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松本という漢  作者: 時田総司(いぶさん)


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第十節 イブキの大冒険2

第十節 イブキの大冒険2




「ぎゃはははははは」




イブキは見事、小学生達から笑いをとった。






「……ふっぅ――」






溜息をつくイブキ。




「じゃあ、アタイはここいらでドロンするからな。じゃあな小学生ども」


颯爽と帰ろうとするイブキ。






「待って‼」






「!」






小学生の一人に呼び止められる。




「また……アクモールランプの話、してくれるよね?」




「……あぁ。また、……な」




イブキは答え、去って行った。これが今生の別れになるとは、誰も知るよしも無かった。松本宅に帰宅するイブキ。




「さぁってー! 帰った帰った。ゲームすっべぇよー」


「がちゃがちゃ」




チントン堂すねっちをセットする。








「let`s go‼」








「カチ、ウィーン」




電源を入れた。




「うおっほーい‼ うおおおおおおおお‼ 何がリメイクだ‼ 世代じゃねぇんだよ‼‼ アタイにとっては全部新作だ――‼‼‼」








2時間後――、




「素晴らしい出来だ。大人でも涙腺を刺激される、涙なしには語れないストーリーだぜ……あっ、もうこんな時間だ。ゲームは一日3時間ってね。どうしよう? あと1時間ストーリー進めるか若しくは……」




しばらく悩むイブキ。




「……そうだ! あと1時間はまつもんと対戦しよう!」




意外と時間を守るイブキであった。




「宿題でもすっか。漢字を書くんだったな。『地べたを這う、地べたを這う、地べたを這う』……」








舞台は変わり、ここは精神病棟! 地べた這いずり回りの助が、地べたを這っていた。








「ベター、ダラァ、ズズズ」








看護婦さんが来た。




「こら! 山さん。床は汚いよ? 立てるんだから立ちなさい」






「ギロリ」






「ヒッ」




地べた這いずり回りの助は看護婦さんを睨んだ。






「……」




「! ……」






緊迫状態が続いた。




「ぷいっ」「ベター、ズズズズ」




地べた這いずり回りの助は去って行った。




「ほっ、何とかしのいだかー。あー怖かった」




看護婦さんは安堵の表情を見せる。






数分後、隔離室にて――




「げみっち、反省した? この前みたいに暴れたらダメだよ?」




「くぅん」




看護婦さんの叱咤に力無く答えるシゲミ。




「(なんか怒る気なくしちゃうなー?)仕方ない。今日からまた、部分開放、始めます。気を付けてね」






「くぅん」






シゲミの部分開放が始まった。廊下を進むシゲミ。と――、








「お母さん死んだ!」








タケモトが現れた。




(家族に不幸があったのかのう)




不憫に思うシゲミ。








「お母さん見限った!」








「‼‼‼」








シゲミは我が耳を疑った。そして口をすぼめるシゲミ。




「亡くなったの? 見限られたの?」




疑問は尽きない。






「ピンクランドセル‼」






タケモトは去って行った。




(嵐のような男だった……)




シゲミを敗北感が襲う。続いて廊下を歩こうとする。








「ふみ」








一歩足を前に進めた。それだけだった。








「キシャァアア」








「ほっ」




シゲミは気付かなかった。近くに地べた這いずり回りの助が居たことに……! そして地べた這いずり回りの助を踏んでしまったのだ。






「カカカカカカカ」






地べた這いずり回りの助が怒って襲ってくる。








「よぃん、助けてぇええええ‼」








謎の言語を発した後に助けを求めるシゲミ。




「どうしたぁ⁉」


「何があったぁ⁉」




強面の看護師さん達が走って来る。






「くぅん。くぅん!」






必死に抵抗しているシゲミ。看護師さん達が現場に辿り着いた。








「山さん、やめろォ‼」








「離れろォ‼」




地べた這いずり回りの助をシゲミから引き離す。






「ふー! ふー!」






シゲミは興奮状態だった。






「キシャァアア」






地べた這いずり回りの助もまた、興奮状態だった。




「山さんこっちだ」




「ふぅー、こりゃもう入れるしかないか?」




「そうですね」








地べた這いずり回りの助、隔離室行き決定! 








