよね?」


その返答を聞いて伊村は安堵の息を漏らす。

改めてお礼を言うと、ふとある事を思い出し再び尋ねる。


「お? そうだが……、何か不安でもあるのかっ?」


また投げかけられた彼の質問を肯定するグリード。

食後向かうギルドに関して、懸念事項があるか念の為聞き返す。


「いやあの、おれって、このままの格好で行くんすか……?」


伊村が口にしたのは"装飾"について。

着用中の学生服そのままでギルドへ行き、依頼をこなさなければいけないのかと聞いた。


「ん……? 格好? ああ! "装備"の事か?」


グリードは伊村を見て、彼の話したい事を予想し理解を示す。


「あ、はい! それですっ! 自分、防具も武器もまだ揃えてませんよね!?」


装備、所謂"剣"や"槍"等の武器、"鎧"や"盾"といった防具の事だ。

グリードへこれら装備を身につけてない旨を知らせ、丸腰で依頼をする事態を未然に防ぎにかかる。


「………確かにな。グリード、食い終わったら伊村用の装備を買いに行こうぜ?」


彼の話を隣で聞いていたレオスも理解してくれたのか、食後先に武器屋等に行こうと勧めた。


「ふーむ、言われてみりゃそうだなっ! よし! じゃ、そうするかっ!!」


グリードは装備の事など頭から完全に忘れていたのだろう。今思い出したような顔で手をポンと叩く。

兎も角彼はレオス達の意見に賛同し、この後の目的を定めた。


(ふぅ、言っといて良かった。グリードさんすっかり忘れてたみたいだし……)


その台詞を聞いた伊村は、素の状態で依頼を受ける羽目にならずに済んだ事に、心の底から安堵したという。


そうして食後一行は、伊村の要望通り町北西にある武器と防具が売られる装備屋に足を運ぶ。

そこでグリードが全額負担するという形で装備一式を購入すると、再び来た道を戻りギルドへと向かって行く。



◇ ◇ ◇



「伊村の装備……なかなか似合っているぞ! はっはっはっ!!」



伊村がグリードに買ってもらった装備は、見た目は頑丈だが、装着すると意外に軽い肩パッド付きの青と黒の配色が特徴の軽めの鎧。

さらにこれまた柔軟性が高く手の甲の位置に紫の宝石が埋め込まれた皮の籠手。

最後に黒と白を基調とした革靴だった。


「そうですかねっ? ……へへっ、これカッコイイです!」


冒険者らしく随分と小洒落た装飾だが、無論動かしにくいものはなるべく選ばないようにした様子。

グリードから購入した装備を称賛された伊村はなんとも上機嫌そうな表情だ。


「やれやれ、俺は耐久性が高い鎧にした方が良いと言っんだがな……」


しかしレオスが肩を竦めて呟く。

どうやら彼は購入時に衝撃に強い代物が良いと事前に忠告しており、それなのに見た目を重視した装備を選び購入した為、心底呆れ果てていた。


「伊村……、着てた服に"アンデュランス"の魔法をかけたからって調子に乗りすぎ……」


今度はレオスだけでなく、後ろを歩くテレフィも彼にツッコミを入れる。

実は装備屋に入る前、伊村が当初から着ている高校の制服に"アンデュランス"という服等の耐久力を向上させる効果の魔法を彼女にかけてもらったらしく、その魔法の効果に驕る伊村に冷静にツッコミを入れた。


「? 調子に乗ってないですよおれは? それより便利ですねぇテレフィさん! アンデュランスっていう魔法は、服の耐久度を高める効果があるなんてっ! 驚きましたよ!」


だが伊村は何も自覚していないような素振りで彼女の言葉を否定し、自身へかけられた魔法の利便性を実感していた。


「……はぁ、わたしは伊村が武器を何一つ使えないことに驚いた……」


伊村の話を聞いたテレフィは軽くため息をついた後、嘆くように告げる。

なんと伊村は装備屋にある剣や斧、弓等の武器を試用してみたは良いものの、全く以って上手く扱う事ができなかった。

故に主に剣士系の冒険者が装着する籠手を渋々選んだのだが、それが本当に意外だったと彼に哀れみの目を向けて呟く。


「ちょ!? それは言わんで下さいよっ! おれだってそれ、かなーりショックだったんですからねっ!?」


そんなテレフィの台詞に伊村はこの慌てよう。

酷く気にしているようでその件は口に出さないように求めた。


「まあ、武器が使えないなら"格闘術"で戦うっていう選択肢もあるからな。伊村はそっちの方が向いてるって事だろ」

「そ、そうですかね……? はあ〜。異世界来たんだから剣ぐらい振ってみたかったなぁ……」

「まあ、元気だせ伊村! 自分の装備が手に入ったんだからよっ!! ………さてっ! お前らギルドまでもう少しだぜっ! こんなところでバテんじゃねぇぞっ!!」


一番前から彼の言葉を耳にしていたグリードが彼を励まし場の微妙な空気を緩和させる。

ギルドまであと一息、強い日差しのもと賑わう町を四人は歩いて行く。



◇ ◇ ◇



装備を整えた一行は、当初の目的だった多くの人が出入りするギルドに到着。

依頼の紙が貼り出された大きな掲示板の前まで来ると、早速こなす依頼を選ぶ。

因みに伊村は掲示板へ来る前受付にて冒険者登録を完遂しており、その際に"冒険者パーティ申請"という手続きも受付嬢から細かく説明を受けた後、無事終えていた。


「よし! ……じゃあさっさと皆でこの中から伊村が死なねぇような依頼を探すぞっ!!」


掲示板の前でグリードは、伊村にとって危険ではない……つまりは難易度の低い依頼を探すよう言うと、張られた紙に目を通し始める。


「えっ、縁起でもない事言わないで下さいよっ!? 自分がし……死ぬなんて……嫌ですよぉ!」


だがこの発言を聞いた伊村は不吉すぎると顔を青ざめさせる。

彼としては依頼を受けるのは初めてなので、この反応も仕方ないが。


「へへへっ! 大袈裟だな伊村は! ……おっ! いいやつ見つかったか、レオスっ?」


伊村の反応をグリードが笑う。

すると、先程より手頃な依頼を探していたレオスが手を止め、左下にある依頼の紙を取り確認し始める。


「あぁ一応な、だが推奨ランクは"Eランク"だ。もうこれ以外に低いランク帯の依頼は無いし、面倒くせぇけどこれをやるしかねぇだろうぜ」


グリードの言葉に応じレオスが依頼を見せる。

実質的な難易度の指標である推奨ランク、そこに"Eランク"と記載されていて、他に"E"を下回るものがない以上この依頼をやるしかないと彼は語る。


「そうか、じゃあ仕方ないな! まあEランクだろうがいざとなれば俺が伊村を援護してやるぞっ! よし、そうと決まればいざ出発だっ!」


話を聞いたグリードは件の依頼を引き受ける決定を下す。

伊村を不安にさせないよう気を利かせた言葉を出すと、意気込んで掲示板を後にし依頼を受けに行く。

これが、伊村にとって初の依頼になるのだった。


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