第96話「南野と創造神」
今回から四人の転移者編で死亡した南野が本格的に活躍を開始します!
周囲一帯が白一色で統一された、不思議な空間。
ここは以前、北本たち三人が来ていた“亜空間”という場所である。
「………んんっ、……!?」
その中心部で意識を覚醒させたのは、魔王軍の幹部と名乗る“アスクレマス”により転移させられたダンジョンで、山田・神崎・模地の三人と共に魔物と戦い、そして死んだはずの南野舞衣だった。
「こ、ここはどこ……? それに……、あたしって……」
立ち上がって辺りを見渡しながら、南野は困惑した様子で呟く。
「……どうやら目を覚ましたようだね★」
その声に反応して振り返ると、少し離れた場所に一人の男が立っていた。
銀髪に紫の瞳。神々しさを纏ったその人物――アデンが、面白そうにこちらを見ている。
「ふぇっ!? び、ビックリした……。あなたは誰?」
不意に現れた男に驚きつつ、南野は身構えながら問いかける。
「私はアデン。……この世界、アルメシアを創った創造神ってやつさ★」
そう言って肩をすくめるアデン。
その言葉に南野は驚愕する。
「そ、創造神っ!? ……じゃああなたが、この世界の神様ってこと!?」
「あぁ、そうなるね。一応、私以外にも似たような奴はいるけど……」
どこか歯切れの悪い言い方に、南野は訝しげな表情を浮かべる。
「……? あっ! てことはこの場所って、あなたが作り出した……んですか?」
敬語に慣れていないながらも、神に対して丁寧に尋ねる南野。
「その通りさ。ここは“亜空間”。何もない、虚無の空間だよ」
空を見上げるように目を細めながら、アデンは答える。
「なるほど……やっぱりそうなんだ……。 !! そういえば、あたしって……なんで生きてるの!? 確か、あの時モンスターにやられて……っ!」
ふと思い出したかのように、南野は動揺しながら叫ぶ。
「ああ、そうだった。……まだ伝えてなかったか、ごめんよ。
知っての通り、君は魔物の攻撃で命を落とした。だが私は創造神としての力を使い、君を蘇生させて、この亜空間へ転移させたのさ★」
アデンは微笑みながら、まるで些細なことのように語る。
「……さ、さすがは創造神……。あっ、じゃあ他のみんなは!? まさか、あたしだけ……?」
すると、南野は目を丸くしてアデンに尋ねる。
その瞳には憂慮が、心の奥底からは不安が滲み出ていた。
「ああ、心配いらないさ。君だけじゃない。山田君たち三人も、全員生き返らせておいたよ」
しかしアデンは彼女を宥めると、左手の人差し指を前に出し、空中にスッと線を描いた。
ブゥンッ!
直後、空間に半透明のスクリーンが浮かび上がる。
そこには、ほとんど無傷の状態で眠る山田、神崎、模地の姿が映っていた。
「ほ、本当だ……。みんな、無事……。すごい……」
スクリーンに映る三人を見て、南野は胸を撫で下ろしながら呟いた。
「ちなみに彼らは今は気絶しているけど、日本に戻れば、すぐに目を覚ますよ★」
アデンは事もなげに言い添える。
「え!? あたしたち……元の世界に帰れるの!?」
思わぬ言葉に、南野の顔が一気に明るくなる。
「うん、そのつもりさ★ ……ただし、その前に君に頼みがあるんだ」
途端に表情を引き締めるアデン。
その目は、どこか切実な光を宿していた。
「……え? “頼み”って、何……?」
困惑する南野に、アデンは短く頷く。
「ああ、……“秩序の欠片”といってね――」
彼は南野に向けて静かに説明を始める。
秩序の欠片とは、以前召喚された東洋と北本、伊村の三人にも話した世界のバランスを維持する結晶の破片だ。
◇ ◇ ◇
「へぇー、秩序の欠片……。それを集めれば、アルメシアに平和が戻るんですね」
秩序の欠片について、一通りの説明を聞いた南野は、興味深そうに何度か頷いてから口を開く。
「そうだ。時間はかかるだろうけど、それを集めてくれるなら君たちを必ず元の世界へ戻そう。……というか、頼む。やってほしい」
最後は少し情けない口調になりつつも、アデンは真摯に頭を下げた。
「んんー………。うん! わかったよ、その頼み、引き受ける!」
ほんの数秒だけ考えた後、南野は笑顔で答える。
彼女の中に迷いはなくなった。
創造神の願いを、今は信じてみようと思ったからだ。




