第22話「冒険者について」
「……そういえば、冒険者って具体的にはどんな事をするんだ?」
北本が転移者であると周囲の冒険者たちにバレるというハプニングが収まってからしばらくして……。
ふと北本はギルド職員に、冒険者とは一体何の仕事をするのかを尋ねる。
「え? も、もしかしてあなた、冒険者がなんなのか知らずに登録されるおつもりだったんですか……?」
北本に冒険者のことについて聞かれたギルド職員は、その台詞に驚き思わず彼に聞いた。
「ああ、このギルドに来る前に……"冒険者"って名前と、"依頼"とかいうのをこなして金稼ぎをするっていうのは聞いたことがあるぞ?」
冒険者を何も知らずに登録しに来たか問われた北本は、自分が冒険者ギルドにやって来る前の事を思い出しつつ言った。
「そう、ですか……まあ、大体はその通りですね。要は一種の仕事のようなものですよ」
「……冒険者になられた方は依頼という、冒険者協会からアルメシア全土の冒険者ギルドに送られて来る頼み事をこなしていただく事で冒険者ランクを上げたり、また、依頼を完遂した際にはその報酬として、お金やアイテム、武器・防具等を受け取ることができるのです!」
「依頼にはモンスターを倒す"討伐依頼"や、草や花、水といったものを採集する"調達依頼"、王族の方や貴族の方を目的地まで移動する際に警護する"護衛依頼"、ダンジョンや洞窟、モンスターの巣穴などを調査する"探索依頼"、そして遭難者、行方不明者を探して依頼者の元まで送り届ける"救助依頼"の5つがありますよ!」
「……特に"護衛依頼"は国際的に重要な要人も警護をするので、冒険者ランクが"C"以上でなければ請けることができません。なのでご注意を!!」
北本の話を聞いたギルド職員は彼の言葉を肯定しつつ、冒険者としての仕事と受ける依頼の種類、そしてその依頼の報酬について詳しく北本に説明した。
「へぇー、もらえるのは金だけじゃ無いんだな。初めて知ったぜ、……で、他には何があるんだ?」
依頼と報酬の事について聞いた北本は、続けざまにその他のことについても彼女に説明を求めた。
「そうですねぇ……、あっ、そうそう! 冒険者の依頼は基本的にこのカウンターから反対側にあるボードに張り出されていますので、自分が請けたい依頼が決まりましたら私たちギルド職員まで依頼の紙を剥がしてこちらへ持ってきて下さい!」
「それと……、依頼を終えた際は隣のカウンターに居るギルド職員にこちらの冒険者カードを見せて下されば、その依頼の報酬を受け取れますのでよろしくお願いしますね!!」
ギルド職員は北本の後ろの方の壁に掲げられている木製の大きなボードを指して彼に言った後、受付の机の下に手を入れるとそこにある引き出しから銀色の金属板を取り出して、北本に見せつつ報酬について詳しく説明をした。
「なるほど……、依頼を受ける時と依頼を終えて報酬とかを受け取る時はそれぞれ別のカウンターに行く必要があるんだな?」
ここまでの説明を理解した北本は、彼女に聞いて確認をする。
「その通りです!! ……あっ! 補足になりますが隣のカウンターでは報酬を受け取ること以外にも"冒険者ランク"の昇格や、モンスターやダンジョンから手に入れたアイテム等を換金する事ができます!」
思い出したかのようにギルド職員が言うと隣のカウンターの方を向いて北本に説明した。
「あぁそう……、ん? "冒険者ランク"?」
話を聞いていた北本はふと、彼女が言った冒険者ランクという言葉に疑問を呈する。
するとそんな様子を見てギルド職員は彼が冒険者ランクについて質問をする前に即座に説明をし始めた。
「冒険者ランクというのは、冒険者としての実力や実績を示す冒険者ギルドが定める等級のことです!」
「冒険者ランクは依頼を一定数請け、それを見事完遂したときや、迎撃戦で大きな戦果を上げたりするとランクの段階を上げることができます!! 冒険者ランクが上がれば報酬金が増えたり、より難度の高い依頼も請けられるようになりますよ!!」
両手で冒険者カードを持ち、北本に見せながら冒険者ランクについて説明した。
「そうか……、ところで冒険者ランクってのはどのくらい段階があるんだ?」
北本は冒険者ランクの等級はいくつ段階があるのか気になり尋ねる。
「冒険者ランクは全部で8段階あり、一番低いのが"Gランク"で、そこから順に"Fランク"・"Eランク"・"Dランク"・"Cランク"・"Bランク"・"Aランク"で高くなっていきます!」
ギルド職員は指でランクの数を数えながら北本に冒険者ランクの等級について説明をする。
「一番低いのが"G"、そしてそれから"A"か……。っておい、あと一つが無いぞ?」
北本は冒険者ランクの等級にあと一つが抜けていることを指摘するが、言われなくても分かっていたのか彼女は表情を変えず、少し間を置いて話し始めた。
「い、いや……分かっていますが……。あのランクは先程ご説明した7つのランクの中で最も高く、そして尚且つ実力においてもまさに別格です。なので果たしてあの中に含めても良いものなのかと迷ってしまいまして……」
