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松本という漢  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十六節 ツンデレ

第十六節 ツンデレ




渡辺紗希はいつもの様に朝、いつもの通学路を登校していた。






すると、




「ペェ――ン。ペェ――ン」




イブキが軽快なSEを出しながら現れた。


(あっ、あの時の……!)


渡辺紗希は思い出していた。記憶の中に眠る、克明な景色を……。




(回想)


「ペイ―ンペイーン」


(回想終了)




(今日も何か危なげな事をしてたら、ちゃんと教えてあげないと……)


「あー退屈だわー。退屈過ぎて死ねるわー、これ。あ! 小説でも読んだろ」


おもむろに携帯を取り出すイブキ。サイト、小説家になれよのページを開く。


「何々? 回避とサイコとツトム? 作者いぶさん、か。読んだろーやないけぇー」




(しょ……小説を読むの……?)


渡辺紗希は不審に思う。携帯をタップしながら小説を読み進めるイブキ。




そして、


「キャハハハハハハ、主人公、主人公ツトム! そのネーミングセンス!!」


大爆笑し始めた。


(作者さん、ごめんなさい)


渡辺紗希はイブキの代わりに謝る。




「それからそれから? 最新話に近い部分だけ読んだろ。……ヒトは他人の話を聞いてないよ、他人ヒトだから!」




ゲラゲラ笑いながら読み進めるイブキ。完全に作品を間違った方向で楽しんでいる。


(ホントにごめんなさい、作者さん)


渡辺紗希は、先程よりも深々と頭を下げるように謝った。


「ふぅ、飽きてきたな。暇つぶしもこれまでよ」


イブキは小説を読むのを止めた。




「キッ」


眼光鋭く渡辺紗希はイブキを見つめた。


(色々と教えてあげないと。公衆の面前でヒトの作品を馬鹿にしてはいけないとか、反社会組織にはどんなギャグも通用しないとか、プロ野球選手のケガは、決してかすり傷では無いとか……)


渡辺紗希からイブキに教えることは沢山あるようだった。




しかし――、






「ぷぅうううう」






事もあろうか、またしても渡辺紗希の前で放屁するイブキ。臭いは相変わらずカメムシ並みだった。




(もう……ダメ……無理……)




渡辺紗希はイブキに色々と社会について教えるのを諦めた。






一方その頃――、


登校中の松本、廊下にさしかかる。すると、




「ゴッ‼」




松本は、いきなり後頭部を殴られた。






「! ‼ ⁉」






ダメージは小さいが、困惑している松本、後ろに振り向く。そこには後ろ美人、Kが居た。




「ごっ、ごめんなさい。私……私!」




走り出すK。


(何がしたかったんだアイツ……)


セキズとキワミが寄って来た。




「松本、アイツに非は無いんだ……多分……」


「松本、アイツは……ツンデレなんだ……多分……」




それを聞き逃さない教室に居たタカマサ。




「…………」




(ツンデレで殴りに来る⁉ 気持ち悪すぎだよそのツンデレ‼‼‼)






松本は口を開く。






「……ツンデレとは……何だ?」






「ズデっ」


ずっこけるセキズとキワミ。


「ま、……まぁ、それでもいい」


「あ、……あぁ、多分お前の人生には1ミリも関係の無い言葉だ」


「そうか、それならいいか」


松本は教室へと入っていった。






昼――、購買部へと昼ご飯を買いに行く松本。


すると、向こうからKがやって来ていた。目線が合う。ポッと顔を赤らめるK。そして、








「はいぃぃいいいい!!!」








ノーモーションでボディブローをかましてきた。今回は、なぜか体重が乗っていてクリティカルヒットした。




「かはっ!」




腹部を押さえ、膝をつく松本。






「はっ! はっ!」






息が上がる。見上げると、Kの姿が。


「…………さ、サヨナラ!」


走ってその場から逃げるK。




(わ……訳分からん)




