ある兵士の驚愕
ドラゴンとしては幼体らしいが、胴と首が切り離されたそれをポイと簡単にしまったのを見て、隣の魔法使いが「どんな容量なんだ」と呟いた。
他にも、何度も結界を張り直していたり、その戦いの前に俺達にまで防具や武器の強化をしていたよな。魔力量のせいなのか。
っていうか、単純にあんなでかい魔物が入るってどうなんだ。
「アルフ、大丈夫?」
「ああ。疲れたけどな」
剣に炎をまとわせたのは剣技の一つみたいだが、俺達にはできる奴なんていない。
なんでも騎士団の練習に時々とは言え参加しているらしい。って、ついていけるのか。まだ子供じゃないか。
「えっと、しまったドラゴンってどうしたらいいの?」
「モルトハウス伯爵、半分ずつでいいですか?」
「いや、我々はなにもしなかったからこちらには要らないよ」
ドラゴンの素材が欲しくないわけないが、俺達は見ていただけだもんな、伯爵も断って当たり前だろう。
「う~ん、でも、またドラゴンが出た時に困りませんか?」
「そうだよな?やっぱり半分ずつにして、兵士たちの武器や防具を整えてはいかがですか?」
「…また?」
「あって困るものでもないでしょう」
まさか。
俺達がドラゴン素材の剣を振るうのか?盾や鎧を身につける?!なんてことだ!!
「…過度な武力は国に睨まれる元だ」
ああ、うん。伯爵のおっしゃる通りだ。
…ドラゴンの、使いたかったな。
「じゃあ、国にも納めて、その残りを半分ずつ?」
え?
「そうだな。半分を国に、その残りを分けましょう」
「…いいのかね?倒したのは君たちだぞ」
「ドラゴンに対抗できるものを手に入れられた方がいいです。ブレンダも安心できないでしょうし」
「ああ、分かった。国には私から報告しよう」
「父には私が報告します」
「ああ、そうしてくれ」
……え?本当にドラゴンの装備が出来るのか?
俺達はそわそわしたが、でもなにもやっていないよな、と微妙な気持ちになった。
……まあ、お嬢様の嫁ぎ先からの贈り物ってことだろう。
ちらりと辺りを見れば、ミア様が張った結界とアルフ様が剣で相殺した箇所を除いて、凍っている。
……これを俺達が相手しなければならないのか。
それでも、やることは一つ。
もっと訓練を厳しくして、少しでも実力を磨こう。
うん、それしかないよな。ここは俺達の住む場所だから。




