D&D━━その2
伯爵様とは王城で別れ、家族三人で一度商会に向かいお父さんを降ろし、お兄ちゃんと私はタウンハウスへ向かいます。
お兄ちゃんは私を送り届け次第、また商会へ向かうそうです。お仕事が山積みになっているので、手伝うそうです。お父さんが倒れないか心配だって。そんなに忙しいのでしょうか?
だからおとなしくしていてくれよ、とはどういう意味?お兄ちゃん?
「じゃあ、母さんによろしく」
「うん」
私は領地でジャム作りです。大人しくってことだから、それがいいでしょう。
お兄ちゃんは夏休みいっぱいお父さんのお手伝いをするそうです。お父さんの睡眠時間が増えて、周りの人達がほっとしたらしいです。
私はカントリーハウスの厨房で、様々な夏のフルーツを煮込んでジャムにしていきました。
ライチ、ブルーベリー、桃、杏、などなど。単品やミックスしたり。
かといって、全部をジャムにするのも飽きてきて、ドライフルーツと果実酒も作ることにしました。
この世界には当然クリスマスなんてないので、新年のお祝いにドライフルーツ入りのパンを配ってもいいかな、と先を見越しての行動です。
それも駄目って言われたら……どうしよう?う~ん。
果実酒は駄目って言われずに、お母さんやコメットさんが嬉々として飲むと思います。領民でも男性陣はエールが定番ですけど、女性陣は甘いお酒が好きな人も多いんです。喜んでもらえるでしょう。うん。
「ミア、ジャムは順調?」
「沢山出来たよ」
お母さんの視線が、ジャムの入っている瓶に注がれています。更にざるにフルーツが並べられていて、ドライフルーツを作るつもりなのも分かったようでした。まだ乾燥しきれていないので、明日また干します。
更に瓶に詰まっているフルーツと液体を見て、びっくりしています。
「また、大量ね」
「……することなくて」
正直に言うと暇です。
それから数日、ずっとジャムとドライフルーツに果実酒を作っていましたが、飽きてきてコンフィを作ってみたりもしました。
新しいパンも作りたいんですけど、それは大人しくしていてくれって言われたので我慢です。あれ?自宅用ならいいのでしょうか?
「次の社交シーズン用の料理とか試そうかなあ」
「そうね。外に出さないなら問題ないでしょ」
お母さんの許可も出たので、明日から色々試作しましょう。私のお茶会用のスイーツも作りましょうか。お茶会ならプチスイーツがいいでしょうか?2つ3つ選べるのって楽しいですよね。
まだ子供だからウエストをぎゅうぎゅうに締めていませんけど、だからと言って、そんなに種類を食べられませんよね。
そうなると器もプチに合わせた物が欲しいです。陶器やガラス。ティラミスやゼリーの層が見えると綺麗ですよね。
「……ミア?」
「……はっ」
いけないいけない。大人しく大人しく。
「……今まで作ってきたスイーツを小さくしようかなって」
「ああ。スイーツビュッフェみたいな?」
「種類を食べたいかなぁって」
「で?」
「……小さい器もいるかなって……」
「しばらくはケーキを小さいサイズにしましょうね」
「うん。パイも一口サイズにしたり?」
「ま、それくらいなら大丈夫かしらね」
器は駄目みたいです。硬めのプリンならなんとか大丈夫でしょうか?
パイは一口サイズだと、ボロボロとこぼれる心配もないし、いいですよね。日本だとそういうお菓子を売っていました。
━━ん?
むわん、と空気が重くなったような、濃度が濃くなったような、不快感と体の重さがいきなりやってきました。何?
「ミアっ、大丈夫?!」
「うん」
私に声をかけたお母さんの顔色が真っ青です。立っていられないのか、床に座り込んでいます。
「お母さんの方が大変そうだよ」
「なんだか目眩がするのよ。乗り物酔いしたみたいな……」
未だに空気が揺れるような不快感がします。原因が分かりません。こんな時はお父さんとお兄ちゃんに連絡です。手紙を運ぶ魔道具を使いましょう。お母さんにお願いして、私は領地の見回りですね。
「お母さん、立てる?」
「……ちょっと無理だわ」
かといって、このまま床に座らせておくのも……うんしょ、と。
「……ミア?大丈夫?」
「よっこいしょっと」
お母さんを背負って、ふらつきながらもなんとかリビングのソファーに座らせることに成功しました。
「あと、これ」
「あ、お父さん達に連絡とるのね?」
「うん」
私はお母さんに魔道具と筆記用具を渡します。
よし、私は領地の現状確認です!
「行ってきます!」
「え?ミア?ミアー!?」
パパッと自分の周りに結界を張ります。服も靴も強化して、万が一に備えます。
あ、あと家も結界を張っておきましょう。
倒れると大変だから、周りの魔力を借りて結界を張りました。
━━ん?
なんだかちょっとすっきり?
今年最後の更新です。
皆様良いお年を




