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出番ですか?  作者: 五月女ハギ
キンバリー侯爵領
7/96

8歳━2

 商店街は賑やかです。さすが侯爵領。


「絶対に手を離すなよ!」

「うん!」


 こんなとこで迷子なんてごめんです。そもそも来た道を覚えてないから帰れない。


 私は両手でお兄ちゃんの手を握り、商店街に入っていきました。

 左右に店舗があるので、私達は人の流れに乗るように左側通行をするため、行きは左側の店舗を見ることにしました。

 反対側は帰りにチェックすれば大丈夫なので。


 肉屋には肉が多く置かれていました。ソーセージにサラミにベーコンも沢山。

 住んでいた町の3倍は軽くあるようです。

 こんなに商品が置いてあるってことは、それだけ売れるってことで。凄いなあ。

 塩漬けの肉以外にも生肉もあります。生肉なんて、魔道具で冷蔵庫みたいなの使っても、2日がいいとこなはず。その量が見たことない量で圧巻です。


 更にチーズ屋さんも。

 ムーニー男爵領では扱ってなかった種類もあるみたい。とろけたらいいってこだわりのない私には、匂いがキツくなかったらそれでいいので、興味がサッパリないから良く分かりません。

 どうやら酪農が盛んな領地みたいです。山羊のチーズもありましたし。


 はぐれないように先に進むと、乾物屋さんを見つけました。店先の商品を見ると、豆類に干し椎茸に切り干し大根があります。なんて日本的な。

 昆布も有りましたが、大量に買って空間収納にしまってあるので、ここでは購入見送りです。が。


「寒天?!」


 産地を確認すると、東の海沿いのホースウッド産ってなっています。伯爵領でしたか。

 キンバリー侯爵領は海がないから、他の領から輸入しているんだね。変わったものを取り扱っているのは不思議ですけど。


「乾物は軽いから、取り敢えず買っちゃうね」


 ささっと小豆と干し椎茸と切り干し大根と寒天を購入しました。

 侯爵領という大都市なので、他にも色々有りそうな予感がして、うきうきしてしまいます。

 お兄ちゃんはそんな私を笑って見ていますけど、お兄ちゃんだって足取りが軽やかなので、人のことを笑えないんですよ?もう。


 お菓子屋もあったけど、寒天があったのに羊羹はありません。あれ?

 さっきのお店に小豆と寒天があったから、てっきり羊羹があると思ったのに。あんみつだって出来るのに。


「羊羹好き?」

「……作れるのか?」

「おばあちゃん直伝だよ」

「じゃあ作って」


 話し合いながら先に進めば、魚屋がありました。けど、海がないキンバリー侯爵領は、淡水魚か干物ばかり。新巻鮭はないです。


「新巻鮭?」


 干し鱈やニシン。うん、魚屋はもういいかな。


 テンションが落ちつつも歩いていきます。お茶屋さんが……紅茶の茶葉を売っています。

 緑茶はやっぱりないです。う~ん。

 確か木は一緒で緑茶も作れるんじゃなかったかなぁ?だけど、加工前の葉っぱを買うなんておかしいし。


「小豆も寒天も切り干し大根も干し椎茸もあったんだから、よしとしよう」

「……うん」


 私達は折り返し、反対側の店舗をてくてく歩いて帰るついでに確認です。

 八百屋が……はっ、何だって?


「どうした?」


 オリーブの実を発見しました。実があるなら、オリーブオイルが安いってことはないでしょうか?安かったら揚げ物をしやすくなるのですけど。

 お、茄子があります。これは味噌田楽をしろという暗示に違いないです。


「味噌田楽か……いいな」

「味噌に成功して良かったよね。本当に」


 会話しながらも並んでる野菜を見ていく。大根もある。まあ、切り干し大根があったくらいだしね。

 あ、蕎麦もある。


「さすがキンバリー。種類が多いな」

「お蕎麦食べたいなぁ」


 ぼそっと呟くと、お兄ちゃんが握る手の力が強くなった。


「……蕎麦?」

「しまった、道具がない」


 蕎麦打ち道具が、足りないです。普通の麺棒で代用……かなり長さが足りないかな。でも食べたい。

 まだ子供の体だけど、なんか打てるかもしれません。つゆはお母さんにお任せです。


「……まあ、ないなら仕方ないな」

「一回試してみようかなぁ」

「……試す?」


 お兄ちゃんがちょっと怖いです。食べ物が絡むと途端にこうだ。


「蕎麦がきやガレットでもいいし」

「それはありだな。でも蕎麦がいい」

「宿では作りづらいから、材料を買うだけかなぁ」

「……はぁ。そうだな」


 お兄ちゃんががっかりしています。うん、期待させる発言でごめんなさい。

 今日明日でどうにか出来るものではないので、蕎麦は購入はしません。

 お父さんが明日から市場か市で商売するんだし、値段を確認だけして安い方を買えばいいですから。


 最後は油屋さん。

 値段を確認したら、やっぱり安い。でも、市場と比べたらどうだろう?

 一応値段を覚えるだけにして、今日はおしまいです。

 乾物は勢いで買いましたけど、蕎麦粉の重さに我に返った結果です。うん、テンションのせいですね。仕方がなかったんですよ。

 まだ5時の鐘は鳴っていなかったけど、私達は宿へと向かいました。

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