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第五節 ばかもんすたーぺあれんつ

第五節 ばかもんすたーぺあれんつ


「ツカツカツカ」


渡辺紗希は通学路をいつものように通る。すると、


「ペイ―ンペイーン」


イブキが現れた。



イブキはものの〇姫で言うところのサン、人間でもなく、もののけでもないといったサン。これに対して、イブキは人間でもなく、妖精でもないといったところだ。



渡辺紗希は思った。


(この子……何者……? タラちゃん並みのSE出しながら歩くなんて……)


「ペイ―ンペイーン」


さらにイブキは歩いている。


「おっ、こうしちゃいられねえ。今日の朝刊、と」


朝刊の新聞を開き、読み始めるイブキ。


「いっちめっんはっと」


一面を見る。すると、


「国外のコトか、アルカイダ? そんな集団あるかいな!」


「……」(それ、マジで危ない集団だから、ね)


渡辺紗希はイブキの身を案ずる。


「次はスポーツ欄だゼィ!」


歩きながら、イブキは新聞を読み進めた。


「中日は今年も弱いなー。投手王国はどこへ行ったコトやら。フー全くもぅー。それからそれから? 外国人助っ人のツライ=サン、ケガで二軍へ? だと……なーにがケガだ! シップと絆創膏で治せやそれぐれー」


(それ、ケガの度合いが違うから、ね……)


一言一句イブキの独り言を聞き漏らさなかった渡辺紗希は心の中でツッコむ。


「それにしても」


「⁉」


「この前の馬鹿もんスターペアレンツには笑わせられたぜ。アッハッハッハ」




(回想)

松本宅にて――。



「松本はいねぇがぁああ⁉」



おばはんの声がする。


「るっせーな。……おい、お前行って対応して来い」


「ラジャー」


松本の言う通りにイブキは対応しに玄関へ行く。




「ガッチャ」




ドアを開く。


「ヘイおばはん! 今何時だと思ってんだ⁉」


「何この子、知らない子ね……っていうかまだ19時よ。ご、ご、7、じ‼」


おばはんは言い返す。


「あっもういいわー。コレどうでもいいわー。松本! 選手交代‼」


イブキが振り向き叫ぶ。


「チッ……ちょっとは粘れや」


松本は重い腰を上げ、玄関へ行く。


「ここで会ったが百年目! 松本君? あなた、学校では停学1週間で済んだけど、私や他の保護者達は、そうは問屋が卸さなくってよ」


おばはんは強く言う。すると、




「……100万」




「な、何を言って……」


「100万円やるからけぇれ」


松本は金を武器に交渉してきた。




「……」


「……」




数秒の沈黙が続いた。




「悪い」


「!」


「さっきのはウソだ」


「こ、高校1年生の分際で何を大きな事を言うと思ったら……」


「50」


「⁉」




「50万なら今出せる」




「ぽいっ……ドサ」


玄関先で何かが投げられ、落ちた。




「‼」




札束だった。


「頼むからこれでけぇってくれよ、おばはん」


「お、おば……」


「それとも、50万はいらねえから、何か他にして欲しい事でも?」


余裕綽々で構える松本。


「50万……」


ゴクリと息を呑むおばはん。


「……きょ、今日の所はこれで勘弁してやるわ。じゃ、じゃあね」


「バタン」


ドアを閉め、おばはんは帰って行った。両手を軽く上げ、手のひらを見せる松本。



「キャハハハハハハ!」



大爆笑するイブキ。


「あの、金に目がくらんだ顔!」


依然とけたけた笑うイブキ。松本が口を開く。


「な、こうすればいいんだ。あんなヤツら。それにしても、金は何だって買えるな。モノもヒトも、命も心も。しかしな、俺のここにある魂だけは、金じゃあ買えねぇんだぜ?」


そう言って胸を軽く叩く松本。


「まっつんが久々にカッコイイぜ!」


イブキも上機嫌の様だ。


「つーかよう、あのおばはんの顔ときたら……笑えるだろ?」


「アッハハハハハ! もげる! 腹筋がもげる!」


「ああいうのをモンスターペアレントって言うんだな。ああいう馬鹿共を略して……馬鹿もんスターペアレンツ、ってな」


「上手い! 座布団一枚‼」


松本とイブキの会話は盛り上がる一方だった。

(回想終了)




「馬鹿もんスターペアレンツ、fuckin’‼」


中指を立てるイブキ。


(な……何なの? ばかもんすたーぺあれんつ?)


渡辺紗希の顔にクエスチョンマークが溢れている。




(でも!)




目をキッとさせる渡辺紗希。


(言ってあげないと。人前で中指は立ててはいけないって)




「ぷぅ――――」




イブキの臀部から謎の音が‼


(この子……屁をこいてる……⁉)


渡辺紗希は不安視した。




「よっしゃ!」


「はぁ⁉」




渡辺紗希は不安と疑問の渦中へと巻き込まれていく。


「今日はずっとまつもんが家に居るぞ! 帰ったらぼけもんするぞぼけもん! 耐久戦に持ち込まれたら注意が必要だ……なぜならPPが切れると自害するからだ‼」


そういってイブキは決め顔と決めポーズで言い放った。


(もう…わけ分らん)


渡辺紗希のHPはさながら4分の1を切ったといった処だろうか。


(まつもんが家に居る? まつもん……? まさかこの子!)


渡辺紗希は何かに気付く。




(松本君と同棲してる……⁉)




恐る恐るイブキに近付く渡辺紗希。すると、



「プ――ン」



異臭が。カメムシ並みだった。


(やっぱりさっき、屁を……)


苦痛に顔を歪める渡辺紗希。


(もう……ダメ……これ以上近づけない……そして近づきたくない)


渡辺紗希とイブキの最初の接触は終わった。





一方で松本はと言うと――


(停学……ヒマだな)


『調子に乗らせて頂きたい』そう前面に大きく描かれた青色のTシャツを着て、商店街を歩いていた。すると、








「キャ――‼」








「!」




「強盗だ‼ レジから金を奪われた!」




松本が振り返るとそこには十数メートル先にナイフを持った男が走っていた。






「そこのデカいの! どけ‼ どかなければ切るぞ‼‼」


「……やれやれ」




松本は身構える。


(獲物使いは獲物が無くなったときが弱い……ならば……!)






「ふ――っ」






呼吸を整えて






「ガッ」






蹴りを、ナイフを持った腕に一撃! 




「ぐあっ!」






「フッ……カランカラン」






ナイフは一度宙に舞い、地面に落ちた。


「や、ヤロウ」


男は蹴られた腕をかばいつつ松本を睨んだ。


「何だその目は? まるで俺が悪いみたいじゃあないか?」


松本は続ける。


「お前はナイフという獲物を持った強盗犯、対して俺は丸腰の高校生。自分とこの状況を客観視してみろ。どっちが悪モンか、分かるだろう?」


「うるせぇえええええ‼ 死ねぇガキがぁああああ‼‼‼」


男は突進してきた。





「ゴッ‼」





しかし、




「相手が悪かったな」




松本の拳一振りで男は宙を舞った。






「ゴシャア!」






男は地に落ちる。


「て、てめぇ……なんでそんなに強えんだ?」


松本は答える。


「俺の強さ云々はよく分からねえな。ただ一つ言える事は、俺は16の頃からビビった事ぁねぇ、ただそれだけさ」




男松本、高校一年生! 誕生日は2月14日! 


時は春! という事は、松本の現在の年齢は……




分かるだろう?

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