松本は気を失った。








「ハッ」


目を覚ます松本。そこは保健室だった。見渡すとKの姿も。


「ごめんなさいれすー。私、あなたのコトがす、……す……」










「酢だこ」






「す⁉」


タカマサが現れた。


「す!」


「スルメ」


「⁉」


「酢豚、スイカ」


「す‼」


かんしゃくを起こすK。


「カラス、スイカ、カラス、スイカ」


「スイカ‼」


Kはつられて言った。いや、言ってしまった。スイカ、と……。


「スイカ‼ カラス‼ スイカ‼ カラス‼」


(陥ったな……)


タカマサはKを陥らせた。


「さっ、今のうちに行くぞ」


タカマサは松本の手を引く。


「いいのか? コイツは」


松本はKの身を案ずる。




「スイカ‼ カラス‼ スイカ‼」




「いい。ここまでバグりゃあこっちのモンだ、行くぞ」






タカマサと松本は保健室を後にした。気付けば放課後になっていた。タカマサが口を開いた。


「いいか? ああいうのは女じゃねぇ。キチガイに近い、ホンマモンのお花畑ちゃんだぞ? 関わらない方がいい」


「分かった、俺も関わりたくないと思ってたところだ」


松本が返す。


「それならいいが、アイツなんてアレだぞ、無神経にも程があるぞ?」


「無神経生物か?」


「そうだ、そんなトコだ」


「体細胞分裂で増えるのか?」


「……それは無いがな」






「…………」


「…………」






「そうだ!」




タカマサが何か思い付いたように話し始めた。


「次の土曜日の夜、うちに来い! 女ってモンを教えてやる」


「わ、……分かった」






そして、土曜日――、


夜になり、タカマサの家の前に着いた松本。


「ガラガラガラ」


タカマサが家から出て来た。


「よし、来たな。今夜は両親が旅行で居ないんでな。さっ、入った入った」






タカマサの部屋、二階に着いた。TVがでかでかと置いてあった音量を下げるタカマサ。とあるDVDをレコーダーに入れる。


「ああん、あんあん」






AVだった。






「こういうのが、女だ。顔立ちもいいだろ? 表情に曇りが無い!」


「ハァハァ……ハァハァ」


フィニッシュを迎えたようだった。AVの女優は寄り眼になっていた。タカマサは松本に話し掛ける。


「どうだ? あんな奴(K)と違って、いいもんだろ?」


「あ、……ああ」




松本は鼻血を出していた。








翌週――、学校へと登校する松本。すると、






「ダッダッダッダっダッダッダッダ」






後ろから何者かが走って来た。Kだった。右ストレートを松本目掛けてぶっ放して来る……!




「ヒョイ」




松本は、後頭部に目が有るかの様にそれを避けた。






「はぁ⁉」






驚愕するK。






「お前は、『女じゃねぇ』」






松本とタカマサは同時に声を出した。そして――、






「ゴッ」






Kの顔面にカウンターでストレート(男女平等パンチ)をぶち込む。








「れすー‼ れすー! れすー……」








Kは宙を舞い、果てた。






その日の放課後――。






「またしても君は……」


校長に呼び出された松本は、前回の様に会議室に居た。


「しかも今回は、女子生徒に手を出して……どういうつもりかね?」


「アイツは、女じゃねぇ」


松本はそっと返した。




「うんうん」


会議室の廊下に居たタカマサは頷く。


「! どっからどう見ても女じゃあないか⁉ 何を言っておるんじゃ君はぁ……?」




Kの保護者が会議室に駆け付けた。


「うちの子は……Kは無事ですか⁉」


「気絶してただけれすー」


「だけって……」


Kと会話を交わす保護者。


「アンタがこのお子ちゃまの親かい?」


松本は保護者に話し掛ける。


「な……何ですかアナタは?」




「アンタの教育がなってないから、今回みたいなコトが起きたんだぜ?」


「うんうん」




会議室の廊下に居たタカマサは更に頷く。

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