第19話「ブルーダの孫」
「あー、疲れた……。やっと休める………」
北本はブルーダと会話してから通路の一番奥にある部屋の扉を開けて中に入り、疲労感からか深い溜息をつき全身の力が抜けたかのように部屋にある椅子にゆっくりと座りこむ。
(……、何か……すげぇ濃い一日だったな……。てか眠すぎて食欲も湧かなねぇよ………)
自身の下腹部に手を置きながら北本は思った。
(オレは一体なんでこんな世界に来させられたんだ……? いつになったら日本に帰れるんだ?)
彼は天から自分たちの様子を見下ろしているであろうアルメシアの創造神・アデンにまた会ったら色々と質問してみたいと考える。
(そういや、アデンが言っていた"秩序の欠片"って何処にあんのかな………)
アデンの事を考えていた北本はふと、彼が秩序の欠片を探して集めることを自分たちに頼んでいたのを思い出し"ソレ"がアルメシアの何処にあるのかを考え始めた。
(………、秩序の欠片は、この世界の平和や均衡を保つ……と言っていたが……。もしかしたら神とかと関わりの深い場所にあるのかもしれねぇな……)
北本は秩序の欠片がありそうな場所の推測をすると大きな欠伸をして椅子から立ち上がり、部屋にある純白のベッドに寝転がった。
(まあ、そんなこと考えてても余計疲れるだけか。こりゃまだ当分は元の世界には帰れそうもねぇな………)
やや苦笑いを浮かべて考え終わった北本はすぐ眠気に襲われゆっくりと瞼を閉じていく。
(あーあ、これが夢だったら良いのによぉ……)
北本はそんな儚き願いを心に抱きながら眠りに落ちた。
◇ ◇ ◇
翌日……。
「ん………、朝か。目覚め悪ィなぁ……」
目を覚ました北本がベッドから起きると、窓から差す光が彼の身体を照らし朝になったという事を実感させた。
「チッ、夢だったらなと思ったオレの理想を踏みにじりやがって……。あー、面倒くせぇ………」
彼は独り言を呟くと大きく背伸びをした後、部屋の扉を開けて出て行った。
◇ ◇ ◇
(……この宿屋には地下に食堂があるんだったな確か。昨日の夜にブルーダが言っていたし………)
北本は自分の部屋から出た後、廊下を一人で歩きながら昨日のブルーダとの会話の一部を思い出しそれを整理しつつ食堂に向かうことにした。
(ん……? あれは……ブルーダじゃないな? 誰だアイツは……?)
長い廊下を自分のペースで歩いていく北本が遠くから見える受付カウンターに視線を移すと、そこにブルーダではない人物がいる事に気付く。
(まあどうでも良いか、とにかく食堂へ向かおう………)
北本は決意すると受付カウンターの人物の事はスルーしてそのまま食堂へ行く事にした。が……。
「おはようございます! 気持ちの良い朝ですねぇ!!」
やや早足で廊下を抜け食堂に続く階段を降りようとしたその直後、北本は先程自身が目撃した受付カウンターの人物に大きな声で話しかけられてしまった。
「………。あぁそうだな……、というより誰なんだよお前。………ブルーダは居ないのか?」
煩わしそうな目でその人物を見ながら宿屋・白霧の店主であるブルーダは今どこに居るのか尋ねた。
「あ、自分、"マリバ" と言います!! "祖父"は現在、出かけておりまだ帰っていません! なので私が代わりに受付をやらせてもらっていますっ!」
勢いのある言動で北本に説明したマリバ。
しかし北本はある言葉に疑問を持ち、マリバに聞いた。
「……!! おい? 今ブルーダを"祖父"と言ってなかったか……!?」
「……? あっまだ言っておりませんでしたか!! 失礼しました! はい、あの人は私の祖父ですっ!!」
「な………、ま、孫がいんのか……あのおっさん………」
マリバの言葉を聞いた北本は、少し驚いた表情をしてしばらくの間思考を停止してしまった。




