第1話「アルメシア」
"アルメシア"……。
それは、私たちが住む"地球"という世界とは異なる不思議な世界。
そこでは人々が何百年もの間、様々な種族とお互いに協力し合い時には争いながらも平和に生きてきた。
だが、現在この世界では各地で自然災害や凶暴な"魔物"《モンスター》と呼ばれる生命体の出現が相次いで発生している。
……それらの原因は、何年も昔に"勇者"と呼ばれる者たちによって封印された邪悪の権化・"魔王"の力の増幅により引き起こされているらしい。
さらに残り一年以内には、その魔王の封印が解かれ復活し世界に恐怖と絶望を与えるという。
そんな未曾有の危機に晒されているこの世界だが、魔王への対抗策として兼ねてより行ってきた実験があった。
…………それが
「……おお! 神よ!! 今こそ我らに希望の光を与えたまえっ!!」
ドッ!!
ピカーーーン!!
"勇者召喚魔法"である。
「や、やった……やったぞ! な、なんとか……、なんとか成功したぞっ!!」
バチバチと音を立てつつ天からさす光に包まれている遺跡のような建造物の方を見て、ローブを羽織った人物が歓喜に満ちた表情をしてそう言った。
「苦節五年……ようやくっ、ようやくこの偉大な魔法を成功させることができたっ!」
「はは……、はっはっはっはっは!!!」
大きな声で笑いながらその場で狂ったかのように踊りだすが、暫くするとローブの人物はハッとした顔になり、さきほど召喚を行った場所に向き直る。
「……しまった、私としたことが……、肝心なことを忘れていた……!」
漸く落ち着きを取り戻してそう呟いた後、ゆっくりと遺跡のある方へ歩き始めた。
◇ ◇ ◇
一面が純白色に包まれた不思議な空間に、朧げながら大きな人影が映っている。
「……!!? まさか破壊されていたとは。驚いたな……」
その人影は、空間内に赤みがかった霧のようなものが充満しているのを前にすると驚愕した様子でこう口にする。
(コレを壊すだなんて……。一体誰が何の目的でこんな事を…………)
人影は赤い霧をしばらく見ながら、実体のない筈の霧を何故か何者かに壊された風にそう考えると少し沈黙した。
(……、"秩序の結晶"。この世界そのものの平和を保つ大事な結晶を壊したらどうなるのか、わかっているのか……?)
数秒黙り込み思案したところで人影は再びそう考え、その霧を"秩序の結晶"と呼び怪訝そうな感じでボソッとそう呟くと、スゥー……とその場から姿を消していった。
◇ ◇ ◇
「うーん……、んぬッ!? ハッ!!? こ……、ここは…………ッ!!」
「どこだァーーーーーッ!?」
場所は戻り遺跡……、この場一面に差していた光が消え、先程までの出来事がまるで嘘のように静まり返る。
するとそこには三人の黒髪の青年が気を失ったまま横たわっており、そのうちの一人が早々に目を覚まし勢い良く立ち上がると、遺跡の中心部で訳がわからなさそうに声を張り上げて大きく叫んだのだった。