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四勇冒険記 〜勇者として召喚された者たちの果てなき旅路〜 【2月以降に次話投稿予定】  作者: K.R.
冒険者編

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第13話「北本、街に着く」


北本がスライムから逃げ切ってからしばらくの時が経った。


「………お? あれは道か?」


広い草原を早足で歩いていた北本は、草むらの間から地面の露出した細い道を見つける。


(こんなところに道があるってことは、きっと近くに街とかがあるハズだよな……。よし、急ぐか。もうすっかり暗くなっちまった……)


道のあるところに出たならば、そこを通ればいずれ人の住む場所へたどり着くだろう。

北本は考えつくと、これまで以上のペースで草原を抜け出し、その道を突き進んで行った。



◇ ◇ ◇



草原広がる大地、澄んだ空気と大自然の活きる環境の中、全長十数メートルほどの大きな石造りの門が聳え立つ。

門は街の入り口であり、関所のシンボルでもある。

そんな門の前に立っている二人の門番らしき男たち。

彼らは今、自分たちの周囲を見張りながら眠気と闘っていた。



「いやぁ〜眠いなぁ、一体いつになったら交代するのかなぁ?」



門右側に居る男が自身の目を擦って片側の門番へ聞く。


「まだあと一時間程度はオレらが見張りをするだろう……、それまでもう少し我慢しろ」


右の門番の反対側、門左手で立つ男が正面を見据えたまま冷静に返事する。


「えぇー……あと一時間かぁ〜、まさかこんなおっそい時間に見張りをやらされるとはっ……、はぁーなんで僕フィブリア(・・・・・)騎士団に入っちゃったんだろうなぁー」

「……何を言っている。この騎士団に入った以上、急な任務にも真面目に取り組むのが騎士としての務めだろう!」


右の門番は文句を言うように語る。

どうやら彼らは騎士のようで、自分達のような人間がどうして夜まで門を守る役を任されるんだ、と軽く後悔している。

これに対して、反対側にいる男は不満を漏らす彼を叱責した。


「あぁ……、早く仕事終わらせて帰りたいなぁ………ん?」


ふと、右側の男はふいに正面から誰かが近づいて来る事に気付く。

門は草原に一本延びる土の道と繋がっていて、そこから何者かが歩いていた。


「………誰だ? こんな時間に……?」


左の男もそれに気付いたのか、少し警戒し始める。


「はあ……、やっと着いたか……」


だが、その直後だった。

遠くから歩いていた筈の人物は、両端で門を守備する二人の視線が集まるのをよそに、あっという間に門の手前まで移動していた。

この人物の正体は………、スライムから逃げ切りここまで小走りでやって来た、北本だった。



* * * 



(……ここが街の入り口か? 門番みたいな奴も居るし………)



門の前まで歩を進めた北本は一度足を止め、石造りの門とその両脇の門番らしき兵士のような格好の男たちを一瞥する。


(まあいいか。何も言われなきゃ通って良いって事だろ)

