モルトハウス伯爵領━━その6
晩御飯のデザートはプリンアラモードでした。さすが副料理長。あっという間に出来てしまうんですね。フルーツも華やかな花になるように切って盛り付けられています。
こういうところは素人な私では全く太刀打ち出来ないと、料理人の方を見る度に思います。すごいなぁ。
私もスキル持ちですが、副料理長はそのレベルがかなり高いのでしょう。コメットさんやお母さんとも違うので、ちょっと教わりたいです。無理かなぁ。
「……プリンがメープル味。美味しいわ」
「普段は焼き菓子になるが、いざというときはこれを使えるな」
プリンのかわりにババロアなら、ドーナツみたいな型で作って真ん中にフルーツを飾り付けて、食べる時に切り分けると見た目が豪華かなぁ。
あ、ゼリーと二層にしても綺麗かもしれません。
お茶会用のは、こういった華やかなのがいいでしょう。
領地のご飯で出すものは、陶磁器の小さめのココット皿でプリンもババロアも作って提供していますけどね。
前世の私はゼラチンを使っていたのですが、コメットさんは寒天での作り方も知っていました。なので、サザランド伯爵領では寒天のレシピで作っています。
ゼラチンが入手しづらく、品質も少し良くないのです。
「……片栗粉のレシピはどうでしょうか?」
「えっと。ちょっと確認に時間がかかりそうです……」
「……そうですか」
まだ宰相様達がダンジョン関連で忙しいらしく会うこともかなわないそうです。そのため、後日となっています。
お父さんの手紙がのたくった文字で、お兄ちゃんが心配しています。ダンジョン騒動が終わったら、急いで帰って仕事を手伝うようです。
ひょっとしたらドラゴンの話がどこからか漏れて、その問い合わせもあったのではないか、と眉を寄せます。
「ただでさえ忙しいっていうのに」
「私も何か手伝える?」
「…ミアは大人しくしていてくれ」
むう。私だって何か手伝えるのに。何かって……う~ん、領地のお手伝いくらいかなぁ?
「コメットさんや領地のところとかのお手伝いくらい?」
「……王都では無理だな」
「領地ならいいの?」
「店には出たら駄目だろうな」
裏方専門ですね。
それとも農地を広げたり改良したり、かな?森に行って、果樹を探してきてもいいかも。
私が考えていると、お兄ちゃんに頭を撫でられました。
「ミアはちょっと大人しくしていてくれ」
「…え?うん」
「新しいレシピが話題になったら、父さんが更に忙しくなるからな」
「えっ?!」
「いや、その対応も大変なんだよ。レシピを売れとか取引したいとか。国内外から打診がきているから」
「お砂糖も人気だしね」
どうやら本当にのんびりしているしかないようです。
それにしてもレシピで大変なことになるなんて考えていませんでした。
「俺も手伝うけど、ドラゴンの素材がバレてるとなると色々面倒だな」
「その辺は宰相様達に丸投げでいいんじゃないの?」
「まあ、そうしておくか」
販売を許可されなくてはどうにもなりません。
あと、加工をどうするかも問題ですね。
サザランド伯爵領には元冒険者がいますが、私兵はいません。貿易をしているので、軍から派遣された兵士が見回りをしています。
この際、見回りの兵士に貸し出すっていうのもどうでしょうか。
って、痛い。
「ミア?大人しくしていてくれよ」
「う……はい」
領地のことは、お父さん達にお任せですね。
「う~ん。果物が色々なっているから、ジャムを作ろうかなぁ」
領地の食堂では、食事にちょっとお金を足すとジャムをつけられます。
毎日は食べないけど、誕生日とか記念日にちょい足ししたりする人が多いです。
お持ち帰り用に小瓶で販売していますが、小瓶は持ってくるとお金が返ってくる仕組みになっています。地味に小瓶が手間なんです。
「船員さん達のお土産に……は、無理かなぁ」
「販売となると、小瓶が大量にいるからな。領民は小瓶を持ってくるけど……船員は無理だろ?」
「う~ん。まあ、とりあえずジャムやコンポートや果実酒を作ろうかかな」
「そうそう。大人しくジャムを作っておけ」
ドライフルーツも作っておこうっと。後々、パンやスイーツに使えますしね。新年のお祝いにちょっと豪華な料理を食堂で出してもいいですよね。保存がきくように、って魔道具があるから関係ないんですけどね。
ブルーベリーや桃やさくらんぼや梨等々。沢山仕込もうっと。
あ、新しいパンくらいなら作ってもいいかも。
うん、沢山獲れるフルーツの加工を頑張ります!




