第48話「テレフィの能力」
「し……、正気かグリード!? こいつを仲間にするってのはっ!?」
伊村を自分達のパーティの仲間に迎え入れる。
グリードが下したその判断に二人揃って驚愕。
特にレオスは大きな衝撃を受けたようで、彼の発言に食ってかかる。
「あぁ、だから俺はここまで連れてきたんだ」
二言は無いとグリードは肯定する。
「……グリード、俺は認めねぇぞ。伊村をグリーンズの新しいメンバーにするなんて!」
「……こいつの総合力は "47" しかないんだぞ!? 正直言って弱すぎるっ! だからもし仲間に入れても俺らの足を引っ張るだけだぜ!?」
レオスは眉間に皺を寄せ、全面的に反対の姿勢を見せる。
彼の言う通り伊村のステータスはあり得ない程低い。
そんな人間を仲間にしたところで何のメリットもないと拒絶をした。
「レオス……お前ならそう言うと思ったぜ。だが! お前がどう言おうと、俺は伊村を仲間にしたいんだっ! それに、そうすればこのパーティの"四人目"のメンバーがやっと揃うんだからなっ!!」
この反論が出る事を予期していたのか、グリードが即座に理由を口にする。
伊村が加入する事によって、自分らにとって四人目のパーティメンバーが埋まるのだと主張を行う。
「確かにグリーンズにはまだ四人目のメンバーはいねぇ……けどなっ! だからと言ってこんな奴を仲間に加えるなんておかしいと思うぜ! 後になって俺らを裏切る可能性だってある!」
「………グリード! あんたはこれでも一応パーティの"リーダー"だろ! リーダーなら仲間を危険に晒すような真似はするんじゃねぇよ!!」
しかし弁明を受けてもまだレオスは話を断固拒否する。
伊村は弱い。それ故もし仮に仲間になったとしてもメンバーを辞めてしまう場合も考えられると反論した。
「……ッ! レオス! そういう言い方はないだろっ! それじゃまるで伊村が裏切り者だ! そんな決めつけはよくねぇ!!」
こうした忠告を受けたグリードは少しだけ言葉を詰まらせる。
確かに彼の意見も理解できるのだろう、とは言え伊村への猜疑心の込もった異論を言い過ぎだと咎めた。
(や、やばい! 二人とも言い争ってる!? ……止めに入った方が良いのかっ!? いやでも……)
(だっ、駄目だ………勇気が出せない! 二人を止めるなんて……! くそっ! おれは裏切ったりなんか………そんな愚かな行動はしないのに、なんでっ……!!)
全く決着がつかないレオスとグリードの大論争。
当事者である伊村は冷や汗を流し、仲裁に入るか思い悩む。
だが自分よりも総合力が高いであろう二人の気迫に怖気付いてしまい、結局は現状を変えられない自分と未だ信用されていない事実への悔しさで顔を歪ませる以外に、できることは何も無かった。
「……………」
その時、先程から外の景色をじっと見ていたテレフィが二人が口論を繰り広げている方にゆっくりと顔を向ける。
彼女は若干だが眉を顰め、彼らの様子を眺め始めた。
(………ん? あれは確か、テレフィさん? な、なんかいつの間にかあの二人の方を向いてるけど……)
(………って、そんな事より! 早くこの状況をどうにかしないと……!!)
