第2話「召喚魔法とは」
(た、確か俺はッ、学校から帰る途中で……ぐーーぬ………)
左側の前髪が濃い黒色になっている黒髪で眉毛が太く、真っ黒な学生服を着込んでいる青年。
見るからに高校生っぽい服を着た彼は、この場所に召喚される前の記憶を整理して思い出そうとしている。
(……!! そうだッ、あの時俺は………横断歩道を走って渡ろうとした瞬間、石で躓いたッ!! んでその後なぜか目の前が真っ白になってしまったッ!! そして気が付いたらここに居たんだッ!!)
しばらくした後彼は漸く以前の記憶を取り戻し、心の中で叫んだのだった。
* * *
(……んん? 何だココ? てか何でオレは無事なんだ?)
その頃、学生服の青年の左手前で横たわっていたもう一人の背が高くやや褐色肌の青年が意識を取り戻しゆっくりと立ち上がった。
「……………? おい、お前!! ココは何処だ? 知ってるんなら教えろ」
彼はじっくりと辺りを見渡した後、自分の後方にいる黒髪太眉毛の青年に今現在知りたいことを多少乱暴な言葉遣いで尋ねる。
「おッ! 俺以外にもこのよく分からん場所に来たやつが居たのかッ!! 驚いたぞッ!!」
しかし、太眉毛の青年は自分の目の前にいる青年の話をスルーして他にも召喚された者がいた事に意外そうな様子で言った。
「……おい? 聞いてるのか? オレの話を?」
場所を聞こうとしている青年は、自身の質問をまるで聞いていない様子を見せる目の前の青年に少し苛立ち始める。
「え……、あぁ! そうかッ!! すまんな、俺も此処がどこだかよく分からないんだッ!!」
ようやく場所を尋ねられていることに気がついた青年はハッとした顔になり、少し慌てながら返答した。
(………こいつに聞いてもダメか、だったらもう一人、……この妙な古代遺跡の外側からオレらを監視してやがる人間に、聞いてみるしかねぇみてぇだな………)
背の高い青年がそう決めるとゆっくりと自身の真後ろへと向き直り、視線を真正面に向ける。
「……! 誰だッ!? 誰か居るのかッ!?」
背の高い青年が急に背を向けたことに驚き、バッと身構える学生服の青年。
「そこにいるんだろ? ……早くでてこいよ」
青年は言うと、自分から向かって右手前にある巨大な石柱に視線を移す。
すると、石柱の影からローブを羽織った魔術師のような格好をした人物が現れた。
「……!! おいッ誰だお前はッ!! 敵かァ!?」
いかにも怪しそうな格好をした人物が姿を見せた為か、警戒心を強める学生服の青年。
「おお!! これは失礼!! まさか勇者様方に誤解を招くような行動をとってしまっていたとは……!」
彼は嘆くと足早に召喚された三人の元へ近寄る。
「……んん? "勇者"? 一体何の事だ?」
背が高い青年はローブの人物が言った言葉に反応し、疑問を投げかける。
「あなた方はこの私が、現在地・"フィブル遺跡"で行った勇者召喚魔法によってこのアルメシアに召喚されました」
ローブの人物は淡々と事の経緯を話した。
「お、おいッ、召喚とかアルメシアとかさっきからよく分からん言葉ばかり喋ってないかァッ!? 俺たちにもよーく分かるように説明するんだッ!!」
しかし学生服の青年がこの言葉が難解だと苦言を呈する。
「そうですね……、まず、召喚とはーー」
◇ ◇ ◇
その後、ローブの人物によって召喚魔法がどんなものなのかが事細かく話された。
背の高い青年とその隣の学生服の青年も、なんとかその説明を理解した様子。
「……なるほど、つまり召喚魔法ってのは、MPっていうこのアルメシアとかいう世界にあるエネルギーを消費して地面に模様を描くことで、オレらみたいな人間をこっちに呼び出せるってことだよな?」
背の高い青年が長々と話した召喚魔法の概要をまとめ、納得のいったように聞き返す。
「はい、そうです。……模様というのは、正式には"魔法陣"と言いますがね」
ローブの人物がそれを肯定しつつ、二人へ本来の名称を教えた。