1章「ハジマリ」
この学校は歴史が非常に長く、姿形をところどころ変えながらも結構な昔から多くの子ども達に勉強を教えていたらしい。
この村の大人のほとんどがこの学校の卒業生だ。
廃校になることが決まった時は、多くの村人が歴史の呆れるほど長いこの学校を廃校にすることに対して反対すると役場の人達は思っていたらしいが、実際には、懐かしむ声はあれど反対意見はほとんど無かった。
更には、取り壊しについての説明をした時でさえ、反対する人はほとんどいなかった。
ここまでの歴史があって反対しないことを不思議に思い役場の担当者が、村人に話を聞くと
「あの学校にはぁぁぁ、思い出がたくさんあるがぁ、そぉれ以上にぃぃぃ悪ぅぅい噂がぁいつまでもぉぉ無くならないぃぃぃ。だから、お前もぉぉ気をつけるのが良いぃぃぃぃ!」
体中が緑色でしっぽの生えているっぽい村人Cが去っていくのを、ラスボス感ヤバイと思いながら見る役人。
「あれって……何? まあ良いか」
余談だが、彼はあの後似た感じの村人Aと村人Cの二人に飲みに誘われて、記憶を少し改変されたらしい。
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「お、おーい……やっぱり引き返したり……しないよな? ほら! こんなに真っ暗だしさ。それに村のジジイ達もよく口を揃えて夜に校舎の中に近づいたり入ったりするな! って言ってるしさ! やっぱり帰ろーぜー……」
真っ暗な廊下に不良3人組のリーダー格である真奈の声が響く。
彼女は普段は気が短く、昔といっても小6まで空手していたことでとても強気だが、お化けなどの物理系ダメージの通らなそうな物が苦手というよりアレルギーな一面を持っている。
「真奈、せっかく来たんだしもう少し楽しもうよ! ほら。」
その声とともに真奈の右肩が叩かれたので、真奈が振り向くと、下から懐中電灯で顔を照らす優香がいた。
「いーやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ヤーメーテー!」
クラウチングスタートを切り走りだす真奈
「お、おい! ちょっと待てって!」
それを追いかけ走り出す優香
「二人共ちょっと待って!」
走り始めた二人を見て、ちゃっかりトマトから予備の地図を貰い追いかける芽生
3人の影は、廊下の暗闇に溶けていくが、足音と(主に一人の)悲鳴が廊下に響く。
不良女子3人組が走り去り、残された私達は暗闇の中を歩いて行く。
「あれ? あいつらは放っとくの?」
「トマトマトマット(大丈夫でしょ。一応地図は渡したし)」
「そうか……。大丈夫かな」
トマト(しゅんや)とトオルが何気ない会話をしながら、廊下を進む。
「モモ、あの噂どう思う?」
「噂ってあの村の大人達で有名な、夜の校舎は呪われてるっていうアレ?」
「それ」
「あの噂ってなんで長い間信じられてるんだろう? 信じるにしては曖昧な噂だし」
「もしかしたら、昔になんかあったりしてね♪」
私達の不吉な会話を気にも留めずに一行は進んでいく。
暗い廊下を真奈が全力疾走する。
その後ろを優香がつける。
「こーわーいー!」
「おい! ちょっと待てって真奈!」
「いーやーだー。こーわーい」
走り回る真奈をやっと追いついた優香が捕まえる。
「落ち着けって真奈! 驚かせてすまんと思ってるけど、そこまで怖がることはないだろ!」
捕まりながらもジタバタする真奈
「ヤーメーテー離してー酷いことする気でしょ? エロ同人みたいに!」
「おい! お前なんて言った?」
ここで芽生が到着し、
「酷いことなら、私がしましょうか? 百合もイケます! って言うよりそっち系です!」
「お前は、話を広げるな!」
カオスになる。
「なあ? お前って不良なんだろ? タバコって言って駄菓子食べてたり、定期テスト前になると真面目に勉強してそれなりな点数をとったりしてるけど。不良ならもうちょっとカッコつけてみろよ!」
優香の一喝に正気を取り戻した真奈
彼女を取り囲み和む他2人
「しっかし、誰かのせいで今、私達がどこにいるのかさっぱりわからないな!」
「ごめん……」
罪の在り処を問う優香に問われて小さくなる真奈。二人の掛け合いを楽しそうにみる芽生
「あっ言い忘れてましたが、私がトマトから地図の予備貰ってきたので安心してね! まあ何があろうと必ず二人を連れ出して見せるから。ホントニナニヲシテデモネ……」
「最後の片言が怖いかな……。あと、何をしてでもって何をする気ですか? でも地図ありがとね」
