第一章 断章 シロガネ――忠義の約束
リリーが自室に準備へと向かっている間、シロガネは一人、ボスの部屋に残っていた。
「それで、ボス。話とは?」
「話?」
「はい。リリーがボスから話があると」
「…………」
ボス。ブラムは暫く何かを考えた後、頷いた。
「話は一件だけだ」
「どのような?」
「ブレゲ・アームストロングを知っているか?」
「下らぬ対魔師ですね。金の力でのし上がった小者」
「……後は分かるな?」
「ハッ! あの男が犯した数々の罪。あなた様への忠のため。オレの信念のため。我らの勝手な都合のために。この刀を握りましょうぞ!」
「……いつもすまない。息子よ」
シロガネは胸に手を添えて、深々と頭を下げる。
「今を苦しむ同胞たちを救う。そして、力を頂けたあなた様への忠義を捧げられる。完璧な利害の一致です」
「……すまない」
「このオレをファミリーに加えて頂けたことを。常に感謝しております。我が父」
――こんな恩返ししか出来ぬが……これがオレなりのボスへの忠義。
シロガネはもう一度、頭を下げると部屋を出て行く。暫く部屋の前で立ち尽くすと、部屋の中から呻き声が聞こえてくる。
――ボス。それがあなた様の覚悟なのですね?
シロガネにはやらなければならない。ファミリーへ恩を返すために。シロガネの“仕事”を。