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出番ですか?  作者: 五月女ハギ
モルトハウス伯爵領
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モルトハウス伯爵領━━その5

「ほほう。牛乳の色だね、綺麗だ」

「あら、優しい甘さね」

「果汁を使うと色が鮮やかになるな」

「甘味最高ぅ」


 お昼ご飯もそこそこに、デザート試食会となりました。

 厨房でちょっと言っただけなのに、かぼちゃとさつまいものいももちを料理人さん達が作ってくれていました。すでにちゃんと作れています。まあ、簡単な料理なのですが。

 黒蜜を収納から取り出してかけます。あ、副料理長の目が光ったかもしれません。黒蜜のレシピは公開しているのか、要確認ですね。


「寒天はうちでも出来るわね」

「牛乳寒天や寒天ゼリーは、入れる寒天の量で食感が変わるので、色々試してくださいね」


 今回はゆるゆるで作っていますが、あんみつの寒天みたいなかたさにしてもいいんです。

 ちなみに、伯爵家の料理人や侍女や執事の方々は、一口ずつの試食となっています。

 料理人だけ試食があるのはずるいと言われたからです。これから何度も試作を繰り返すはずですから、その時にでもいいと思うのですが。


「いももちは片栗粉をどうするか、だな」

「片栗粉ですかぁ……それは聞いてみないとなんとも」

「……領民向けには厳しいかな」


 伯爵様が眉を寄せます。

 いえ、モルトハウス伯爵領はじゃがいもが沢山あるので、問題はレシピなのですが。公開していなかったかもしれないのです。これは確認してからじゃないと、何も言えません。

 夕方までにお兄ちゃんにお父さんに連絡つけてもらいましょう。


「……羊羹って、以前に王宮のお茶会では栗がのっていたけれど」

「栗蒸し羊羹ですか?あれとは作り方がまた違うんです」


 しかも、あの栗はサザランド伯爵領でしか獲れないかと思います。和栗だもの。


「もっとメープル味のものも欲しいわ。モルトハウス家でもてなすときに使えるような」


 う~ん、メープルを前面に出すってことですか。


「フレンチトーストの卵液をお砂糖抜きで作って、焼いた後にメープルシロップをかけるとか?」


 それは食事になりそう。あ、コンビニでメープル味の人形焼きが売っていたような?海が近いから、プチ鯛焼きにしてもいいかもしれません。

 パクリ、と羊羮を口に入れると、ブレンダお姉様がこちらを見ていました。


「ミアちゃん?何を考えていたのかしら?」

「メープル味のプチ鯛焼きとかどうかなって思っていました」

「……鯛焼き……」

「普通にパンケーキもいいんですけどね。一口サイズだと可愛いかなって」

「でも、フォークで刺して食べるわけではないのだから、ケーキぽくてもいいわ。地味ではなく見映えがいいといいのだけれど」


 ブレンダお姉様が言います。見映えですか。

 単純に、見映えがいいものに使うお砂糖をメープルシュガーにすればいいと思うんですけど。もしくはメープルシロップを使うかわりに水分を減らすとか。

 個人的には、メープルってナッツ類との相性がいいと思います。あとはクリームとも。

 となると、シフォンケーキをメープル味にして、泡立てたクリームにナッツをちりばめて、つけて食べる?

 見映えはどうでしょう?やっぱり地味ですよね。う~ん、私は見映えより美味しさ重視なのですが。クッキーやパウンドケーキじゃ駄目なんでしょうか?見映えならフルーツを使って色味を出さないと。

 あ、プリンを生クリームやフルーツで飾り付けると華やかですね。メープルシロップを使ってプリンならありでしょう。


「プリンアラモードかな」

「……それはどう言ったスイーツでしょうか?」


 ポツリ呟いていたらしい私の独り言を副料理長が聞き逃さず、獲物を狩るような目で見られます。怖いです。


「プリンはプリンですよね?」

「はい。それに入れるお砂糖をメープルシロップかメープルシュガーにして、カラメルのかわりにメープルシロップをかけるだけです」

「それがプリンアラモードなのですか?」

「えっと。そのプリンを生クリームやフルーツで飾り付けるんです。イチゴやオレンジなら色味も華やかですよ」

「……なるほど」


 食事が終わると副料理長はさっと消えました。プリンアラモードを試すのだと思います。メープルシロップを使ってプリンを作るところからですね。

 これ以上は私の知識ではどうにも出来ません。お母さん案件です。ふぅ。

 私がこっそりため息をつくと、お兄ちゃんが伯爵に話しかけています。


「リーコック侯爵領のダンジョンはどうですか?」

「ああ。軍が魔獣を退治して回っているようだよ。

 あのドラゴン以外は他領に漏れていないそうだ」

「こちらに被害が出なさそうで良かったですね」


 お兄ちゃんがほっと息を吐いた。

 うん、でもそのドラゴンが大問題だったと思うんだけどね。


「王都には、もうしばらく様子を見て、国から連絡が来てからになるね。リーコック侯爵からの話では信用出来ないだろう?」

「まあ、無理ですね」


 ダンジョンから魔獣が溢れる時は前兆があるそうなんです。それを知っていながら黙っていたのではないか、と伯爵様は考えているようです。

 しかも、リーコック侯爵領のダンジョンはそれほど難易度も高くなく、溢れさせるのは管理がよっぽど甘かったのだろうと怒っています。


「ダンジョンがあることによって稼いでいるくせに、その管理も怠るとはな」


 ブレンダお姉様のお兄様であるルーファス様も怒っています。

 ドラゴンが飛んできた訳ですから、当たり前です。

 それでも国から軍が派遣されたので、警戒はしているものの、ドラゴンに会った時よりは兵士も伯爵家の皆さんも緊張感はありません。いや、ドラゴンと比べたらダメでしょうけど。

 軍が倒しているのは、普段ダンジョンに出る魔獣よりも難易度が上がるものだそうです。

 普段は倒すとお肉がゲット出来る、ワイルドボアや角ウサギと言った初心者向けが、わんさかいるそうです。わざわざダンジョンの外で探すよりも、わんさかいるこのダンジョンに潜って中級冒険者になるまで頑張るのが定番らしいです。わんさかですか。


「他にも、トレントや蜂がいたはずだな」


 蜂も魔獣の蜂で、大きさは昆虫の蜂とは全く違うのだとか。それに獲れる蜂蜜とロイヤルゼリーが高級品。

 トレントも、普通の木材とは違うようです。家具や弓や杖や、色々使い道があるみたいです。

 そういったダンジョンのモンスターの素材で儲けていた領地なのに、管理が甘いってダメダメですね。もう。


 ダンジョンで蜂蜜がとれるのかぁ。いいなぁ。もっととってくれたらみんなでお菓子が食べられるのに。

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