表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

第五章断章 シロガネ――ボスへの忠誠

 シロガネは刀を何度も納めては抜いて、ブラムを斬ろうとする。

 それが粛正者たるシロガネの仕事。

「ボス! ボスゥウウウウウ!」

――そんな叫びで正気を取り戻せば苦労はせぬな。

 自虐し、刀を納刀する。

 ユーナギはボスを相手に時間稼ぎを行い、負傷しているらしい。

 リリーは気でも触れたのか、木と話をしている。

 もう、この戦いに退路はない。ここでボスを倒さねば、リリーもユーナギも助からない。二人を助けるために、ボスを斬る。活人だ。

「ボス! 今から、あなたを斬ります! お覚悟を!」

 シロガネは、シロガネを構える。思えば、刀と同じ名前を持つというのは、些か面倒ではある。

 子供の頃に吸血鬼の屋敷から盗みだした刀。吸血鬼の友人へと送られたこの刀を、シロガネが盗みだし、最後には活人鬼の恩人に向ける。

 だが、それは使命なのだ。この刀は人を救うために存在する。斬ることで人を救う、活人のために。

「居を合わせ、呼吸を合わせる。抜かせず、掴ませずに斬る……!」

 刀に仕込まれた火薬をイメージし、ピストルが弾を放つイメージを抱きながら、剣を抜く。

 だが、手に伝わるのは固い物を叩いた鈍い痛みのみ。

「くっ、ボス……! これでどう止めればいいのだ……!?」

 かつて、ボスは暴走した時、この刀で止めるように言っていた。剣術も磨いた。

 だが、どれほど刀を抜いても、刃で切り裂くことができないのだ。

 これでは……暴走など止められない。

 拳を何度も何度も鞘で受け止め、捌ききれなかった拳が顔や腹部に鈍い一撃となり、それでも倒れずに捌き続ける。

 誰がどう見ても、一方的な戦い。血が飛び、全身が悲鳴を挙げる。だが、逃げるわけにもいかない。

「ボス……あなたのお陰でオレは帰るべき家が手に入った。あなたのお陰で誰かを救うための力を得た。あなたのためなら、悪にも染まろう。オレの願いにも通ずるなら喜んで協力しよう」

――そんな言葉を投げかけてどうすると言うのだ。戦闘中に舌を噛んだらどうする。

 また自虐しながらも、止まらない。シロガネだって、リリーと同じくらいには諦めが悪いのだ。

「あなたの願うならば、どんな悪人だって殺そう。あなたが望むのなら、あなたの命だって奪おう。だから――お覚悟を」

 活人。人を生かすために命を奪う。殺しで誰かを救う。

 こうして暴走する人間を止めるのもまた、殺しで誰かを救う行為。

「でなければ――誰も救えぬ!」

 ここで止めなければ、多くの命を……リリーを殺すことになる。

 それだけはここで止めなければならない。何よりもリリーを殺したくないのはボスの願いなのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