彼女に気付き振り向く伊村。
少し前に教えられた名前を思い返しそれを不思議に感じるも、今はそれどころじゃない、と気持ちを切り替えた。
「信じている……!? グリード! それはあんたの理想論だ!! …俺より強いはずのあんたが、"根拠の無い自信"っていう欠点があるせいで、仲間を危険に巻き込んでると他のやつらからそう言われてるだろうが!」
グリードの続ける釈明を全く信憑性が無いとレオスが批判する。
ただ彼には自分よりも強いと評した事から、実力自体は本物なのだろう。
「うっ! 根拠の無い自信か……。だがレオス、それでも俺はっ! お前に何て言われようとも伊村を信じるぞっ!!」
「……ほら、伊村のあの目を見てみろっ! あいつの瞳が! これから俺たちを裏切るような悪い奴の瞳に見えるかっ!?」
厳しい意見に思わず多少口篭るグリード。
と思えば再び持ち直し、先程と同じ感じに弁明を始める。
その中で伊村に彼の視線を誘導させ、目の色等を見て善悪を判断し賛同してくれるよう試みた。
「………。わからねぇな? そもそも伊村の目を見ても何を考えているか分からないんじゃ意味がないだろ? ……どうせあいつを仲間にしてもそのうち裏切らr、」
「………いや、レオス。そんな事はない」
しかしそれは効果がなかった。
レオスはため息を吐くと、瞳だけで人間性など推し量れないと一言。
そのまま伊村では裏切る……と言おうとした時だった。
二人の言い合いの様子を傍観していたテレフィが不意に口を挟んできた。
「テ、テレフィ……、何だ一体?」
「テレフィ? ……どうかしたのかっ?」
自分たちの話に割り込む形で介入され、両者が困惑を示す。
「二人とも話が長い。心眼で見てみたけど、……伊村って人は裏切るつもりなんてないから安心して」
用を問われると彼女は淡々と、冷静な雰囲気を纏い話をする。
言うには自身の持つ能力で伊村の内面を見透かしたらしい。
「えっ!? し……"心眼"っ!? ま、まさかその能力でおれの心を読んだんですか!?」
思わぬ助け舟を出された伊村だったが、彼がまず驚いたのはテレフィが持つという"能力"。
それで自分の心の中を読むことができるのかと気が動転する。
「そう。………嘘だと思うなら、何か想像してみて」
その言葉に頷くと、テレフィは何でも良いので思い描くように催促。
「い、いきなりそんな事言われても…………あっ」
伊村が困惑した表情で呟く。
確かに読心などハッキリ言って信じ難いのだが、言われた通りにしなければ何と言われるか……。
しかも彼女の言うように何かを考えた方が簡単かもしれない。
そんな時、グギュルルル!と低い音が鳴る。
視線を下に落とすとその場所は腹部。ちょうど伊村は空腹であった。
他の三人を見る限り音は聞こえていない。
その事に少しホッとする伊村。
(……そ、そういえばおれ、今朝から何も食べてないんだっけか。はぁ、腹減ったぁ……)
しかし自分一人が空腹な事が堪えたようで、恥ずかしく思いながら腹を押さえ、心の中で口寂しさを覚える。
「朝から空腹だから早く食事したい、……って考えた?」
すると、テレフィが彼に話しかけてきた。
なんと彼女は寸分違わず伊村が考えた内容を言い当てたのだ。
「んなっ!? す………すごいっ! おれが思った事を言い当てられた!?」
自らの思考を見事に当てられた伊村は衝撃を受け、先程言っていた能力は本物だと実感してから彼女を称賛する。
「………。レオス……これで彼が信用に足りる人だって証明できた。………異論は?」
一瞬だけ両目を細めると、彼女は再び顔をグリード達の方へ向けた。
用事は済んだと言わんばかりに視線をレオスへ向けて問いかける。
「………ふっ! はっはっは! 無いな。お前が"心眼"で見たお陰で、伊村がどんな奴なのか知る事ができた………」
「……グリード! あんたの言う通り、こいつは信用できる人間だぜ。俺はもう文句は言わねぇ」
レオスはテレフィの言葉を前に大笑い。
そして、彼は反論を止めると口にして伊村の仲間入りに賛同をした。
「おおっ! レオス! 伊村を俺の仲間にするのを認めてくれるんだなっ!? ………よーし! そうと決まれば早速、依頼を受けに行くぞぉーっ!」
バタンッ!!
やっと仲間の一人であるレオスの納得を貰ったグリード。
こうしちゃいられない、といった様子でギルドに行くと言って彼は勢い良く部屋を出て行く。
他の三人を置き去りにしたまま。
「えぇ!? ちょっ、グリードさん!? いきなりですかっ!? ……って、その前に食事を済ませていきましょうよーーっ!?」
結局部屋から出ることになった伊村は、レオスとテレフィの後に続き、突っ走って行くリーダーの後をついて行く羽目になったのだった。