「……最も高い? 益々気になるな……、勿体ぶらねぇで早いとこ教えてくれ」
最後の一つの冒険者ランクを話すことをやけに迷うギルド職員。
そんな様子を不思議に思いつつ北本は彼女に早く教えるように急かす。
「わ、わかりました。……現在の冒険者協会が定める冒険者ランクの中でも最高ランク……。"Aランク冒険者"よりも更に上……」
「現状、このアルメシアにたったの"9人"しかいないとされる、まさに才能ある方のみが到達できる、それがーーー」
「"Sランク冒険者"………、です!!」
どこか誇らしげな顔で、北本へ8段階ある冒険者ランクの最も上の段階となる"Sランク冒険者"というランクを解説した。
「ほう、"Sランク"か……、"9人"しかいないのか。それが冒険者の中の最高峰という訳だ」
Sランクの話に少しばかり関心を見せつつ北本は言う。
「ええ、そうですね! …………その他に聞きたいことはありますか?」
他に何か質問は無いか北本に聞くギルド職員。
「………、まあ特に無いな今のところは……」
北本は返事をして銀色をした冒険者カードを彼女から貰った。
「……そうですか、では最後に! 言い忘れていましたが"迎撃戦"や"戦争"、"内戦"等が起こった場合には、この冒険者ギルド側から強制召集を致す事もありますのでご承知くださいね!」
念押しするかの如く顔を少し近付け、北本に注意喚起の意味を込めそう言った。
「? ……あぁ、規模がデカくて冒険者の仕事にも影響が起きそうな戦いが発生した時は冒険者でも戦闘に参加しろよ、って事か……」
「はい! そうです!! 冒険者というのはなかなか大変でしょう!?」
「………失礼ですがあなたにお伺い致します! あなたはこれから冒険者として、様々な依頼を請け、危険なモンスターと戦う覚悟はありますでしょうか!?」
ギルド職員が少し顔を近付けてきた事に多少引きながらも話を理解した旨を伝えると、彼女は彼の言葉を肯定してこれから冒険者になる覚悟はあるのか聞いてきた。
「あぁ……、できればモンスターと戦うってのはやりたくはねぇんだが……。そんな甘い事言ってると冒険者になってもすぐくたばっちまうしな」
真剣な顔つきでギルド職員に自分の意思を伝えると北本は彼女から貰った冒険者カードに目を通した。
「……最後にもう一つだけ、あなたの情報を記したその冒険者カードには"Eランク冒険者"と書かれていますが断じて間違いではありませんので、ご安心を!!」
微笑みながら北本が見ている冒険者カードについて説明を付け足す。
「………は? どういうことだ? 何でいきなり二段階上の"Eランク冒険者"になってんだ? 最低ランクは、確か"G"のハズだろ?」
それを聞いた北本は首を傾げる。
どうしてGランクではなくEランク冒険者表記になっているのか全く分からないとギルド職員に問いかけた。
すると彼女は何やら憧憬の眼差しを北本に向けながら訳を話した。
「いえ、既にもうご承知の通りあなたの総合力はLv1にして"1,000"以上もあります。大半の冒険者の方は総合力が最低"100"程度〜最大でも"500"前後までがやっとなので、あなたの"1,264"という総合力はまさに破格の強さとなる訳です」
「……冒険者ランクは個人の強さにも準ずるので、本来なら冒険者は"Gランク"から始まるのですが、あなたの場合だと"Eランク"相当の強さと言っても過言ではありません」
「……もしそれ以下のランクにすると、受領された依頼をとても簡単にこなされてしまう可能性が高いので……、特例で最初から"Eランク"でも良いことにしました!!」
北本の冒険者ランクが最初からEランクになっている理由を細かく説明する。
彼本人がとうに一定以上の実力がある為、見合った依頼を達成できるよう特別にランクを上げた状態でのスタートとなったのだと彼女は事情を明かす。
「……へぇー、そう、か……。いや、オレ天才だーの何だので目立ったりすんのは嫌だし、別にGランクからでも良かったんだがなぁ。………まあランクが高ければ高いほど依頼の報酬金も増えるから……これでいい、か」
北本は冒険者ランクがEランクよりもGランクの方がよかったとあれこれ考えたが、報酬金が増額されるというギルド職員の言葉を思い出すとEランクからスタートしても特に自分に対するデメリットは無いと結論を出した。
「納得されましたか? これでもう冒険者登録は完了です! もしすぐに依頼をこなしてお金を稼ぎたいのなら後ろにあるボードから請けたい依頼を選びましょう!!」
このように言うとギルド職員は奥の扉を開けてその場から姿を消してしまった。
(……ふぅー、これでオレも冒険者か、上手くやれるか不安だがやるだけやってみるか……)
北本は考えた後、受付カウンターを後にして依頼が張り出された大きな掲示板と思しきボードのある場所に向かうことにした。




