第38話「冒険者パーティ」
東洋がミセアと出会ったその頃、ギルド出入り口前で数人の男たちが騒ぎ立てている。
「えー、ちょいとキミたち……。そこどいてくれるかな? 邪魔なんだけど?」
男たちは誰かを取り囲んでいるようだ。
囲まれている人物は体格が小さく、外からでは詳細は見えてこない。
しかしそれらしき透き通った声が聞こえてくる。
どうやら彼は道を空けるよう求めている。
「いや駄目だなぁ〜? お前ここがどういう場所かわかってねぇだろぉ? ヒック……」
だが男たちのうち一人がこの要求を拒否。
どうやら酒に酔っているようで、顔が赤くなっている。
「この冒険者ギルドはぁ〜、俺たち大人が仕事をする場所だぁ、ヒック……てめぇのようなガキが来るにはまだ早いって事だぜぇ?」
彼が話した後、その隣に居るもう一方の男も同様に酔いながら冒険者についてべらべらと喋る。
「まあ、そういうことだからとっとと帰んな。君のような子供が冒険者になったとしても、禄に稼ぐ事ができんだろうし………」
二人の斜め後ろにいる男性は、前に話した男二人とは異なり酒に酔ってはいない。
だがそれと引き換えに冷酷な目つきでこちらを見下ろしながら告げると、手で追い払うかの様な仕草を取った。
「はあ……面倒くさいな……。見たところ、キミたちの総合力は "250" から "350" ぐらいしか無いじゃないか……。どんだけイキってんのさ?」
「ま、悪いことは言わない、………今すぐにボクに道を譲るんだ。でないと……」
彼らからギルドより出て行くように促されると、煩わしそうに絡まれている人物は軽く溜息をつく。
その時何故か男たちの総合力の数値を予測かどうかは分からないが言い当てると、早急に道を空けるよう三人の男たちに対し忠告をする。
「総合力が低いだあ? ………くくくっ! ははははっ!」
「どうやらお前はこのオレ様をみくびりすぎてるみてぇだなァ〜? 大人の力ってヤツを思い知らせてやっても良いんだぜェ〜ッ?」
しかしそんな台詞を言い終わる前に、三人のうち一人が彼の言葉に逆上し睨み付け威張り散らす。
「最後まで喋らせてくれよ全く……」
自分の言葉を遮られたことに少しばかり不機嫌になりながらも、平静を装って言葉をぼやく。
「お、お待ち下さいっ! ギルド内に於ける冒険者同士の喧嘩や揉め事は他の方のご迷惑になりますので、ど……どうかご遠慮下さい!!」
すると同タイミングでギルド職員の女性が男たちの間に割って入ってきて、その場にいる者たちに頼んだ。
どうやら彼女は男たちと謎の人物の騒ぎを聞きつけ、全員の暴走を止める為に来たらしい。
「おいおい、俺たちにどっか行けって言うのかァ〜? ギルド職員さんよぉ〜? ヒィーック……」
だが彼らの中の一人が彼女へ顔を近付けて凄み、まるで聞く耳を持たなかった。
「い、いえ……そ、そんなつもりでは……」
男の言葉にギルド職員は多少怖気付きつつ、それでも否定をする。
「あーあ、さっきボクは言っていたのに……。キミたちもう知らないぞー?」
そんなギルド職員を謎の人物は一瞥してから男らに呆れたような表情で呟き、彼らへ忠告するのをやめた。
「はははははッ! 口の聞き方がなってねぇガキだぜェッ! ……さっさとこのギルドから帰らねぇお前が悪いんだよォ〜!」
「……もう知らないったァ〜こっちのセリフだぜェーーッ!!」
ダダダッ!!
この台詞を聞いて、先程威勢を張っていた男が持論を展開した直後拳を振りかぶり、多少千鳥足になりながら実力を思い知らせようと向かって行った。
「ちっ、結局こうなるのかよ。酔っちまったあの野郎を止めるなんて俺にはできねぇ。………終わったなあいつ」
この物騒な状況を遠巻きで傍観していた三人の男の中の一人が諦め気味でそう呟き、その場を後にしようとした。
が、その時……。
「やれやれ、面倒だけどやるしか無いか………、"スリープ"」
小さく魔法の名前らしきワードを一回呟き、一瞬だけだが眉間に皺を寄せた。
「へははは……はっ? なん……だッ? き、急に眠くなっ……て、き………たぞぉ………」
バタンッ!!
