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出番ですか?  作者: 五月女ハギ
学園生活開始
88/96

『あな恋』の少女その3

 一ヶ月。

 入学式から一ヶ月たったのに、未だにディラン達の誰ともまともに話せていない。

 女子からは相変わらずぶつかられるいじめを受けているけど、ディラン達との仲が発展しないことには、話を進めようがない。

 そうこうしていると、男爵家から週末に来いと連絡が来た。


「……これで全員揃ったな」


 え?何?

 なんで男爵じゃない人が偉そうなの?


「モモ!静かに!」


 え?どうしたのよ、お父さん。


「ほう。私が男爵ではないと?」

「え?だって男爵はそこの人でしょ」


 私が指さしたのは、男爵領でいつも会っていた男爵だ。お父さんと色々話して計画だって練っていたんだから、見忘れるわけないわ。


「あれは私の弟で、私が王都で社交や仕事をして、男爵領のことを任せていたのだよ」

「え?じゃあ私の養父って?」

「私だが、そのことで今日は話がある」


 心なしかお父さんも、男爵の弟も項垂れているみたい。え?なんで?


「君たちの不正が発覚してね。もう弟には領地を任せられないから、次男を領地に呼び寄せることにしたよ」

「はあ?不正?」

「魔力検査会でのことだよ。教会の人間が検査内容を偽って報告していたことが分かった」


 魔力検査会って、あのどっかの商人の子が私よりも魔力があるって光ったあれね。

 ヒロインの私がかすむようなモブなんて要らないわよ。


「彼女が稀有な属性や魔力量でね。それが他領に流出したのは手痛い」

「そんなの、私の回復に比べたらなんてことないわ」

「……君程度ならそこまで希少でもないんだよ」


 この男!私がディランやザックリーやジョシア、ブレントと結婚したら絶対に許さない!!たかだか男爵じゃない。

 でも、そうね。それだとケントは攻略から外さないと駄目ね。

 デリックは国が違うし、こっちも除外かなぁ。


「すでに支払っている今年度分の学園の費用は、こちらの勉強代と思うことにしよう。来年度からはムーニーの者ではない。費用が支払えないのならば、学園を去るように」

「そんな!」


 だって、私がヒロインなのよ?希少な回復魔法の持ち主なのよ?

 私が男爵を睨んでいると、ノックの後に男爵が許可を出し、一組の若い男女が入ってきた。


「君とは違い、すでに男爵領で回復魔法を使ってもらっている」

「……あなたが回復魔法の使い手?全然魔力もないみたいだけど」

「なっ」

「まるで努力していないのね。赤く光らせたのなら、今頃もっと魔力量が高いはずよ」


 何なのよこの女!

 私が思わず右手を振り上げると、隣の男が私の手首を掴んだ。


「いたっ」

「彼女に手を出すと、国際問題になるかもしれないんでね。なにしろオアーゼ王国パトリツィア王女と共に聖女の一人だったしね」

「……聖女?」

「まあ、私はパトリツィア様みたいに、御伽噺レベルの回復魔法なんて使えませんけど」

「それでも魔物退治をする部隊からの人気は凄かったじゃないか」


 オアーゼ王国?パトリツィア王女?なにそれ。聖女って他の国でもそういう存在がいるの?


「……君はあまり勉強もしていないようだね。なんのための積立金だと思っていたのか。領民がためていたものを使っているというのに、ありがたがることもないしな」

「何言ってるのよ!そんなの、あとで国からお金がもらえるって知ってるのよ?ちょっとの間だけ立て替えるだけのくせに、恩着せがましいわ」


 私は席を立つとお父さんを連れて男爵家をあとにした。


 男爵の弟だという男とその一家は、家からも領地からも立ち退かされたらしいけど、そんなの私のせいじゃないし、もうどうでもいいわ。

 問題は、来年度からのことだけど、これはお父さんが素早かった。

 ある侯爵家と上手く話をつけて、今度は養女とはいえ侯爵令嬢になったのよ。

 あんな男爵たちなんて、いつでもつぶせるんだから。

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