日記より
入らないようにと言われ続けている夜の校舎に3枚の"効力ありげなお札"を探しに来た12人の中学生。
今、彼らはなんやかんやでピンチになっている。
まず、開始数分で不良3人組が迷子。
さらに、今回の肝試しの提案者であるトマト氏(13才)が音楽室で超常現象により死亡。
前者は良いとして、トマトの死はメンバーに不安を与えている。
そんな感じな8人は、音楽室で今後について話し合っていた。
「とりあえずこの校舎から出たいんだけど、皆はどう思う?」
話し合いの口火を切ったのはしゅんやだった。
しゅんやの提案に対して反論は無かった。……が
「あの迷子3人組どうする?」
忘れていなかったのか力が忘れられても良かった人達のことを話しだす。
「ほら、あの……あいつらもクラスメートだしさ。このまま俺達が帰ったらあいつら絶対に続けるだろうし。だから誰かが一応言っておいた方が良いと思うんだが……」
「ああそうだな。帰るついでにあいつらも連れて帰るか」
一同の空気が力の意見に流れようとした時。
「だったらメールで良いんじゃ……」
双子の妹、ノノがぼそっと愚痴のように言葉を漏らす。
誰もが皆、内心わかっていた。
でも、それをしてしまうと困る奴が居るんだ! 特にこの提案をした奴とかが!
だから、今だけでもいいのでご慈悲を……
「さすが、ノノその手があったとはね! 私が携帯持ってるからメールするわ!」
そんな都合良くいくわけ無かった。
見事な双子の姉のモモのアシストで力の企みが阻止されたところで、モモが携帯電話をかばんから取り出す。
モモが携帯電話の画面を見るとモモの顔が硬直した。
「あっ……私、ノノしかメアド登録してなかったわ……」
「私もモモしか登録してないです!」
ダメな双子の手によって阻止された企みは、ダメな双子の手によって実行することになった。
双子にとってメアドを登録するのに値するのは、妹(姉)だけである。
暗い廊下を歩く中、一人明らかにスタミナ切れな人が居る。
そいつの名前は、昇児。
授業を受けた日数が毎年ギリギリなことでクラスを越えて、学校中で有名な人物である。(特に去年は風邪を引いたのもあってあと3日でも休んだらいろいろと危なかったらしい。)
引きこもりな昇児が学校に来ない理由が引きこもりだからである。
彼はいじめられていたということは一度も無く、逆に大人気なほどである。
彼が学校に来なくなったのはつい最近で、村にインターネット回線が快適に繋がるようになってからである。
インターネットが繋がるようになり、彼はゲームの世界で才能を開花させた。
そうして彼はゲームの世界にのめり込んでいく。
そして、このざまである。
「やべー。疲れたー。Bダッシュしすぎたかもねー」
倒れこむ昇児。その彼の体は汗だらけである。
「Bダッシュってまだ十字キーを押したぐらいでしかなんだけどなー」
「そうだよ。家の中でずっとゲームしてるからそんなにスタミナが無くなるんだよ。」
「いや、でもゲームしてても疲れることはあるし、スタミナもいるんだよ。」
「そうなのかは知らないけど、せめてその酷いスタミナはどうにかしないと説得力はないよ」
クラスメートの指摘に反論する昇児だったが、あえなく撃沈。
「でも、あとは帰るだけだしもう少し頑張ろうぜ!」
「そ、そうだね……」
まだまだ元気なクラスメートに励まされ歩き始める昇児。
そしてまた、倒れこむ昇児だった。
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他のメンバーからはぐれた不良3人組は、図書室で"効力がありげなお札"を探す中で隠し部屋を見つけた。
その図書室の隠し部屋で、謎の日記を見つけた3人。
「じゃあこの日記を読んでみるね。」
芽生から手渡された古い日記を開く真奈。
「音読はしなくても良いから」
「えっ!? ダメなの?」
「ああダメだ。お前の音読は聞くと気分が悪くなるからな。あれだ! ごうだくんと一緒の類だと思う。」
真奈の音読を止めたのは、この3人組で唯一まとも(自称)である優花。
「じゃあ見ますか」
3人は真奈の持つ日記を読み始めた。
その日記の筆者は、昔のこの学校の教師みたいだった。
そして気になる内容は、彼が赴任してから数年経ち仕事に慣れてきた頃に書かれたものだった。
3人は日記を読み終えると、それぞれがその内容にショックを受けていた。
「そんな……」
「誰かにメールで伝えないと!」
3人は焦ったように動き出す。
それぞれが自分が今、何をしたら良いかわかっているようなムダのない動きで合流するための準備をする。
その姿は、長年のコンビネーションを感じさせた。
「誰かに携帯繋がった?」
真奈の問いかけに携帯電話で他のメンバーに電話をかけている芽生が答える。
「さっきから、やってるけどどこにもつながらない!」
「やっぱり、もう手遅れなの……?」
そう言って机の上に投げられた携帯電話には圏外と映っていた。
その端末を見た優花が芽生に一言。
「その端末って確か壊れたんじゃ無かったっけ?」
「……。ホントだ。」
「おい!」
ツッコまれた芽生がかばんを漁ると、壊れてない今、使っている端末が出てきた。
「じゃあ、これ使ってトオルくんにでも電話するね」
「わかった」
芽生が電話をかけるために隠し部屋から離れていく。
机の上に置かれた日記の開かれたページには"美味しいバームクーヘンの焼き方"と書かれていた。
こんにちは蛙です。
今回も、そして初めて読んで頂いた方も読んでいただきありがとうございます。
今回は、今まであまり喋っていない人達がメインでした。
今回だけでは、ぜんぜんわからないとは思いますが、いろんなキャラクターを好きなってほしいですが、私の好きなキャラクターは、トマト1強だったりします。(トマトが1番わからないって? 知りませんな!)
これからも読んでいただければ嬉しいです。