第十七節 子供の育て方
第十七節 子供の育て方
「もう一度言う。アンタの教育がなってないから、今回みたいなコトが起きたんだぜ?」
「⁉」
「れすー?」
驚愕する保護者と、完全にお花畑のK。そして、松本は話し出す。
「事の発端はこうだ。まず先週、このお子ちゃまはいきなり俺の後頭部を殴り、その場から逃走した。何故だったんだ?」
「アレは―れすねー。友達に言われて……」
「嘘だな……」
「⁉」
Kが言葉を返すも、それを遮る松本。
「まず、朝から他人の後頭部を殴れと言う友達は居ない。そしてお前は嘘をつく時は、左方向を目で見て愛想笑いを浮かべる。更に言うと、万が一、もしそんな友達が居ても俺なら後頭部を殴りにいかないし、そいつと絶交する」
「れすー」
再び愛想笑いをするK。歯茎が剥き出しになっている。
「次、だ……」
更に話を進める松本。
「さっき言った日の昼、だったな……。俺は購買部へと昼飯を買いに行った時、お前に出会った。そして、お前は俺に対してノーモーションからのボディブローをかましてきた。覚えているか?」
「し、知りませんー」
脂汗をかきながら、相変わらず愛想笑いを続けるK。さっきよりも、より歯茎が剥き出しになっている。
「ガラガラガラ」
「それなら俺が知っているぜ?」
会議室の戸を開けながら、タカマサが現れた。
「き、……君は……!」
「スッ」
校長を右手で制止するタカマサ。
「確かにこの歯茎ヤロウは昼、松本にボディブローをかましていた。しかも、体重を乗せていいたため、放課後まで松本は気絶していたままだった」
「‼ 本当かね? Kさん……」
校長はタカマサの言葉の真偽をKに問う。
「れ、……れすー……れれ、……れすー」
目が泳いでいる。と言うよりは、異常なスピードで目を動かしているK。
「れれ、……れれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれれ」
縦横無尽に眼球を動かす。
「おい! コイツ、キモいぞ‼」
タカマサは我慢できずに言う。
「ああ、女じゃねぇ……」
松本も心無い一言を言う。
直後――、
「れ‼‼‼‼」
Kはブラックアウトした。
「ああ! K! Kがぁ‼」
保護者は泣き崩れる。
「勝負あったな……」
「ああ、火のない所に煙は立たぬ……ってな」
タカマサと松本は口々に言う。何の勝負なのか……。
「親御さん、正直言っちゃぁ何だけどよ?」
松本は続ける。
「⁉」
絶望の表情を浮かべる保護者。
「こりゃあもう、アンタの育て方が間違ってるぜ?」
「ゴグリッ」
保護者は開いた口が塞がらない状態になり、更にそれを通り越して、顎が外れた。
「ごっ! もごごごごごご」
言葉にならない言葉を発する保護者。両手を軽く上げ、手のひらを見せる松本。
「(コラッ! 何をやっておるのか‼ と言いたいところだが……)コイツら全員、何をやっとるのか分からん……」
校長は苦悩した。松本は更に言う。
「最後に、コイツを殴った件についてだが……」
「ゴクリ」
校長は息を呑んだ。
「いきなり、しかも背後から右ストレートをぶっ放して来やがったんで、カウンターを喰らわせてやった。まぁでも、正当防衛の範囲内で、な」
(いよいよもって、このKと言う女が信じられなくなって来た)
校長は目をつぶりたくなる様な真実に触れて、ガクガクと震えていた。
「と、言う訳だ、校長。今回は見逃してやってくれねぇか?」
タカマサが校長の肩をポンと叩く。
「し、仕方ないな……今回ばかりは、松本を許してやろう。しかし、このKと言う女、君らの証言が正しいならば、そっとしては置けんな……一週間の停学処分とする!」
「っしゃ‼」
校長の言葉を聞き、ガッツポーズをするタカマサ。
「こらこら」
校長はたじたじだった。
「あっ、おい! 松本」
タカマサが何かに気付き、松本を呼ぶ。
「! あっ、おう……」
松本もアイコンタクトで意思疎通が取れて、保護者に近付いていく。
「もご! もごごごごごごご」
相変わらず顎が外れている保護者。
「ゴッ‼」
松本が保護者にアッパーカットを繰り出す。
「ゴガッ!」
顎が元に戻った。保護者は涙を流しながら言う
「顎が戻ったのはありがとうだけど……もっと他に方法は無いの?」
「悪いが、俺は医者ではないんでな。それと、このお子ちゃまの世話と教育を、停学期間中になんとかしてやってくれよ」
松本はそっと返した。
一週間後――、
「松本くーん‼」
「!」
Kが松本の方へ走って来る。
「す……ス……」
「?」
「スマ――ッシュ‼」
全力のビンタだった。
「! おっと」
「ひょい」
「ブン‼」
空振りに終わった。
Kの再教育、失敗!!!