芽生の怪しい発言に驚きながらも地図を広げて、懐中電灯で照らしてみる3人組……が、
「白紙じゃねーかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
芽生がかばんから取り出した紙は真っ白い紙だった。
ひっくり返して見るが、白紙。何故か持ってたライターで炙って見るが出火。(すぐに持ってたミネラルなウォーターで消火した)
「ああ。ごめんなさい。本物はこれでした。」
そう言って芽生が広げた紙には校舎内の地図とどこに効力がありげなお札を隠したのかが書いてあった。
「多分、私達は今ここだからあそこに行くのが良いかな」
脱迷子な不良3人組は真っ暗な廊下の中を歩き出した。
「1回ここでセーブポイント作っときません? 疲れました。」
誰も昇児の話に耳を傾けること無く進んでいく。
「トマットマトマ(もうじきお札のある部屋だね)」
暗い廊下を歩いてきた一同の顔が明るくなる。
夜の校舎に入ってからは誰か達が走り去ったり、どこかのゲーマーがスタミナ切れ起こしたりと紆余曲折あり優に30分は過ぎていた。
一同の中には「やっと1枚目か!」や「あの3人組も無事に1枚を見つけられたかなー」などの声が聞こえてくる。
「この道順だと理科室か音楽室がこの先にあるよな? ってことは、どっちかにお札が隠してあるんだろ?」
何かを思い出したかのようにしゅんやがトマトに話しかける。
「トマトマ」
「ああ、音楽室ってピアノがどーとかって噂があるよなーって」
「トマトマトッマト」
「そうだな。この学校ではそんなにこの噂有名じゃないもんな。それで、どっちに行くんだ?」
「トマトマト」
そこそこ続く会話に一同の我慢が爆発する。
「わかんねーよ!」
一同同時のツッコミが飛んでくる。
普段ならしゅんやがトマトの通訳をするのだが、通訳が仕事を放棄すると誰もトマトの話が理解できない。
「……でどこに行くの?」
「ああ。音楽室に行くんだと」
「それにしてもお前から質問なんて珍しいな、変なこと起きたりして……」
力の一言で暗闇でメンタルが地味にきてる一同の空気が凍りつく。
「おっ! もう音楽室に着いたんじゃないかな?」
蒼馬の言葉で一同の士気が上がり、足早になっていく。
そして、音楽室のドアの前にトマトを中心にして立ち止まる。
「トマトマトマット(じゃあ鍵を使ってドアを開けるね)」
トマトは最近やってきたばかりで噂を知らない新人音楽教師から借りた音楽室の鍵を鍵穴に差し入れる。
「トマ……ト…!?(開い……てる…!?)」
トマトは怪しいと思いながらもドアを開ける。
ドアの向こうには、一台のピアノとそれを半ば囲む机とイスがある。
「で、どこにあるんだ?」
「トマトマトトマトマト(確かピアノの上辺りにわかりやすく置いてあるはずだよ)」
トマトがピアノを指差すとその先に禍々しいお札が置いてあった。
「おい……これって大丈夫なのか?」
「トマトマ(大丈夫大丈夫)」
ピアノの上に置かれたお札をトオルが取る。
その刹那、音楽室の窓が一斉に開き、突風が一同の不安を増大させるかのように吹き荒ぶ。
「止んだか……?」
「ん……? 病んだか……?」
「うん。止んだ。」
「そうか、病んだか。」
「お前らバカな会話をやめろ。」
お札を無事得た一同は、音楽室を出て行く。
最後の一人、トマトだけになるとトマトは立ち止まり
「トマトマトマット(ちょっと窓閉めてから出るから地図とお札を持っといて)」
トマトはすでに廊下に出ているしゅんやに、地図とお札を渡すと音楽室に戻っていく。
――バタンッ
まるで獲物を待っていたかのように、音楽室のドアが急に閉まる。
「お、おい! トマト大丈夫かー!」
一同がトマトの名前を呼ぶ。
「トマトマー」
返事だと思われるトマトの声が音楽室から聞こえる。
観客する一同。
しゅんやが急いでドアを開けようとするが開かない。
ドンッ!ドンッ!
しゅんやは音楽室のドアを必死に叩くがびくともしない。
――しかし、唐突にドアが開く。
そこには、赤く月に照らされる塊と音楽室を覆う赤い液体があった。
こんにちは、蛙です。
ホラーな1話目です。
今回はホラー要素は全然無かったと思いますが、だんだんと増えてくる予定にしてます。
ホラーと言ったらいろんな分岐があっても良いかなと思うので、こいつにはこの死を! みたいなリクエストがもしあれば感想の方にでも書いていただければと思います。
なかなか更新ができないかも知れないですが、ちゃんとやってくので今後も読んでいただければ良いなと思う今日このごろでした。