第15話「アルメシアの基礎知識」
「………お待たせしました。こちらをお受け取りください」
あれから少し間を置き、北本に合った本を探していた女性がカウンターまで戻って来ると、深緑色の表紙にローマ字で"アルメシアの基礎知識"と書かれた本を彼へ手渡した。
(これもオレらの世界の文字で書かれてるな……、もしかしてアルメシアにも英語とか日本語みてーのが普及しているのか?)
北本は受け取った深緑色の本のタイトルに目を通し、言語について疑問を浮かべる。
(……いや、これもアデンが何かしたのかもしれねぇな。だが、もしそうだとすりゃ、何故"自動翻訳"とかのスキルをオレにくれなかったのか……)
(……まあ、全く読めねー独自の文字とかあっても困るから、これはこれで助かるがな)
ただ、これについてはアデンが何らかの力を行使してその問題を解決させた可能性もある。
実際、転移してから現在に至るまで、コミュニケーション自体は支障なく成り立っているのだから。
きっと、アルメシアの文字を自分にも読めるようにしてくれたのだろう、北本はこう考える事にした。
「あの……、この本があなたの読みたい書籍で間違いないでしょうか……?」
文字について考えていると、本を渡した女性が確認の意を込めて尋ねてきた。
「…………あぁ。確かにこいつなら色々と知らないことが分かりそうだ、……ありがとな」
深緑の本へ目を落としながら彼女へ礼を言うと、さっそく北本は受付から離れたところにある読書できるスペースに移動して、借りた本を読み始める。
◇ ◇ ◇
「ふぅー、なるほど、良い情報が手に入ったな」
しばらくして、一人集中して黙読していた北本はページを閉じてスッと立ち上がり、得た情報をまとめる。
(………まず、金銭や通貨について、最初に金銭のことだが……。この世界では金の単位を"G"と呼ぶらしい)
(……そして通貨は全部で合計8種類。鉄鉱石で出来た鉄貨が1枚で"1G"と一番低い。その次に低いのが銅鉱石で出来た銅貨……1枚で鉄貨100枚分で、その次が銀で出来た銀貨、これが1枚で銅貨100枚分)
(こんな感じで、金貨、金貨を一回りでかくした大金貨、白金貨、これまた白金貨を一回りでかくした大白金貨、そして今……この世界で一番価値が高いのが虹聖貨と、鉄貨から虹聖貨まで同じ倍率で価値が高くなってくみてぇだな)
(全8種類の中で一番価値が高いのが虹聖貨か……。1枚だけで100兆はするとかヤバすぎるだろ。こりゃ貴族や王族でも手に入れることはできねぇだろうな……)
彼はまずは金銭や通貨に関する情報をまとめると、次に得た知識を振り返る。
(………あと大陸や国について、まず大陸だが……。アルメシアには5つの大陸があって、北側に位置する"エクシビカ大陸"、東側に位置する"グリシア大陸"、西側に"フィータム大陸"で、南側にはパルディン大陸と、最後にこの世界の中心にあんのが"ジマトラ大陸"………)
(一番デケェのがこのジマトラ大陸で、地図見た感じだと、これ軽く400平方キロ超えてねーか? いやアルメシア広すぎだろ………)
(で、今度は国だが、アルメシアには合計"75"の国があって、なかでもかなりの国力を持つのが"五大国"って呼ばれてる)
(まずはエクシビカ大陸にあるこのフィブリア王国、グリシア大陸にある"バーディア帝国"、パルディン大陸にある"アストラル王国"、そしてジマトラ大陸にある"サビラ連合王国"、フィータム大陸にある"ミクリア公国で、それぞれの国が互いに対立関係にある………。まあ要するに国同士の仲が良くねぇって事だ)
(……他にもいろんなとこに国が点在してるらしいがまだ未開拓の地もいくつかある。アルメシアとあっちの世界とではここまで地理的に差があんのか、こりゃ大変だな………)
(こんくらいか、もう夜遅くなってきたから途中までで切り上げたが、次は時間があるときにまた読もう……。とにかく眠くなってきちまった……。早いとこ宿かなんかを探しに行かなきゃな)
じっくり読み耽ることで得た基本知識を頭に叩き込み、北本は図書館を後にする事にした。
「なあ……、この本、しばらくの間借りても良いか?」
「……むにゃ、………はっ!? しっ、失礼しました!? "アルメシアの基礎知識"ですね? 一週間以内に返していただけるのなら、どうぞご自由にお借り下さい!」
ゆったりとした足取りで、受付の机の方まで進む。
彼は手に持っている"アルメシアの基礎知識"を最初に話した受付に見せながら聞いた。
まあ、あちらは危うく眠りに就こうとしていたが。
彼女はまたもや慌てた様子で目を擦った後、本の貸し出しを許可する。
「一週間か……、分かった。じゃ、ありがたく読ませてもらおう」
その焦り様に少しばかり引く北本。
しかし、目的だった知識の吸収と情報収集は片がついた。
やる事を終えた彼は図書館を発ち、今度は宿を求めて探し始めるのだった。




