『あな恋』の少女その4
お久しぶりです。ほぼ読み専と化していました。すみません( ̄▽ ̄;)
こんなの、おかしいわ。
上目遣いでちょっと褒めただけで、コロっといっていた奴らが最近婚約者と仲が良いのよ。
彼女は俺の気持ちをわかってくれないって言ってたの、ちょっと前じゃない!
攻略対象者との逢瀬がなかなかうまくいかないから、自分の実力を見定めようと粉をかけたら、あんなに簡単に尻尾を振ってきたくせに。
ま、あたしに魅力があるのは分かったし。そろそろ本格的に動き出さないとヤバいから――
「痛っ!」
「うわっ!なんなんだお前!」
廊下で出会い頭にぶつかって跳ね返されたわ。なに、この小デブ。
「どこに目をつけているんだ!避けられないくせに廊下を走るな!」
「そっちだって避けられていないじゃない!」
「なんだと!」
あたしと小デブが言い合っていると、周りに人が増えてきた。ん?なに?コイツ侯爵家の跡取りなの?ヒソヒソ声を拾おうと耳を澄ませば、そんな情報が聞こえてきた。
―――侯爵家か。私は養女だし、しょうがないなぁ。
「――申し訳ありません」
「分かればいい」
でもね。あな恋にこんなキャラいた?侯爵家の跡取りでしょ?隠しキャラにしては小デブだし。
「……ふぅん」
「?何ですか?」
「なかなか可愛い顔をしているな」
あら。正直者ね。だって私、ヒロインだもん。可愛いに決まっているわ。
「……この際、お前でもいいか」
「は?」
でもとはなによ、でもって。
「お前、名前は?」
「……モモ。モモ・リーコックよ」
「リーコック侯爵?娘がいたのか?」
「養女になったの。回復魔法が使えるから」
ふふん。私は私の実力でここまで来たのよ。
「養女と言うなら、元の身分はもっと下か」
「はぁ?」
なんて失礼なヤツなの!
見目も良くないし!……あれ?痩せたらそこそこいいんじゃない?
侯爵家だし、なくはないわ。女性の扱い方は、後でトコトン教えるしかないだろうけどね。
本当はディラン王子かザックリーが良かったんだけどね。ザックリーもライトフット公爵家の跡継ぎだし。
ただ、どちらともストーリーが進められないのよ。そもそも出会いのシーンすら起こせてない。
なら、コレもあり……なのかしら?う~ん。
「しかし、回復魔法か……」
「国内では珍しいからって、大事にされてるわ」
「まあ、そうだろうな」
腕を組んで考え始めたわ。回復魔法の使い手は、引く手あまただものね。
あの男爵家がおかしいのよ。
「……リーコック侯爵家、だったな」
「ええ」
「ふむ。分かった」
じゃあな、と軽く手を挙げ去っていく小デブ。やっぱり、痩せないと格好つかないわ。
まあ、痩せさせるか。そうすれば隣に居ても問題ないし、身分はいいし。うん、そうね。取り敢えず、それで様子見かしら?
なんて思っていたら、侯爵家に連絡が来たらしく、出会ってから十日しないうちに私はあの小デブ――アーネストのフィアンセになっていた。