するとその途端、先程まで襲い掛かろうとした男が打って変わって途切れ途切れな声を出したと思えば、力なく前のめりに倒れ伏せる。
「んッ!? は、あのガキ一体……何しやがったんだっ!?」
それを目にした片割れの男は驚愕、思わず声を上げた。
「な、何かの魔法を使ったのか!? だ、だが何もしていないようにしか……」
そして事の顛末を遠巻きで見ていたもう一人も、その人物が起こした謎の現象を推測し始める。
「………、いや本当、鬱陶しいねキミたち……。ボクはもう行くよ。もしまた邪魔しようとすればどうなるか、コイツを見ればわかるよねぇ?」
すると、男を気絶させた人物が煩わしげな表情で倒れた男を一蹴し周囲へ最後の警告をする。
依然動揺する周囲の者たちを他所に一人、静寂と化したギルド内を彼は歩いて行った。
◇ ◇ ◇
同時刻、ギルド奥の食堂では東洋とミセアの二人が談話を交わしている。
「いやぁ、魔法使いというのは凄いんだなッ!! 俺なんか使った事すらないぞッ! はっはっはっ!」
東洋が魔法について称賛すると、腕を組んで大笑い。
「属性魔法の適性なんて普通は一つから最大で三つまでらしいけど、あなたの場合はその適性すら無さそうね……」
魔法関連の話題をしているのか、ミセアは東洋の魔法の適性について予想し呆れ気味にこう告げた。
「はははっ、確かにそうかもしれんなッ!」
彼女の言葉に東洋はまたもや笑みを浮かべ返事を口にする。
「………ところであなた、冒険者よね? この食堂に食事しに来てるぐらいだし……」
すると、不意にミセアは東洋に尋ね、唐突に魔法関連の話から話題を変える。
「え、あ……あぁッ! 冒険者だぞ? だが何故今それを聞くんだッ?」
急にミセアからこのように聞かれて、少し面食らいながらも東洋は問いに頷き理由を聞き返す。
「いやね、さっきあなたは勝手に席に座ったお詫びとして数十万もの価格はする魔法玉をわたしに譲ってくれたじゃない?」
黒魔法玉を東洋から受け取った事を思い返し、ミセアは口にする。
「お、おう、まあな………」
その言葉の真意が汲み取れない東洋。
とりあえず彼は曖昧な返事をした。
「こんな貴重な魔法玉を貰ったんだから、わたしも何かお礼がしたくて……。そこで提案! わたしと冒険者パーティを組む気はないかしら?」
東洋に冒険者かどうかを聞いた理由……それを彼女は明かす。
そして冒険者パーティという冒険者同士のチームを結成しないか、と彼へ持ちかけてきた。
「お、おい? 冒険者パーティだと!? いやいや、お礼なんて別に良いんだぞッ!? 元はと言えば俺が悪かったんだしよ……」
急な冒険者パーティ結成の打診……これには東洋も驚愕。
元は勝手に彼女の前の席に座った自分が悪い。
彼は首を横に振りミセアの提案を遠慮する。
「いいえ、それじゃわたしの気が済まない。………というかわたしと組んだ方が、依頼をこなす時に何かと便利よ?」
しかし彼の言葉に対し、ミセアは尚も自身の提案を勧めた。
「そ、そうか………、うーーーん…………。よしッ! 良いぞ、ミセア! 食べ終わったら冒険者パーティを組みに行こうッ!!」
彼女の催促を聞いて東洋が悩む素振りを見せ、少しの空白が流れる。
間を開けて、彼はついにミセアとパーティを組んだ方が良いと決意する。
彼女の提言に乗り、冒険者パーティを結成する事を決めたのだった。




