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全ての物語は異世界転生である。ただもどって来なければならない。という主張。

作者: かねとけい

 唐突ではありますが、物語は全て「異世界転生」だという主張を投げかけてみたいと思います。


 最初に断っておくと、僕は異世界を舞台とした物語は総じて好きだし、自分でも積極的に書いています。

 色々な要素を無限に突っ込める「ステージ」だと思います。いやあ楽しい!


 では、現実世界を舞台としたいわゆる普通の小説(主人公はトラックに轢かれないし、神や女神が何もスキルを与えない)はどうなのかと言えば、当然面白いものは面白い。


 そして面白いものは、必ずストーリーのどこかに「異世界」があるのだと思うんです。


 それを掴み取るにはまず「異世界」ってなんなんだ?

 というのをある程度明確にする必要があります。


 僕は「異世界」とは「主人公にとっての非日常」と捉えています。


 例えばJ.K.ローリング著「ハリー・ポッター」シリーズでは、主人公のハリーがホグワーツ魔法学校に入学します。階段下の物置で暮らしてきたハリーにとって、ホグワーツは「非日常」ですよね。


 僕が昔三回くらい(現実逃避のために)見た「けいおん!」では、主人公の平沢唯が「軽音部」に入部します。それまで「何かしたいけどできていなかった」唯ちゃんにとっては、軽音部への入部は「非日常」です。


 こんなふうに「物語の構造としての『異世界』」は案外あっさりとやってきます。


 そういうことかよ。タイトル詐欺じゃね?

 まあ、待ってください。この思考が意外と役に立つんです。


 上の二つの例で思うはずです。「ハリーも唯も、戻ってきてはいないのでは」と。


 ちなみにハリーは、序盤では年に一度ダーズリーの元へ帰っていましたが、それは関係ありません。

 ここでいう「戻る」というのはなにも物理的に戻らなくてもいい。


 つまり、主人公の「非日常」が解決されて、「日常」になれば良いのです。


 というか、日常に戻れば、物語は「一話終了」みたいなもので、必ず新しいエピソードが必要になります。


 ハリーは途中からホグワーツを一番安らげる場所だと思い始めますから(後半再度脅かされますが)、すぐに魔法学校は日常になります。非日常だったものがしっかり日常に消化されたのを待ち、そしたらトロールが地下から出てきます。


 唯ちゃんも部活入部後はそこを居場所にして、すぐさま日常化されます。

 その後は緩やかながらも起承転結のあるエピソードが立ち上がっては解決していきます。


 ここで気づくことは、一般的な異世界転生ものでいう「異世界」というのはたいていの場合、序盤で「非日常」から「日常」に切り替わるということです。ストーリーの構造上、そうしないと次のエピソードが紡げません。


 どう切り替わるのかと言えば様々ですが、一番あっさりしたもので「夢にまで見た異世界! 俺はここで暮らすことに決めた!」と主人公に言ってもらえればそれで終わりです。


 まとめると、必ず物語では、物理的もしくは精神的に「行って、解決して、戻る」を繰り返しているんですよね。


 そう思うと、異世界転生というのは「プロットを極限までシンプルにした状態」なのかもしれません。シンプルだからこそ、そこから味付けする要素が多彩で、こんなにも人気を博しているのではと思って見たり。


 ちなみに今僕が書いている『そのまま私に銃口を向けて、引き金をひいてください! -不死身の魔女と魔導銃-』では、もうすっかり異世界に馴染んでいるところから開始して、どこかで回想でも挟もうかというくらいです。

 転生による物語の立ち上がりではなく、ほかの部分で描きたいと思ったけど、ただ異世界の要素は欲しかった、というわがままですね、すみません。


 ここまで書いて思ったのですが、小説を書くこと自体が、異世界への素敵な卓上旅行です。

 創作からは逃れられません。こんな時間泥棒なことなぜ好き好んでやっているのだろう。そう思っても、作りたいが先行することってありますよね?


 しょうがないですよ。違う世界に行ってるんですから。

 中毒的な魅力があるに決まっています。


 話が逸れましたが、他愛もないエッセイをお読みいただきありがとうございます。


 物語は全て「異世界転生」である。

 ただ「もどって来なければ」ならない。


 なんとなく、伝わっていれば幸いです。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] >物語は全て「異世界転生」である。  ただ「もどって来なければ」ならない この原則は、古典から存在しますよね。生きて帰って、その間のことで成長する。そのことを改めて考えるきっかけを作っ…
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