一年生その4
お母様とコメットさんが忙しくも楽しそうに料理三昧な日々を過ごしています。
なんでも、元王女様からのリクエストだそうで、全部で三十種類近くも納品するそうです。
……やっぱり焼肉は入っているんですね。あ、カレーもある。
「レシピは付けないみたいなのよ」
「それじゃあ、度々依頼があるんじゃない?」
「どうかしら?料理は出来るそうよ。調味料も一緒に届けるみたいだから、そんなに頻繁にはないんじゃないかしら?」
う~ん、どうかなぁ。
お母様は普通の貴族夫人とは違うので。たいていの夫人は調理場に入らないそうですから、試行錯誤出来ないってことですよね。レシピ、欲しがると思います。これは、ムーニー男爵の次男さんに嫁いだ元聖女さんがあれこれ試してレシピを作り上げるしかないのでしょうけど、それって外国に流出させたら多分駄目だと思うんです。やっぱり、コンスタントにお願いされそうですよね。
神様の供物と同じ物をいくつか保管しておいて、月にいくつか送るようにした方がいいんじゃないかな、と思います。
思うのですが、私は今餃子を包むのに忙しいので喋れません。ちまちまちまちま。
「ミアちゃんも手際がよくなったわよね」
「学校に行くまで、毎日やってたものね」
「料理、楽しいから」
ちまちまちまちま。
春巻を巻くのも楽しいです。無心になっているのって、いいですよね。
今日は中華ばかりつくっています。そろそろマンゴープリンと杏仁豆腐が固まったころでしょうか。ごま団子はすでに揚げてあります。
「あれ?麻婆豆腐がリクエストにないみたいよ」
「ま、おまけで入れておきましょ」
……なんだか、お母様とコメットさんがうきうきしすぎて、色々作りすぎな気もしますが、私はシュウマイと肉まんとあんまんで忙しいので気にしないことにしましょう。うん。
「他に何かないかしら?」
「そうねぇ」
「お餅と餡を入れてあげたら?」
「お汁粉ね。ああ、じゃあ甘酒も入れておきましょうか」
「今回はこれくらいでいいんじゃない?」
コメットさんが言う通り、私もこれくらいでいいと思います。というか、これ以上は魔道具に入りません。
一日がかりで作ったので、へとへとです。
「そうね、40前後?欲しいって言われていたものは入れてあるし、いいわよね」
サービスしすぎな気がしますけど。
ついでに私とお兄様の学園での軽食やおやつとして、魔道具に入れていきます。コッペパンは多めに、と。
「そう言えば、ムーニー男爵の次男さんに嫁いだ元聖女さん、あまり調味料を買っていないわよね」
「……それって、メシマズなんじゃあ」
「来月も大量生産になるのかしらね?」
「カレー粉とか麻婆の素とか作れたらいいんだけどね」
「宰相からNGが出るわよね」
何とかの素は、まだまだ販売できそうにありません。