「………おい、そこのお前、止まれ。……この門を通って街に入るには通行料として"鉄貨50枚"を払ってもらう必要がある。………良いな?」


立ち止まるのも程々に、彼は再び歩き出して門を通り抜けようとした。

が、それと同時に門番の二人が彼に声をかける。

門左の兵士が声をかけて、彼へ通過の対価として金銭を要求した。


「"鉄貨50枚"……? あぁ、"金"のことか?」

「ええそうです。……ではでは早速、鉄貨50枚頂戴させていただきますよ〜」


右側の男も同様に、北本に金を払うよう促す。


「うわ、参ったなー。まさか門を通るだけで金がかかるなんて……」


それを受け、北本は学校の制服のポケットに手を入れて金を探すような仕草を取る。

その後、眉を釣り上げ、困ったように口をひん曲げて、左右に居る門番二人と一度目を合わせた。


「…………え? あ、貴方まさか、お金を持ってないんですか?」


その様子を見た右側の門番は、ありえないといった表情で彼に聞く。


「ああ……、無いんだよ。なんせオレは、この世界に今日来たばかりだからなぁ」


真顔でさらりと自分の素性に大いに関係する情報を明かした北本。

すると、二人の顔は、その台詞を耳にした途端変化、目を見開き一歩後退りする。


「ん? どうしたんだ? 何かマズいことでも言ったかオレ?」


彼らの様子の変化に、北本は疑問を抱く。

なぜ二人が驚いているのか、まるで分からないとばかりに。


「お、驚いた……! もっ、もしかして貴方は"転移者"なんですかっ!?」

「そ、そうとしか考えられない……。アルメシアに今日来たばかり(・・・・・・・)だと言ったからな!」


右の門番が北本に質問を飛ばし、もう片方の門番は聞く前に彼の素性を断定する。

北本の一言で、一気に彼らの態度は一変した。


「お、おい。……確かにオレは転移者で、今日この世界に来たところだが?」


この勢いに驚きつつ、返答する北本。

後頭部をぼりぼり掻き、目を細めて彼らの話を聞く。

するとそれを聞いた右の門番は、やっぱり!と口にした後、片側の男に視線を移して何かを伝えた。


「なあ、オレはこれからどうすれば良いんだ? ……金、一銭も持ってねぇから街に入らずこのまま引き返すしか……ねぇのか?」


先よりもさらに困惑した表情で二人に聞く北本。

夜も更けつつある今、この街に入れないとなると、近くに人のいる場所を探して歩き回るか、野宿でもして日を跨ぐしか無いからだ。

そうなれば、日が沈み活動が盛んになる魔物に襲われるのは考えるまでも無い。

もし襲われた場合、スキルを使い逃走するのが関の山。

まともに武器や装備も揃えていない状態で、しかもこれといって鍛錬もしていない以上、下手に実戦を経験するなんて危険極まりない。


「………。いや……待て、お前は転移者だと聞くが、本当にそうなのか? アンタが転移者だという証拠となる物は何か持っていないか?」


どうしても街に入らなければまずい……。

北本の表情から余裕が少しずつ消えていく、するとそこに左の門番が北本へ確認を取る。

その顔は彼の正体を訝しみ、疑いを抱いていた。


(証拠……、オレ今なんも持ってねぇんだがな……。さて、どうするか……)


一時、北本は考え込む。

この世界に来たばかりで、持ち物なんて何一つとして持ち合わせていない。

スマホも時計も、ハンカチも特に何もない。残念ながら、別の世界から来たという説得力を示す事が困難になっていた。


持ち物ゼロ、信用も初対面である以上1ミリも無い。

さて、どうしたものか……と、顎に手を当てつつ思考を巡らせる。

少しの間無言で立ち尽くす。だがその時、何かを思いついたのか、彼は体勢を低くして前のめりになる。


「……? 一体何をするつもり何ですかっ!?」


無論、門番達からの警戒もより強まる。

ただ、そもそもの北本の行動は早く、彼らが何らかのアクションを取るより先に動き出していた。


「証拠となる物は持ってねぇが、その代わりにオレのスキルを見せてやるよ! それで勘弁してくれ!!」


彼の移動先は門の奥、門番の二人より数メートル街側まで離れたところだ。

これは普通に進んだのではなく、スキル"幻影"を使用してその場所まで到達した、自分の特殊な異能を利用したやり方だった。


「なっ……!? 何処へ!? スキルを使うと言っていたがっ!?」


幻影の発動中は、門番の男達が北本の姿を見失ったようで、辺りをキョロキョロと冷や汗をたらりと流しながら見回す。


「どうだよ……? これがオレのスキル・幻影だ……。証拠が無くてすまねぇな」


北本がスキルの名を二人に教えると、軽く謝罪する。


「……あ、あぁ、良いんだ……。アンタは特別にこの門を無料で通って良い………」


彼のスキルを目の当たりにした左の門番は、通過の許可を下して道を空ける。


「ん? タダで良いのか? けど何でだ?」


だが北本は無料で門を通られるというところに首を傾げる。

これまで金がなければ通さん、と言っていた二人が、スキルを披露した途端にコロッと自身への扱いが変わった。

彼は実に当然の疑問を門番の片割れへ投げかける。


「アンタの幻影というスキル……、アレは間違いなく先天性のスキルだ。……先天性ということは生まれつきか、或いは召喚等によって神によって才能から引き出されたスキルのどちらかということになる……」

「だが、アンタは見たところ住人というには少しばかり浮いた格好をしているし、その上、髪も黒髪で武器と呼べるものも所持していない……」

「なら召喚で先天性のスキルを手に入れたという可能性が非常に高い。この国では転移者が入国あるいは入村等をする場合の通行料は、"原則無料"と定められている……。だからアンタは金を払わずにここを通れる訳だ」


北本から尋ねられると、左の門番は事細かく事情を明かす。

どうして無料になるのか、それについて北本に説明した。


「……へえ、なるほど。んじゃ、ありがたく通らせてもらうぜ」


その話を聞いた北本はニヤッと微笑むと、二人に礼を言って門を駆け抜ける。

少しの齟齬こそあったものの、ともあれ彼は無事に街に入れるようになった。



* * *



「…………、特に"証拠"無しに決めちゃってよかったのかな?」



北本が去り、夜の静けさに包まれる門前。

北本という別世界より来た転移者の対応をし終えた門番二名のうち、右にいる男が凄いものを見たと言わんばかりの顔をして口を開く。


「ふん、あの"幻影"というスキルを見ればな……、物理的な証明などは必要ないだろう……」

「へぇ〜……。まぁ、もし転移者じゃなくても先天性というだけで十分珍しいけど」


冷静で真面目な片側の男が、物理的な証明を持たずして北本を通させた訳を告げた。

彼の強力な能力を少し見れば、確かに言動に説得力があると判断できる。

それに対し右の門番は嫉妬まじりに呟く。

幻影スキルとは、それほどまでに希少なものであった。


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