『あな恋』の少女その1
ヒロイン視点です。
私がこの世界のヒロインだと気付いたのは、三歳の時だった。
ピンクの髪なんて、『あな恋』みたいって思ったら、前世の記憶がよみがえったの。
そこからとんとん拍子にいくほど甘くなかったけど、なんとか回復魔法を身につけた。ちょっと深めの傷が消える程度だったけど、四歳になったころだったから、お父さんもびっくりしてたわ。
そこからはお父さんにも協力してもらって、男爵に会った。魔力検査でみんなに知れ渡ったら養女になることに決まったんだけど、私よりも魔力持ちが出た。まあ、司祭様がなんとかしてくれたわ。
私が赤だったのに虹色なんて、いかさましたんじゃないの?
その子は実家の商会が潰れて他の領地に引っ越していった。ま、私がいるんだからここには必要ないものね。
それからは、お父さんがちょっとポカしたりもあったけど、それくらいかしら?勉強も簡単だし、魔法も強力になっていった。
そして。とうとう『あな恋』の舞台にやって来たわ!!
そんな浮かれた気分は、すぐに冷めた。
昨日着いた寮は一階の小さな部屋だったのよ。
なに、ここ。
もっと広い部屋がないのかって聞いただけなのに、寮母には顔をしかめられた。うちが男爵家だからって、ひどいあつかいね。
「一階は、奨学生と下位貴族と決まっているんだよ。二階か三階に空きがあれば寮費は上がるが、移動できるけどね。どうする?」
値段が倍以上だったから、諦めたわ。だって、毎年の積立金で学校生活を送らないといけないから、年間使えるお金が決まっているんだもの。
かわいい髪飾りとか、色々必要だからしょうがないわね。
男爵に増額をお願いしたけど、「君の記憶と同じなんだろう」と言って、現状維持となった。確かにゲームと変えないほうがいいのかもしれないけど、贅沢もしたかったわ。
「じゃあ、そこだよ」
はぁい。
自分で荷物を運んでいると、侍女や侍従に荷物を運ばせている令嬢が目に入る。
う、うらやましくなんてないんだから。だって、私がヒロインなんだもの。
その日は荷物の整理と明日の入学式の準備でへとへとになって、さっさと寝たわ。夕食はこの世界ではまあまあ良かったわよ。
朝から寮内でも制服着用だなんて面倒くさいわね。
仕方なく着替えてから寮内の食堂に行くと、何かジロジロ見られているような?
構わずトレーにA定食とパンを2個取り、空いている窓際の景色がいいテーブルについた。
「彼女、男爵家の方でしょう?」
「一人であんなに席を使うだなんて……」
はぁ?
空いている席に座って何がいけないのよ?席なんて早いもん勝ちでしょ。
四人掛けのテーブルだったけど、昨日も今日も誰も相席しに来ないんだから、余裕があるんだし、構わないわよね。
さあ、食べ終わったら入学式に行かなきゃ。だって、ここが運命の出会いなのよ!頑張れ私。
本当は時間なんてギリギリにならないのに、ゲームに合わせて遅めに寮を出た。
まわりに人もいるけど「遅れちゃう~」って慌てて走り出した。昔の少女漫画みたいだって、ネットで書かれていたっけ。
そう、このまま走っていけば。
そこで運命がはじまるのよ!