隔離室へと搬送されていく地べた這いずり回りの助。






「キシャァアア! キシャァアア!」






終始興奮状態だった。




「ふー、ふー。えらい目に遭った。こんな病院はもういい。ワシは帰る」




シゲミの突然の帰宅宣言。




しかし――、




「何言ってるのゲミシさん、そんなコト言ってると、もう部分開放終わらせるよ?」




看護婦さんが来た。








「ほっ?」








「だからーほっ、じゃなくてー。まぁ仕方ないか、もう少しだけ、部分開放ね」




(しめた……!)




凶悪な笑みを浮かべるシゲミ。




「でもあと30分くらいだからねー」




看護婦さんはナースステーションへ帰って行った。前よりも慎重に廊下を進んでいくシゲミ。すると今度はバーコードなおっさんが現れた。






「お前はYBじゃ」






おっさんが話し掛けて来た。




「ふぅん? YBとは?」




シゲミが質問で返す。








「……」








数十秒、おっさんはだんまりになった。そして、遂に口を開く。




「そんなコトはお母さんに聞け」




「ほっ⁉」




余りの責任感の無い言葉に、成す術が無くなるシゲミ。








「お母さん見限った!」








追い打ちをかける如くタケモトが現れた。






「お母さーん」






そうこうしていくうちに、シゲミの本日の部分開放が終わった。






「今日もお疲れ様―」








「ガチャガチャ、ガチャ」








力強く鍵が閉められていった。ここで、お話の舞台は再び松本宅に転換される。




「キィ……」




「帰ったぞ」




松本が帰宅してきた。




「おっ! まつもーん! ゲーム対戦しようぜ‼」




「やれやれ……仕方ねえな」




イブキと松本は、ゲームをすることとなった。






「(前、本気でやったらコントローラ壊されたからな……ここは)あっ! クソッ中々やるな、まつもん」






「ピコピコピコピコ」






「よし! そこだ‼」




ゲームに熱中する松本。優勢の様だ。ここで、松本は気付いては居なかったが、言うならばイブキは接待ゲームをしていた。手加減して、松本に有利になるようにゲームしていたのだ。








「winnner 松本‼」








ゲームが終わった。どうやら松本が勝ってしまったようだ。








(俺が……勝った、だと……)








松本は信じられない様子だった。松本がイブキにゲームで勝ったのは初めての事であった。




「あー、やられたわー(……こうやって負けておけばまた今度相手してもらえるし、コントローラ壊されないだろう……)さて、もういっちょ、やってみっか!」








「待て」








もう一度ゲームをしようとするイブキを止める松本。




「今日は、気分がいい。……や、焼き肉にでも行くか?」








「! ! ‼ ⁉」






イブキは発狂した。




「ヤ! キ! ニ! クゥ⁉」




「そうだ。嫌か?」




「滅相もございません! 松本様ぁ!」




「(やっと普通の人称で呼びやがったか……)じゃあ、支度して行くぞ」




「わ――――い!」




円楽亭――、二人は焼き肉に勤しんでいた。








「やっぱりハラミは最高だぜ! アタイに言わせりゃカルビやロースなんて邪道よぉ‼」








「……確かに、ハラミも旨いな。あっ、タン二皿」




叫ぶイブキと、店員に注文をとる松本。








「コイツは旨い肉だぜぇ‼‼‼‼」








夜が更けていく。帰り道。




「やぁー、食った食った」




「満足か?」




イブキに松本が問う。




「大大大満足でぃ!」




「(なんで江戸っ子口調なんだ……?)なら良かった」




ふと、松本は言う。




「ゲームをして遊ぶのも、たまにはいいもんだな」




「グッ」


ガッツポーズのイブキ。




(勝負に負けて、人生に勝ったな)




イブキは不敵な笑みを浮かべた。これは、謎に包まれたイブキの生態をほんの少しだけ明かしていく物語である。イブキの生態が全て露わになる日も、きっと来るだろう

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