D&D━━その6
お兄ちゃんが学園に戻る前に、領地に十二人の文官がやって来ました。その内の一人はチェスター博士の息子さんです。
他の人は現役引退した方だそうですが、奥様を連れての移住になっています。
温暖で食べ物の美味しい土地を喜んでくれているようです。
更に、継げる領地のない次男三男の方達のうち、使い物になる方を紹介してくれ、その方達の教育もしてくれています。
武官も十人移住して来ました。
さらに、軍や騎士団に入れたものの、上についた使えない貴族に潰された方達も連れてきました。つまり、腕がたつ。
それから、元冒険者の領民が訓練を受け、ダンジョンの浅い階層に入る予定です。
ダンジョンがあるのを知って血が騒ぐらしいんです。美味しいものがとれますし、危険なことをしないのならいいか、という流れになっています。
魔物が溢れなくて済みますし、彼らが臨時収入を得るチャンスでもあります。
臨時収入となるべく、買い取りをする冒険者ギルドの建物も立派なのをダンジョン付近の村に作りました。
他には国からの兵士たちを受け入れる宿泊所や飲み屋。食堂などなど。
女の人の斡旋はありません。そんなの、王都に戻るまで我慢しろ、と言うことです。
花街とかいらないんです。
それから、冒険者から打診があり、ダンジョンの側でいいから移住したいと言われています。
料理したい女の人と、ダンジョンに潜りたい男の人━━どうやら夫婦になるつもりの二人です。他にも、パーティー単位での希望者がいて、ケントさん経由での打診もいくつかあり、ダンジョン村が作れそうです。
他にも、コメットさんの旦那さんテリーさんの元勤めていたチーズ工房の同僚さんが三人移住して来ました。
さすがに領民が増えたので、一人であれもこれも作るのは大変なので、当てがないか尋ねると、どうやらテリーさんにも打診が来ていたらしく、あっという間に話がまとまりました。
牧場も広く家畜を増やすために人数を増やそうとしたところ、ボブさんの友人がたまたま船乗りとしてサザランド伯爵領に来ていて、家に来たいと言ってきました。今回の乗船で借金を返し終わるそうです。
他にも、獣人の国から借金を返すために働きに来ている人がいるらしく、みんなで移りたいそうです。
一気に増える領民の家は、なるべくまとめた方がいいのかな?
それから、人手が足りないなら王都のスラムからはどうだ、と国王様が冗談っぽく言ったみたいですが、お兄ちゃんが一睨みして黙らせたそうです。
正直に言って、ちゃんとした人かどうかを見極めるのに必要な人手が足りないんです。無理ですよね。
代わりに、王都の孤児院から何人か引き取ることになりました。中には足の悪い子がいましたが、お母さん判断で来てもらうことにしたら、泣かれたそうです。
そろそろ職に就かなければならないのに、足のせいでどこも雇ってくれなかったとか。
うちでは針子として頑張ってもらうそうです。手先が器用だったので。
あとは食いしん坊の子とかは料理人に。
領地で就職する子たちになついている小さな子たちは、こちらの孤児院に入ってもらうことになりました。チェスター博士の夫人、マーガレットさんが読み書き計算を請け負ってくれました。
最初はビクビクしていたものの、マーガレットさんの朗らかさにすぐに領地に慣れたようです。
少しずつ領地もまた変わっていきます。……お父さん、大丈夫かな?




