ある兵士の奮闘その2
今年もよろしくお願いしますm(。-ω-。)m
ネズミの死骸を村の外に穴を掘って入れ燃やし、屋根や壁にあいた穴を塞いでいると、リーダーから呼び出された。村民もだ。村長宅の前の少し開けた場所に集まった。
「他には重傷者はいないな?」
皆、黙って頷く。それを見て、リーダーはゆっくりと頷いた。
「我々は騎士ではない。この村の傍のモルトハウス伯爵領の兵士だ。たまたま呼びに来た男が、慌てて間違えてこちらに来たのだろう。伯爵様は特に咎めるつもりはない。我々が手を貸したことも、緊急事態だときちんと対応するようにと仰られた」
この短時間で、伯爵様に話が出来たらしい。
「そこの二人。この薬は伯爵家が譲り受けたものだが、試供品とやらで、まだ使われたことがあまり無い薬だ。それでも良いなら使うがいい」
「は、はい」
母親は、直ぐに薬を受け取り子供に飲ませたが、女は躊躇っていた。リーダーの発言の後に、躊躇わない母親は、子供の怪我が酷かったからにすぎない。
皆が子供と母親を注視していると、ゆっくりと薬を飲み込んでいく。一瓶飲み干すと、キラーンと子供が光った。
「……母ちゃん?」
「ロッド?ローッド!」
母親は目を開けた子供を何も不思議がらずに抱き締めて泣いていたが、まわりは違った。
何しろ、子供には傷一つなかったのだ。
もう一人の女は、慌てて男に薬を飲ませた。男もキラーンと光った後、傷一つない姿を見せた。村民はどよめいていた。
あれ、これ大丈夫なのか?
俺たちの視線に気付いたのか、リーダーはゆっくりと頷く。
「しばらくこの広場は立ち入り禁止だ。伯爵様から連絡を受けた王都から色々な役人が転移して来る。ぶつかった拍子に薬瓶でも割ったら大事だ」
おおっと村民がまたざわめく。対処してくれるということに、ホッとしたのだろう。
俺たちが杭を打ちロープを渡すと、途端に広場に魔法陣が浮かび上がった。慌ててその外に出て、光が収まるのを待つと、伯爵様と――あれ?お嬢様の婚約者のアルフ様と、妹様のミア様?他には――俺の見間違いじゃあなければ、騎士が二十人前後。魔法使いぽい人。あと一人は、お偉いさんっぽい?
「村長はいるか?」
「は、はい!ここに」
転びそうになりながらも出てきた村長は、平身低頭だ。
「そうだな。村民も皆、集めてもらおうか。それから説明した方がいいな」
「は、はい!」
ほとんどの村民は広場を遠巻きに眺めていたので、村長が目配せをすれば直ぐに数名が駆け出した。
戻って来ると、ヨボヨボの婆さんや爺さんが数人。何か大丈夫だろうか?
「ああ。病人はいいと言えば良かったな。まあ、薬を先に配ってくれ」
「はい」
ミア様が袋からジャンジャン薬瓶を出していく。後ろにまわせ、と指示を出せば村民皆に行き渡った。あ、俺たちもか。
「薬の効果は知っているな?ネズミが運ぶ病があるそうだ。取り敢えず皆がそれにかかっている可能性がある。ここで薬を飲み、皆が治れば他に移すことがなくなる。皆飲むように」
なるほど。でもこれ、効き目が良すぎるんだけど、いいのか?
あちこちでキラーンと光る。多分俺も光った。で、何でか時折痛む古傷がない。ひきつれたような傷痕もない。
中には泣いている者もいて、昔傷つけて失った指があるって言っている。
「ここからは大事な話だ」
村民が静かになった。




