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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
冒険者編

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第40話「魔人vs熱血漢」


「…………。遅いねえ、いくら空腹だからってここまで来るだけでそんなにキツイの?」


冒険者訓練広場の中央にある四角の枠。

その向かい側へ重い足取りでやって来た東洋に対し、エイツは愚痴を吐く。


「そッ……そんな事言うな、よッ! 俺だって………こ、これでも頑張って、ッんぐおぁぁぁッ!?」


空腹を訴える腹部を必死に押さえながら、彼はエイツに文句を言った。

だが、そんな時でも腹の音は容赦なく鳴る。


「はあ、しかたないなぁ。………は!  "アンダーネス" !」


とてもこれから戦えそうもない状態の東洋。

それを見てエイツは軽くため息をつく。

すると、その直後どういう訳か一瞬のうちに東洋の近くまで移動し、彼の目の前で腕を構え何か魔法のような言葉を唱えた。


ポォォォンッ!!


「うおッ!? いつの間に!? ………あ、あれ、何だッ!? 急に身体が軽くなったぞ!? それに……、く、空腹感も治まったッ!?」


東洋が驚くリアクションを取る前に、エイツの手の先から不思議な音がこだまする。

かと思えば、東洋の身体全体が黄色いオーラに覆われ、完全に包み込まれたかと思うと、これまで彼を困らせていた空腹感がなんと一瞬で鎮まったのだ。


「お、おい! エイツ! もしやお前の魔法か!? ……す、凄いなッ! 一体どんな力を使ったんだッ!?」


急に空腹状態が治った東洋は、興奮気味に先程の魔法のような不思議な力を使用したエイツへ称賛と共に問いを投げた。


「………、キミに魔法をかけたんだ。"アンダーネス" っていう"無属性魔法"だよ」

「これをお腹が空いてる状態の使用者や動物とかに対して使えば、スキルの有無関係なしに数分の間だけ"満腹"だと自分の身体が勘違い(・・・)を起こし、普通のときと同じように動けるようになるんだよ」


どういった魔法を用いたのか、東洋に問われたエイツは再び距離を取った後、魔法名を伝えた。

その名前は"アンダーネス"、無属性魔法の一種らしい。

これの効果についても、エイツは彼に分かるよう詳細に説明する。


「……え、そうだったのか!? そんなすげぇ魔法を俺にかけたというのかッ!? あと、"技能殺し(スキルイーター)"も発動しなかったのはその為か!?」


自身にかけられた無属性魔法の名前、そしてその効果を説明された東洋は、本当にそんな魔法を自分にかけたのかと目を見開き驚いている。

実際驚くのも無理はない。この魔法は恐らく自動発動可能な東洋のスキル"技能殺し(スキルイーター)"を発動させないまま彼の内部に浸透、その有益な効果を発揮したのだから。


「だからそう言ってるじゃん、しつこいなぁ……」


アンダーネス、これを自分にかけたのか聞かれると、エイツは不満そうにその質問を肯定する。


「やはりそうかッ! 勘違いを起こして"空腹感"が無くなるんだよなッ!?」

「………なら、それが数分間だけ続くという事は! 今のうちにお前と戦えば良いという事だなッ!?」


アンダーネスの効果を理解した東洋は、つまるところ魔法の効果が続く数分の間に模擬戦を行えば良い話だろうとやる気に満ちた顔で口にした。


「うん、そうさ。 ……理解したんなら、そろそろ始めようかっ!!」


エイツはその考えに同調した後、瞬く間に元の位置に戻り模擬戦を早急に開始するよう求め臨戦態勢を取る。


「おう! ……もうこれ以上話してたら時間の無駄だからなッ! アンダーネスの効果が切れる前に終わらせてやるッ!!」


あちらの一言を耳にした東洋も、自身にかけられたアンダーネスの効果が切れるより先に模擬戦の決着をつける事を宣言、先手を取って勢いよくエイツに向かい特攻して行った。



◇ ◇ ◇



ガッガッ! ドォンッ!!



「おおぉ! なかなかやるねぇ、予想以上の強さだよキミは!」



模擬戦が始まってから1分は経っただろうか。

エイツは東洋の長斬刀による攻撃を捌きつつ、彼に対して笑みを浮かべながらその平均以上の戦闘力を称える。


「はぁッ……はぁッ……! そ、そうかッ! ……そう言うお前は! どんだけ強いんだッ!」

バキィン!!


東洋はその言葉を聞いた後、彼の素手での攻撃を防ぎ息を切らしながら自分もあちら側の強さがどれ程か気になった為話を聞きに入った。


「フッ……、まだまだだよ、これでもまだフルパワーの何百分の一(・・・・・)しか力を出してないんだ……」


するとエイツは、自身の総合力について多少声のトーンを落としつつ言及する。

自分の本気は、……こんなものじゃないと。


「こ、これで何百分の一だとォッ!? ……お、おい、それも本当なのかッ!?」


本来の実力の数百分の一程度の力しか出しては居ない、耳を疑うエイツの台詞を聞いた東洋は驚愕、慌てて彼へ伺う。


「うん本当。何なら今ここで見せてやろうか? ボクの"本気"を……」


エイツは先程口にした話を認めると、相当な自信を顔に貼り付けながらこの場で隠していた全力を披露しようかと挑発した。


「ま、マジか!?  嘘だろうッ!? ……大体俺と同じくらいの強さかと思っていたのにッ!?」


東洋は信じられないといった顔となり、当初想定していたエイツの戦闘能力とは比較出来ない程の差がある事をまざまざと思い知る。

もし絶望的に彼の方が強いと知っていたなら、最初からこの勝負に乗ってはいなかった。


「……い、いややめてくれ、勝てんッ! あんたには! ………エイツッ! この勝負、止めにしよう! 俺の負けだッ!!」


そうだと分かれば東洋の行動は早かった。

すぐ刀を引っ込め、模擬戦を直ぐに終了するよう彼に申し出たのだ。


「えー? もう良いのかな? ………じゃあ、ボクが魔人だというのは信じてくれたかい?」


エイツは彼の言葉を受け、模擬戦を行ったそもそもの理由である自分が魔人だという事を信用してくれるのかを東洋へ確認する。


「あ、あぁッ! 信じるぜッ! お前は凄い魔法が使えるし、そして何よりめちゃくちゃ強いようだしなッ!!」

「それじゃ! また会おうぜ、エイツッ!」


アンダーネスを初め、これまで多くの人間とは思えない力を披露してきたエイツの問い。

流石に彼が魔人だというのは疑いようもないと認めると、東洋は急いで食堂へ駆け出して行った。


「……………」


エイツは訓練広場から猛スピードで離れていく東洋の後ろ姿を、ただただ神妙な面持ちで見ている。


「……試した意味が無かったな」


するとしばらくしてエイツは短く呟き、ゆっくりとした足取りで広場を後にしていくのだった。


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