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第三節 河原での戦い

第三節 河原での戦い


「俺の要求はだな……俺の前で土下座、かな?」


 受話器越しに聞こえてくる言葉を、松本は受け入れられずにいた。


「おーい、聞いてるか? 土下座だよ、ど、げ、ざ」


堪忍袋の緒が切れた松本。


「黙れ。さえずるな」


「あ?」


「直接会って話せ……」


「ガチャ……プープープー」




延安は漏らした。小の方を……。




夜の河川敷。延安はイブキを人質に取り佇んでいる。




「ザッ」




「! 来たか……」






松本、現る。






松本は口を開いた。


「分かってんだろうな?」


「あ? お前こそ分かってんだろうな? この事実を!」


返す延安はイブキをひれ散らかす。




「‼ てめえ!」



震える拳をもう片方の腕で抑えた。


「まつもーん……」


イブキは珍しく涙目で、悲しい表情をしていた。


「土下座だよ。ど、げ、ざ」


「……(背に腹は代えられない。イブキにもしもの事があれば……)」



「ザッ」



「! おっ、観念したか」


身構える松本。両手を地面につける。そして――、




「頼む、これで許してくれ」


遂に土下座する松本。自身への高いプライドの所為か、頭に血が昇り、血管が浮き出ている。


「まつもん……」


イブキは松本のことを案じて呟く。延安が口を開く。


「あーん? 許してほしいだぁ? まーだまーだ足りねぇなぁー」




「ガッ」




土下座をしている松本、その頭の上に延安は足を置いた!


「ぐり……」


踏みつけた足を動かす延安。


「クゥンクゥン、この畜生ともおぼしきワンちゃんを許してほしいワンって言ってみろよ松本ぉ?」



「ク……」



松本のボルテージが最高潮に達した瞬間!





「とーう!」





「何⁉」


イブキが延安の魔の手から逃れた。



「油断したな、ノブナガ!」


「何……だと……(俺の名前延安なんだけど……)」



叫ぶイブキ。


「まつもーん、私はもう大丈夫だ! このまま家に帰るから、思う存分暴れていいぞー!」


そのまま家に帰る。


「くっ、しくったか!」


「ぶわっ」



「⁉」



延安の片足が、浮かんだ気がした。体重の殆どを預けていた延安の片足を押しのけて松本は立ち上がった。



「ぐっ」


「ドサッ」




こける延安。松本は口を開いた。


「……よくも、コケにしてくれたな?」


憤怒の表情を浮かべる。



「あ……すいまっせーん」


「何度謝ろうが、許す気は毛頭ないぜ?」



「あ、すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません」



拳を掲げる松本。そして、




「ゴッ‼」



延安は夜の河川敷にて宙を舞った。




――後日。今日は週末の休みの様だ。


「ピコピコ、カタカタ、ッターン」


イブキがゲームをしながらパソコンで調べ物をしている。いや、正確にはパソコンで調べ物をしながらゲームをしているといったところか。


「ふむふむ、このモンスターはPPが切れたら自害する、と」


何やら、ゲームの攻略方法の様だ。



「何だ? 朝からゲームか?」



松本が6畳間の部屋に入ってきた。


「松本ぉー、朝ゲームはいいんだゾ? 嬉しい特典があってなぁ、目が覚めるんだ」




「それだけだろ?」


「ぷーわぷー」


イブキの顔面が変形した。




「じゃあ、俺は出かけるからな」




松本が家から出掛けてからも、イブキの顔面は変形したままだった。








「全く、何度来ればいいのやら」


松本は病院に辿り着いた。


「面会で、……シゲミ。もう行っていいかい?」


受付を済ませる松本。面会室に向かう。



「ガチャ……」



面会室のドアを開ける松本。


「ほっ」


連絡が届いていたのか、シゲミが待ち構えていた。


「よう、クソ野郎。元気にしてたか?」


松本が言葉を投げ掛ける。


「これ、ワシに向かってクソ野郎とは何だ! 訂正せい! 訂正するな‼」


激昂するシゲミ。


「やれやれ……それだけ怒れれば大丈夫か。金は入れといたぜ。こうやって金出してりゃ一生入院できるかもな、じゃあ」


立ち上がる松本。



「また来るぜ」


「…………」


座ったままのシゲミ。








(金が貰えた……!)


笑みを浮かべるシゲミ。どうやら金に目がないようだ。病院を後にする松本。


「めんどくせぇ野郎だ……」


一言、もらした。




 松本は家に帰ったようだ。イブキがゲームをしている。


「ピコピコピコピコ」


「オラァ! 行け! そこだ‼」


エキサイトしている。


「帰ったぜ」


松本が声を掛ける。


「ピコピコピコピコ」


「やつぁピンピンしてたよ……おい、聞いてるか?」


「ピコピコピコピコ」


「おい! 聞けよ、このヤロ」



「サッ」



イブキが右手を差し出して、松本を制止した。



「坊主……」



「⁉」



イブキが続ける。


「やな事には……そんなに首を突っ込まないでいいんだぜ……?」


「ふ――(知ったような口を……分かってんのか? 俺とアイツのこと……)」


松本は溜め息をつき少し考える。


「わーったよ、その件については以上だ。もう話さん」


「ピコピコピコピコ」


(良かったー。ゲームの邪魔になんだよねー、長話は)


イブキはそっと思うのだった。




――夜、湯船に浸かる松本。シゲミとのやり取りを思い返す。


「やな事には、首を突っ込まないでいい――ねえ……」


ふと、外を見ると、綺麗な月夜だった。


「……フン」


「まーもん! アーリー! アーリー‼ 一番風呂ゆずってやったんだから、後がつかえるコトに、気を配るんだ‼」


イブキが風呂へ向かって叫ぶ。


「(アイツ……俺の名前忘れてんじゃねーだろーな?)わーったわーった。後、5分な」


松本が返した。


「む――ん! その5分が長――い‼」


苦悩するイブキであった。




翌日――、松本の教室にて。


「てめぇら! 8人で掛かれば俺を倒せるとでも思ったのか?」


松本が学校の生徒を逆集団リンチしていた。


「ひー‼」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


逃げ出す生徒Aと生徒B。




「ガッ」




生徒Cの胸ぐらを掴む松本。


「……おい」


「ヒッ」


松本は問いただす。


「今回の喧嘩……その首謀者は誰だ? ……今ここに居るのか……?」


「に……2年のヤツだ……。奴が考えたんだ、これは……勘弁してくれ」


正直に話す生徒C。


「そうか……」


「へ、へへ……」


許されたと思い笑みをこぼす生徒C。が、甘かった。




「ゴッ‼」




鼻に一撃、拳が繰り出された。


「! ! ! !」


気絶する生徒C。


「これで許してやらぁ」


2年の教室に上がり込む松本。


「どこだ、誰だ⁉ 俺を襲撃しようと目論んだヤツは!」


ふたつ程教室をまわったところで、手を上げている2年が一人。



「‼」



松本は目をむき出し、そしてそれは充血していた。上げていた手は形を変えた。中指を残して握られていた。そう、中指を立てていたのだった。



「バブチッ‼」



松本の中で何かがはち切れた。ずんずんと教室に入り、例の生徒に近付いていく。



「おっと」


「⁉」



2年の生徒は右手に何かを掲げていた。松本はそれを見る。




「ひらっ」




それは一枚の写真だった。凝視する松本。その写真は、松本が同級生を殴っている、まさにその瞬間を写したものだった。


「な……に……?」


「ふふ」


不敵な笑みを浮かべる2年。その後ろにはパパラッチャーバカアキの姿が。




「おいーっす」

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