『あな恋』の少女その2
走って行くと、視界に現れた紫色。あれって絶対ディランだわ!
「キャーどいてどいて!」
勢い余って止まれないって感じで走って近づけば、ディラン以外にもザックリーやジョシア、ブレントがいるわ。ディランとのファーストコンタクトのはずなのに、みんないるの?
「キャー危ない!………ぐえっ」
あと少しってところで何かに阻まれディラン達にたどり着けなかった。可愛くない声が出ちゃったじゃないの!
「殿下に怪我をさせる危険があったので、結界を張らせてもらったよ。君も、危ないから自分で止まれない早さで走らないように」
はあ?なによそれ!なにこのおっさん!邪魔しないでよ!
私があれこれ言われている間にディラン達が行ってしまった。あれって側にいるの、フィアンセ達かしら?私の方が可愛いわね、うふふ。
「聞いてるの?」
「あっ。入学式に遅れちゃう!」
小言なんて聞いていられないわ。
私がその場を離れようと前に足を進めると、また何かに阻まれた。ぐえっ。
「はぁ。どうやら反省していないらしいね。殿下が会場に着くまで君はここにいてもらおうかな」
「そんな?!入学式に遅刻しちゃうじゃない!」
「何をそんなに慌てていたのか知らないけどね。まだまだ入学式に参加する生徒が後ろにいっぱいいるのに、走る必要はなかったよね?君、要注意人物だから」
「へ?」
「畏れ多くも殿下に怪我をさせるところだったんだよ?謝罪もしないしね。当たり前だよね」
「謝罪なら直接ディラン王子にするわよ!」
「要注意人物を殿下に近寄らせるわけないよね」
「学園は平等な場所よ?!」
「正しくは、『学ぶものに等しい機会を与える』だよ。立場が平等なわけじゃないからね」
ああ言えばこう言う!なんなのコイツ!
私がディランと一緒になったら慌てて頭を下げにくるんでしょ!
私がおっさんに止められている横で、他の人達は式場へ向かう。本当、なんなのよ!
ようやく行けるようになったのは、ほとんど最後だったわ。
入学式は、新入生の挨拶をするディランのかっこよさに萌えた。やっぱりディラン狙いかなぁ。逆ハーとかなかったわよね?
『あな恋』を思い出していたら式が終わり、クラスに向かったけど……あれ?ディランもザックリーもジョシアもブレントもいない。奨学生のケントもいない。って、私トップクラスじゃないの?!え?この世界の勉強なんて中学生以下の問題なのよ?
そりゃ、この世界の地理や歴史は苦手だけど、それでも数学や国語は満点に近かったはず。
……もしかして、朝のおっさんが何かしたの?!
「君の試験結果だとこのクラスで間違いない」
「え?」
「まあ、他の学年だったら上のクラス並みの得点だったが、王子と同級生だからな。皆気合いが違うさ」
担任に説明を求めたら、上のクラスに入るには地理、歴史、国語、数学の総合点が足りなかったとか。四百点満点で三百二十点近く取ったのに?
「王子と数人は満点だからな」
「……それでも最低点が私より高いの?」
「今年は三百四十越えていたな」
二十点ちょっと?それで別のクラスなんてついてないわ!
「君はなあ。地理と歴史が壊滅的だったから仕方ない」
それを言われると……。まあ、まだ接点なんてどうとでもなるわ!
取り敢えず、入学式後のイベントを起こさなきゃね。
私は裏庭に駆け出した。
あれ?裏庭よね?
スチルの風景とはうってかわって人がそこそこいる。私とザックリーが二人で出会う場所ってここじゃないの?え?他にも裏庭があるの?
入学式後の裏庭イベントは、裏庭を探し出せずに終わってしまったわ。
それからも、ジョシアやケントやブレントとの出会いの場所が分からなくて、校内を探し回った。
行く場所を選択して行くゲームだったから、道順もなにもなかった。スチルの風景を求めて歩き回っても全然見つからない!
このままじゃあ、イベントを起こすもなにも、出会うことさえ難しいわ。
と、とにかく。校内を探し回るしかないわ。なるべく人気の少ない場所を回ってイベントを起こさなきゃね。
そうやって校内をあちこち移動すると、みんながぶつかってくる。
……これっていじめよね?
誰の仕業か分からないけど、ストーリーは進んでいるのよね?
よし!きっと正義感の強いザックリーが気付いて守ってくれるようになるかも?
その前になんとか接触しないとね。




