一年生その2
随分と間が開いてしまってすいません(;^_^A
暑さにだらけていたら、冬がすぐそばに。
皆さんごきげんほう。コホン。ごきげんにょ……。
ええと、入学式から半月ほど経ちました。
カトリーナ様をはじめ、色々と施された淑女教育が日をおうごとに剥がれ落ちていきます。
何故かと言えば、ヒロインさんのせいです。いえ、それだけではありませんが……。
みんな手をあててうふふと笑っている横を走り抜け━━きれずに転んで人にあたったり。廊下の角からご令嬢ではありえない早さで直角に曲がってきてぶつかったり。
巻き込まれた方は何人か転ばされました。屋外で転んだ方は足が小石や砂利で傷だらけになり、みかねて回復魔法をかけました。
擦り傷なので大したことないのですが、きちんとした魔法でないと痕が残りそうですし、裕福ではない貴族家や奨学生はお金が支払えないなどの問題があったみたいです。
それから挨拶を受けるのですが、奨学生は「おはようございます」と言い慣れた挨拶ですので、そこでごきげんようとは言いづらく「おはよう」と返したりするうちに、魔法をかけていない奨学生にも挨拶されて、親しみやすい伯爵令嬢となってしまいました。
それから、お兄様が学園に入る時に持ってきた魔道具の洗浄機ですけど、寮に数台寄付して備え付けています。これが自分で洗濯していた人達に評判が良く、お兄様も私も親切にしてもらっている要因みたいです。
それでも最初の頃は下着は手洗いだったらしいのですが、「袋に入れて袋ごとやればいいのに」との私の発言をお兄様が学園で広め、今ではみんな魔道具を使っているそうです。
貸衣装のドレスもこれで綺麗に出来るので、パーティを少しリラックスして楽しめるようになったとか。
ずっと挨拶が「おはよう」系では私も彼女達もためにならないので、カトリーナ様達に色々教わり、令嬢の教本を作りました。
こんな時はこんな受け答えがベターってやつですね。
最近はそれにのっとった態度で、まるでごっこ遊びみたいにお互い挨拶したり話したりしています。
上級生の奨学生も欲しいとおっしゃるので、教本を渡したところ、貴族の方にも評判が良かったです。
どなたかの侍女になる予定の方だったらしく、教本により貴族の振る舞いが分かり、ひいてはそのための侍女の行動も分かったおかげで、質が良くなったとか。
多分、私が侍女の扱いを分からないために注釈をいれていた部分が使えたのだと思います。
ええと。あれ?何の話だったでしょうか?あ、ヒロインさんですね。
そんな状況なので、令嬢としてうんぬんの前に怪我をしないように心掛けなさいと言われています。私もそれどころではないので、普通の敬語に戻っています。だって怖いんだもん。
それに、なんだかんだ言って、カトリーナ様達も私は敬語で話した方がいいって雰囲気です。
下の爵位の人に敬語を使わなければいいって感じになっています。カトリーナ様が嫌そうなのです。先日、「ミアちゃんは敬語がいいわ」としみじみと呟かれましたし。
まあ、それにしても。
「……なんて騒がしいのかしら」
バタバタと足音をたてながら廊下を歩くヒロインさんに顔をしかめる人ばかりです。
でも、足音がしなかったら怪我人はもっと多くなったと思います。私もこの音を頼りに避けています。
「誰狙いか分からないけど、好感度上げるための場所でも行き来してるのかもな」
「そんな場所あるんだ?」
実はお兄様とブレンダお姉様、それから私達で同好会を作って一部屋いただきました。簡易キッチンつきで、今日は私の収納から取り出したメロンのショートケーキといれた紅茶でゆっくりしています。
お茶会をご一緒したことのないケント様のテンションが高いです。
いえ、領民のケントさんではありません。騎士科の生徒さんです。
「うまっ。なにこれ?!」
「ショートケーキです」
「週2で食べられるとか、羨ましがられそうだな!」
喜んでいただけて良かったです。
ケント様の言葉に皆さん頷かれています。授業のあとに集まるので、お茶とスイーツになるんですけどね。週末は自宅に帰るので集まりませんし。
「う~ん。お茶会だとお菓子ばかりになりますね」
「体動かした日は、もっとガッツリ食いたいけどな」
「サンドイッチでも作りましょうか?軽食として揚げ物のサンドとか。女の子用にはフルーツサンドも作るとお茶会でも大丈夫かと」
「普通に軽食とスイーツでいいよ。毎回サンドイッチになるのもなんだし」
「そうですね。秋は美味しい食べ物が多いですから、色々試したいですし」
栗やさつま芋、葡萄にクランベリー等々。ケーキに和菓子に色々美味しくいただけます。
「それにしても。教師から注意されていないのか?あれは」
「……されていてあれなのですわ」
エルシリア様がため息交じりにおっしゃいます。
そうなんですよね。注意されていてあの慌ただしさなのです。
……まさか。昔の少女漫画のヒロインみたいに、一所懸命だけどちょっとドジな女の子を狙っている?
「とりあえず、女の子たちは接触しないようにね。難癖付けられそうだから」
ブレンダお姉様に頷きながらも、突然やってきたら避けられないなあ、とため息をつきました。




