D&D━━その8
何度目かのダンジョンの探索に、チェスター博士や従兄弟のカーティスお兄ちゃんも同行してから一月経つかどうかの時、領地に偉そうな薬師がやって来ました。
「ここには薬師がいないのだろう?俺がこの領地の薬師になってやろう」
うん、偉そうです。いらないよね?
お父さんを見上げれば、首をひねって考え中のようです。
「お、モーゼズ。やっと来たか」
「チェスター!あの薬草は本当か?!」
チェスターさんが呼んでいたという薬師さんだったらしいです。お父さんは聞いていたみたいで、ポンと手を打っています。
「簡単な薬屋は建ててありますが、確認お願い出来ますか?」
「よし、早速行こう。で、あの薬草はここの薬草であっているのかね?」
「モーゼズに送ったのはダンジョン産のだ。この国で育てられるものではないだろう」
「なるほど、ダンジョンか。それなら有り得るのか」
どうやら国内では栽培するのが難しい薬草だったようです。
そして、お父さんは歓迎するようです。領民が増えたのとダンジョンが出来たので、薬師を探していたようです。
……お弟子さんがたくさん一緒に来ていますが。ダンジョンに潜る冒険者にもポーションが必須ですから、丁度いいのかな?
領地のルールを説明しながら薬屋まで案内しましたが、お弟子さんは別の家を提供――しようとして、止められました。
「師匠は接客に向きませんから」
うん、はい。この短時間で納得の理由です。お弟子さんが薬屋を運営することになっているそうです。お願いします。
「空いている家は、こことそれから――」
お父さんが地図を片手に説明しています。みんな師匠さんの家から少し離れた物件を選んでいるのは気のせい?
「ダンジョンにはワイバーンがいるんだったな?あと何か薬の材料になりそうなのはいるのか?」
「魔物はそれほど変わったのはいなかったはずだな」
「うむ。なら、薬草くらいか。魔力水も湧いていないのだろう?」
「魔力水?」
「師匠が勝手にそう呼んでいる湧き水です。魔力が普通の湧き水よりも含まれていて、薬の効能が上がります」
お弟子さんが教えてくれました。
ん?魔力?って、あれは魔力100%の液体だけどどうかな?今度行ったときに持って帰ってみようっと。
「なんだこれは!!」
ダンジョン側に作った、ダンジョンの魔力を液体化させてダンジョンに戻す、あそこの液体を持って帰って来た結果、モーゼズさんに奪われました。
お弟子さんが止めてくれるかと思ったら、モーゼズさんと一緒に議論を始めてしまいました。うん、もう誰も話を聞かなさそう。
「一人一瓶あるけどいらないのかな」
「な~にぃ!」
お弟子さん全員が振り返り、テーブルの上の袋の中を見て、我先にと瓶を取っていきます。
「使えそうですか」
「とりあえず作ってみるか。おい、お前ら!自分の得意な薬を作ってこい!」
「はい!!」
ちょっと怖いです。
「あとで確認しますからね!」
お兄ちゃんの声は聞こえていない気がします。
さて。結果発表です。
結論。効能が上がる。上がり過ぎてワンランク上の性能になる。
これって要報告ですよね?ウチだけではどうにもならないヤツです。
病気回復用のポーションが、万能薬に近いっておかしくないですか?ほぼ回復するって、残り自然治癒力で賄えたら治るってことです。9割に近い回復力とか、どうなんでしょう。
怪我用のポーションは、欠損が修復されることはないけれど、切れた箇所が綺麗になって、腐敗したりしないらしいです。
状態異常を治すポーションは、かかった呪いを跳ね返せるレベルだとか。
どれも鑑定結果なので、実際に使ったわけではないのですが。
「あとはドラゴンの血があれば欠損も治せるし、それぞれ予防薬にもなるはずなんだが……」
ありますよ、ドラゴンの血。でも、言ったら駄目ですよね?ちらりとお父さんを見れば、作り笑いをしていた。うん、駄目です。
ワイバーンでも駄目かなぁ。あ、これはもう丸投げですね。うん、変なこと考えてごめんなさい。