「何にも変わってねぇ様だな。クソッ‼ あの保護者……とりあえず、やる事は決まっている……」
「ダッ‼」
松本はダッシュで逃げ出した。
「まっ……待つんれすー」
Kの50m走のタイムは7.8。超鈍足だった。
やや50m走が苦手だった松本だが、タイムは6.8、Kとは雲泥の差だった。
当然、松本に追いつけることは無かった。
「タタタタタタタタ」
「れすー、れすー!」
瞬間――、
「ズルッ‼」
バナナの皮をタカマサがセットしておいた。
「すってーん、ゴッ‼」
バナナの皮を踏んでこけたKは後頭部を打って、果てた。
『グッ』
ガッツポーズをする松本とタカマサ。
『っしゃあ‼』
同時に雄叫びを上げた。
その頃、精神病棟では……。
「み……水が飲めない……」
シゲミが悶絶していた。
「ガゴッ! ガチャ! ガッチャン‼」
「!」
特別隔離室の扉の鍵が解かれ、扉が開いた。
「えーと、ゲミシさん……だったっけ? あ、シゲミさんだ。こりゃ失礼。お風呂の時間だよー」
看護婦さんが言い、シゲミのお風呂タイムが始まった。
二人に警護され(?)風呂場に辿り着くシゲミ。すると、新しく配属された看護婦さんがいた。
「ほっ」
しかもその女性は、シゲミのストライクゾーンど真ん中だった。
「あの娘は何なの?」
警護していた看護師さんに聞くシゲミ。
「ああ、あの看護婦さんは、小田谷可奈子さんといって、三日前に配属された人だよ。おおらかな性格かな」
「ほっ」
シゲミは嬉しがる。
「……‼」
と同時に気が付いてしまった。
(これからお風呂に入るんでしょ? なら……見られてしまう‼‼‼)
シゲミは愕然とした。と、同時に
「ぐぐぐぐ」
体の一部が起立した。
(シゲミの体の一部)
「起立! 気を付け! 令‼」
「……令はできないでしょ?」
実はドMな要素も含んでいるシゲミ。そういうプレイと見立てて興奮していた。しかし、
「! ほら、あれ見て」
「! あらやだ。何か勘違いしていない?」
中年看護婦さん達に、起立した部分を見られてしまう。
「! ! ! !」
恥ずかしくなって顔を赤らめるシゲミ。
「シゲミさんどうしたの? 早くお風呂入らないと……」
小田谷さんが近付いて来た。
「! ! ‼ ⁉」
シゲミは恥ずかしさと興奮でおかしくなりそうだった。
「小田谷さーん、担当の人、こっちですよー」
他の看護婦さんに呼ばれる小田谷さん。
「はーい、シゲミさんも、早く入ってね、じゃ」
小田谷さんは去って行った。
「シゲミさん、jkの私が、あなたの担当よ」
BBAが現れた。シゲミの担当らしい。
「⁉」
「私、jk」
「! ! ‼ ⁉」
シゲミはブラックアウトした。




