エピローグ3~星美町はどこ?~
「ふぅ。」
新幹線と電車、バスと乗り継いでやっと星美町まできた。主要都市からはそう離れてはいないものの、車が無いとなると電車やバスの本数が少なすぎて、早朝に家を出たのに気がつけばお昼もとっくに過ぎた頃になっていた。
「うーん。多分このバス停で降りて、まーっすぐずっと行けば星美町に着くんだと思うのだけど。」
4月。春といえど重たい荷物をもって歩いていると額に汗が滲む。
昔住んでいたとはいえ、小学生に上がる年にそれまで売れてなかったパパが東京のオーケストラの指揮者に抜擢されたのをきっかけに町を家族で離れてから10年余り、おばあちゃんとママが喧嘩してたのもあって一度も帰省したことがないのだから、道がわからなくなってても仕方ないと思う。
「はぁ、荷物重たいし。今頃二人はパリかぁ。あーあ。こんなことならママを押しきってでも一緒に行けばよかったかな。」
と、道に座り込み空を見上げながらため息をついていると、ふと森に入っていく脇道が見えた。
あれ?あの道、、見覚えがある。
「あ!確かあそこを通っていけばおばあちゃんの家の横の裏山にでる…はず!近道しちゃおーうっと!」
我ながらよく覚えていた!とウキウキ森にはいっていった。
____30分頃
私は、道に迷っていた。
「うそ。もー!なんで?確かここをこういったらつくはずだったのに。」
もう足も疲れてヘトヘト。自分の方向音痴にうんざりしながらとぼとぼ歩いていたら私はいつの間にか崖の横の道端を通っていることも、道のぬかるみにも気づかず、その時足を滑らせてしまった。
「きゃっ!」
ドサッザザザザッ
枯れ草とぬかるんだ土で滑りやすくなった山道。
バキバキッ
とっさにそばにあった木の枝に捕まろうとしたがすぐ折れてしまった。
「ああ、私このまま崖下に転落して死ぬんだ。
私の人生短かかったなぁ。こんなことになってパパとママ恨んでやるぅう」
なんて足を滑らせて落ちそうになるまでの数秒間にあれこれ考えて諦めてしまった私の腕を、誰かがグイっと勢いよく掴んで引っ張った。
「へっ?」
その後も私の体は尻餅をつくこともなく、フワッと優しく誰かに支えられた。
気がつくと誰かの腕の中。
こんなに優しく抱き抱えられるなんて転んで得しちゃった?
なーんて能天気なことを考えいた私の目の前に、黒い服を着た男の人が私を見下ろして立っていた
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