兵士は見た━━その1
今までの内容の把握で遅れに遅れました(;^ω^)ちょっと花粉症もありますが。
簡単な人物紹介をミアの入学前に載せる予定です。
……メモ書きちゃんとしないと駄目ですね。ああ、まだ領地とか国とか色々まとめないといけないんですけど、どうしようかなぁ。
今日はサザランド伯爵領に新たに出来たダンジョンの調査にやって来た。
普通なら馬車や馬での移動なのだが、今回はブルーノ氏の魔法でひとっとびだった。
俺達は、完全武装なのだが、ブルーノ氏はものともせず転移したのだった。
「では、サザランド伯爵領からは六人ですね」
そこにはサザランド伯爵嫡男アルフ様と領民となった元冒険者、それから……令嬢のミア様?!へ?
俺達はダンジョンに行くんだよな?!
「今日はよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる。可愛いが、行く場所がダンジョンなんだけどどうなんだ?
「ミアちゃん。領地が凄いことになっているね。石壁?」
「魔力が広がっていて、消費しようと思って。使うのに何をしようかと思ったんですけど、領地を整備した時に壁を作りたかったのを思い出して」
「ぐるっと領地を囲んでいるよね。そんなに魔力が溢れてたの?」
「魔力にあてられて、テンションがおかしくなってたみたいで……」
ブルーノ氏が興味津々で聞いている。いや、テンションが上がったくらいで領地を囲む壁を作れる令嬢ってなんだ?
俺達は伯爵が用意した馬車に乗り込み、 ブルーノ氏が魔力をたどりダンジョンがあると思われる方向へ向かった。少し崖になった斜面に洞窟があった。
……ん?あれはなんだ?
「ふぉっふぉっふぉっ。よう来たのう」
「あれ?神様?」
は?神様?いや、確かに教会に像がある創造神様にそっくりだ。しかし……。
「わしも嘘つき呼ばわりはかなわんのでな。きちんと用意してやったぞい」
「え?用意?ここダンジョンですよね?」
「調味料の材料や食材が揃うようにしておいた。料理の腕があれば料理にも困らぬぞ」
「大盤振る舞いですね!」
ミア様に神様と呼ばれた人が、胸を張って答えている。
「……神様?このダンジョンって植物くらいなのですか?」
「いや、食材が色々とな。一番強いのはワイバーンにしておいたのだが……お主ら子供とはいえドラゴンも倒していたな。それもいれておくか?」
は?ドラゴン?!
「いえ。ドラゴンは荷が重いです!溢れたら国に大ダメージが!」
そう!アルフ様、頑張って止めてください!ドラゴンなんて無理だって!
「そうさな。しかしワイバーンは譲れぬぞ?あれくらいの食材がなくてはせっかくのダンジョンが勿体無いではないか」
「?ワイバーンがいたとしても、王都のお店には出しませんよ?」
「それなのだがな。わざわざ店に行くというのもなんだ、あれでな」
「?」
「サザランドにも教会が出来たではないか」
「はい」
「朝夕二回、供物を捧げよ」
「……お供え物、ですか?」
「なに、特別なものを所望するわけではない。領民の食事と同じで構わぬ。たまにワイバーンを出してくれれば」
「それは……俺達ではあれなので。教会のお偉いさんと国王に神託をお願いします。そのあと、サザランド伯爵領の教会の人と父にも神託を」
「直接伯爵とサザランドの教会の人間では駄目なのか?」
「……ご神託って、貴重ですよね?」
「前回は百年近く前だったか?」
「なので上の人から順にお願いします。上の人に、人間の連絡では時間がかかるから直接言いつけるとおっしゃってください。そうすれば連絡を取り合う間もお供え出来るかと……」
「人間とはめんどくさいものだな」
「人間が揉めると、お供えする余裕もなくなりますから」
「うむ、仕方ない」
神様は鷹揚に頷いた。しかし、内容は食べ物のことだが。
「それでは、このダンジョンの最大の脅威はワイバーンなのですね?」
「ああ。あと、様々な食材や調味料がとれるように、階ごとに変化がある。心してかかるがいい」
「う~ん。ちょっと魔力が満ち満ちていませんか?」
「む?ワイバーンを頻繁に出すにはこれくらいないとな」
「頻繁って、それは困ります。間引き出来ないと溢れますよね?対処しきれません!」
「しかし、ワイバーンが……」
「領地が無事じゃないと、それどころじゃないですよ?供物を捧げられなくなりますよ?」
「うむ、仕方ない。なんとかせよ」
「え?えっと……あ、あれでいってみようかな?」
アルフ様が供物を盾に神様と交渉をしている。いいんだろうか?相手は神様なんだけど。
そして、まさかの無茶振りをミア様が受け止める。
気合いを入れると、腕を伸ばして唸り始めた。
なんだなんだ?
「出来た!」
洞窟の脇に腰くらいの高さの台状に石が積み重なったと思ったら、中で水が湧き出ている。
湧き出た水が、洞窟の壁へと繋がる小さな水路へ流れ、そのまま壁が吸収していった。
……は?
「えっと。ダンジョンの魔力を液体に変換することで魔力をちょっと使うでしょ?それからまたダンジョンに戻しているの。これでもまた魔力が消費されているの。
この魔力は濃い目の魔力だから、魔晶石に溜められるかも?」
「空の魔晶石はないな」
「……ネイサン。剣をつけてみろ」
「え?」
「聞こえなかったか?剣をこの中に入れろ」
「……はい」
クレイグ隊長の指示により、ネイサンがリーコック侯爵領のダンジョンが溢れた後始末のせいで黄色になってしまった魔晶石がついた剣を入れた。
大事な剣を使わなければならないなんて、可哀想ではあるが。
ちゃぽんと魔晶石が水につかるように入れると、一分も経たずにキランと光った。
ごくり、と皆が息を飲む。
ネイサンがゆっくり剣を取り出せば、魔晶石が虹色に輝いていた。
「良かった、成功してるよ」
成功してるが、魔晶石が一瞬にして虹色に変わるのはいいのだろうか?
「……ここは隔離しないと駄目だな」
「え?」
「空の魔晶石を持ってきて、一財産築く人間がいそうだ」
「……あ。じゃあ取り敢えず結界を張って、と」
どうやらミア様はそこまで考えていなかったようだ。急遽、結界を張って侵入を阻むみたいだ。
そうだよな。虹色の魔晶石で左団扇で暮らせるんだぞ?
「軍の方にダンジョンで演習してもらって間引いて、帰るときにここで魔晶石に魔力を補充とか?」
「ダンジョン内で魔晶石を使った演習が出来るんだな。よし、その線で交渉するか」
兵士の目がギラリと光る。勿論俺もだ。
最近では魔晶石が不足していて、演習で魔晶石を使うほどの技を繰り出せなくなっている。補充出来ないからだ。
それが、このダンジョンでは出来るだと?
「……それは是非ともお願いしたいな」
「クレイグさんがそう言ってくれるなら、交渉も上手くいきそうですね」
アルフ様がにっこり笑う。
「これで問題は解決しそうじゃな?」
「はい」
「では供物を楽しみにしておるぞ、サザランドの」
うわっ、眩しい!
神様はそう言うと、辺り一面に光を放ち、視界が戻る頃にはその姿を消していた。
「まぁ、最大の驚異がワイバーンと分かっただけでも……」
今回、ダンジョンということで調査に参加している冒険者ギルドの人間が呆然としながらも言葉を発する。確かに何も分からず突っ込むよりましだ。
「じゃあ、早速ダンジョンに行きましょうか」
ブルーノ氏は相変わらずマイペースに皆を促した。