宰相の憂鬱━━その9
なぜ、なぜなんだ。
「いや~凄いね、これ」
オーウェンが指でつまみ、振っている瓶の中身が問題だった。
「……なぜ静かにしていないんだ?」
「しょうがないよ、あそこの家は」
「お前、これを見てもそう言えるのか?」
「え?なに?」
オーウェンが私が読んでいた手紙を見て、目を見開いた。
「ちょっ、これ、万能薬?え?欠損が戻る?」
「ドラゴンの血を使えばそうなるらしいが」
「これ、作っていいの?ねえ」
「その問い合わせだ」
薬は王城用に、それなりの数が欲しいが。しかし……。
「なんかいい方法はないのかなぁ」
「ワイバーンの素材を使ったものが試作品としてきているわけだが、これがすでにほぼ万能薬だからな」
先程、極秘に鑑定させた結果に、鑑定士自身が驚き、私に確認してきた。
鑑定士は宮廷医師でもあったため、業務中に手足を傷めた軍部の人間に投与してみたいと言い出している。
「……ワイバーンなら、あそこで手に入るよね」
「だからこそ厄介なんだ」
しかし、魅力的でもあるのは否めない。
「……腹をくくるか」
「やっぱり魅力的だよねぇ」
もし、以前のように感染症が広がるのなら、先に予防薬を魔術師に飲ませてから現地に向かわせることが出来る。これだけで色々違う。
「……極秘に進めるか」
「国民のためにもね」
真面目な声音でオーウェンが頷く。
何かある前に手を打てるのなら、多少の手間は仕方ない。




